開戦前夜
お久しぶりです
「凄い人の数だな」
グロリアス・ウイングの試運転を終え、ウォーグの工房から戻ってきた頃には日も沈み出していた。もうすぐ夜だというにも関わらず、辺りには多くのプレイヤーの姿が見える。ここにいる全員の目的は、明日のレイド戦で間違いないだろう。
「日が沈む前に下見に行っておこうかな」
街を抜けた先に広がる名前もない草原。そこが戦いの舞台だ。
「うーん、何もないな。モンスターも思ってたより少ないし」
下見に来たのはいいが、思っていた以上に何もなかったな。これが今回だけの特別仕様なのか普段からこんな感じかは知らないが、特に見たり、調べたりしておいた方がいいものもなさそうだ。一つ気になるのは———
「ボスはどこから来るか、だな」
レイドボスについては名前以外の情報は公開されていない。この草原に出現することは確かだが、どこから来るかについては明かされていない。地中から来るのか、海から来るのか、空から来るのか。出現場所によって動きを変える必要も出てくるだろうから、早めに知りたかったがこの感じだとどれもあり得そうだ。
「海説が一番有力なんだっけか」
情報収集はシューガに任せきりで詳しくは覚えてないが、確か海中にある腕だかが怪しいみたいな話だったような。
「海の中から攻撃されると面倒だな」
海中の敵に有効な攻撃手段が全く無いから、海の中にいられるとほとんど何もできなくなる。というか、海中の敵に対して有効な攻撃手段を持ってるプレイヤーの方が少ないんじゃないか?近接武器は水中では振りにくくなる。弓みたいな遠距離武器も水の影響を受けるだろう。一番可能性が高いのはm法だが、これも種類を選ぶだろう。バカみたいな火力ならともかく、ただの火を出すだけじゃ大したダメージを与えることはできないだろう。流石にずっと海にいるってことはないだろうけど、どうなるか……。
「まあ、臨機応変に対応するしかないな」
大した情報がない今、結局のところこれが最善策だろう。MVPみたいなものを選出して特別なアイテムを配布するみたいなのはないらしい。特定の部位の破壊などの条件を達成した場合は追加報酬が出るらしいが、相手の情報がない以上、対象となる部位なんかを予測するのも不可能に近いだろうし。
「さて、帰るか」
『さて、明日のレイド戦についてなんだけど—————』
あの後、街に戻ってログアウトした後、明日のレイド戦について軽く話そうということで今は5人で通話中だ。
『ボスについてほとんど情報がない以上行き当たりばったりになるだろうね』
「そうなるだろうな。最初のうちはまとまって行動するか?」
『それも状況次第だけど……、まあ、初めから各自自由行動でいいんじゃないかな』
『私は賛成。パーティを組んでいれば、互いの位置もわかるし何かあれば適宜集まる感じでいいんじゃないかしら?』
『私もそれでいいと思うよ』
「同じく」
『じゃあそういう方向性で。焔さんはどうする?』
『私は戦闘には参加できないから後方支援に専念するよ。簡単な装備の修繕ならそんなに時間もかからないと思う』
『了解。さて、明日は楽しみだね』
「ああ」
やれることは全部やったつもりだ。なら後は全力で楽しむだけだ。
色々あってなかなか投稿できず、申し訳ございません
忙しいですが、週1で更新できたらいいと思っています




