三界戦線 開戦
学マス楽しいですね
レイド戦当日。名もなき平原に多くのプレイヤーが集まり、戦いが始まる瞬間を待っている。夜火達もまた、レイド開始を待っていた。
「人多いなぁ……」
「そうだね。とはいえ、一大イベントなんだ。多くの人が参加するのは当然じゃないかな?」
「まあな。さて、俺たちも準備するか」
レイド戦の開始予定時刻は午後1時。現在の時刻は午後12時45分。後、15分もすればレイドボスが出現し、大規模な戦いが始まる。それにしても――――――
「結局どんなモンスターが来るかわからないままレイド戦か」
「そうだね。最初から情報が一切ないまま戦わせたいのか、プレイヤーの情報収集が足りていないのか。どっちが正解かはわからないけど、とりあえず今回は相手を見て対応しなきゃだね」
「さて、どうなることやら」
午後13時ちょうどにそれは現れた。
海中から浮かび上がる異形の右腕。それは空高く浮かび上がり、その形を変える。まるで粘土をこねるかのようにその腕の形はもとの姿を失っていき、やがて球体のような姿へと変わる。
「始まった、のか?」
「わからない。けど、あれが何かしら関係しているのは間違いない」
他のプレイヤーたちも困惑している中、突然鳴る通知音。そして――――――
わずかに輝きを放ちだす球体。
『レイドボス:三界兵龍SOLが出現しました』
『フェーズ1開始』
『フェーズ1終了まで残り10分』
『目標:三界兵龍SOLを攻撃』
「来た!」
「あの球体を攻撃するのか」
「魔法なら届くか?」
通知を確認したプレイヤーたちが一斉に動きだす。しかし、動き出すのはプレイヤーだけではない。相手もまた、自身の命を狙う者たちへ抵抗するべく、海に眠る眷属を呼び覚ます。
「始まった!」
夜火、シューガ、ヨミ、メイの4人も行動を開始する。
「どうする?」
「とりあえず、有効な攻撃手段を持っている人は?」
「私はないと思う。あの距離は糸の射程外ね」
「私も遠距離武器はないかな」
「夜火は?」
「うーん。無くはないけど……」
「何か問題がある?」
「まあ、そうだな。単純に大したダメージにはなんないと思うんだよな」
とはいえ、無いよりはいいか。
「はい、これ。2つ借りてきたからだれか一人どうぞ」
そう言って取り出した武器の名はBT-02。それは俗にいうスナイパーライフルだ。
「スナイパーライフルなんてあるのね……」
「あのハンドガンの持ち主から借りてきたんだよ。ただ改造が一切されてない製造当時のまんまだ。つまり、あれに似た何かにやられた奴らの武器なんだよ。これ」
「なるほどね」
「で、あと1つあるけど誰か使うか?」
三人とも首を振って、返事をする。
「まあそうだよな……。必要な時は言ってくれ」
さて、試しに1発撃ってみるかな。スナイパーライフルは別のゲームでもあんまり触ったことないんだけど……。まずは1発目――――――
銃声が鳴り響き、銃弾は真っすぐにSOLへと向かって飛んでいく。
「うーん。駄目だな、これ」
「駄目っていうのは?」
「少しでもダメージを与えられれば良かったんだが、普通に弾かれた」
あいつの表面が固いのか、それともこいつの威力が弱すぎるのか。どっちもありえそうだな。
「よし、あの海から来てる奴らを減らすか」
えーと、名前は……、腐兵獣AOMね。「腐」ってことはアンデッド系か?見た目は全身が灰色の装甲に覆われていて、中身が腐っているのかはわからないが。にしてもバリエーションが多い。現実に存在している動物全種類いるんじゃないのかってぐらいの種類だ。小型は素早く、大型はタフ。自身の長所を活かした攻めをしてきてる印象だ。空を飛んでいる奴はいなさそうだな。
あのモンスター達は魔法などでSOLを攻撃しているプレイヤーを優先して狙ってる様子。目についたところから減らしてくか。
純白の剣を装備し、地面を蹴り、駆けだす。海岸に、そしてSOLに近づくほどにプレイヤーも腐兵獣AOMの数も増えてくる。1体1体が強力で対処が困難ということはないが、いかんせん数が多い。倒しても倒しても海岸から湧いて出てくる。
「キリがないな……」
フェーズ1ってことはフェーズ2にもあるってことだ。ただ、そのフェーズが移行する条件が不明なのが問題だ。時間経過ならいいが、何かしたの達成が条件の場合、一切ヒントがない今、時間がたてばたつほどこっちが削られていくだけだ。
「にしても、あっちも大した変化がないけど大丈夫か?」
空を見上げれば、そこには出現してから全く姿が変わらないSOLの球体が浮かんでいる。さっきからかなりのプレイヤーによる攻撃を受けてるはずのSOLに変化は起きていない。あれだけ手ごたえがないとだんだん疑心暗鬼になるプレイヤーも出てくるだろう。「これでいいのか?」、と。
しかし、その疑惑を晴らすかのように変化が訪れる。
レイド戦開始から5分、SOLが胎動を始める。突然戦場に響いた心音は、空に浮かぶSOLから生じたものだ。さらに海中から新たなモンスターが出現する。先ほどまでは見当たらなかった飛行型の腐兵獣AOMだ。
「ここで飛行能力持ち出現か……」
何が厄介って、あいつら攻撃こそしてこないが魔法等を体を張って止めてくるせいでSOLに攻撃が当たらなくなった。しかもこっちも数が多い。シンプルな肉壁による防御だが効果的だ。この後まだ戦闘が続くことがわかっている以上できるだけ消費は避けたい。そうして威力をケチるとAOMに阻まれてダメージを与えるのが困難になる。かといって威力が高い技を何回も打てるほどに余裕があるプレイヤーも多くはない。攻撃しろと指示が出ている以上あの形態のSOLを攻撃することに何かしらの意味はあるはず。仮に攻撃しなかった場合どうなるのかを確かめる方法もないしな。
「どうするか……」
一応、空中に飛ぶ手段はある。ただ空中に飛んだとして、SOLに接近するのは至難の業だ。大量のAOMに接近したら間違いなく蜂の巣にされるし、そこにプレイヤーの攻撃もある。接近した瞬間、俺は間違いなく死ぬだろう。
少しずつ早くなっていく心音がプレイヤーたちを焦らせる。
突然、空中に巨大な魔方陣が発生し、膨大な数の雷を生み出す。落雷によってAOMは全て撃ち落とされ、SOLの周辺から一時的にモンスターが姿を消す。
「ナイス、ツバキ」
「さ、どうぞ」
「よし、任せろ」
「何だあれ……すご……」
突然出現した巨大な魔方陣。そしてそこから発生した雷に多くのプレイヤーが目を奪われる。
「ってあれ――――――」
一瞬止まったプレイヤーの攻撃。その一瞬のうちに何かが空を駆け、SOLへと接近し、そして――――――
パンチ一発で海へと沈めてしまった。
「リオンさんか……。すごいなあの人……」
SOLから聞こえていた心音は止み、AOMたちも活動を停止する。そして――――――
『フェーズ1終了』
『フェーズ2開始』
『目標:空兵龍SOL・海兵龍SOL・陸兵龍SOLの撃破』
フェーズ進行を知らせる通知が届く。
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キャラの名前とかちょくちょく変えるかもです。三章に入る前にまだ悩んでる名前とかあやふやにしたまんまの設定詰めなきゃですね。




