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報酬が現物だけとは限らない

 金属製の武器はあいつに渡したらいけないってことは、よーくわかった。その上であの技をどうするかって話だ。流石にあれだけの速度になると回避は厳しい。技の前にタメがあるが顔を動かすだけで簡単に射出方向は決められるから、回避はギリギリまで待つ必要がある。とはいえ――――――


「もう一回やらせないのが一番の対策かなぁ……」


 それなりにダメージは与えているはずだ。証拠に相手の体にはかなりの傷がある。ただ傷をつけてもそこを雷で焼いて止血しているんだろう。血液みたいなダメージのエフェクトがない。


 相手は素早いから首を斬り落として一発でKOするのも厳しいだろう。糸が見えているのかいないのかは定かではないが、糸による拘束も回避されてしまう。


 このままお互い地道にダメージを与えていったとして、こちらよりも先に相手が倒れてくる確証はないし、何より時間がかかってしまうと今後の予定がズレる可能性もある。あまり長引かせることはできない。何か勝負を動かす一手が必要だ。


「何かないか……?」


「ねえ、夜火。あいつの力は基本的にあの光?雷?が関係しているんだよね?」


「ん?ああ、そうらしいけど……」


「だったらさ、あれをどうにかできれば相手は大幅に弱体化するんじゃないかな?」


「確かにそうだな。とはいえ、どうにかってどうするんだ?」


「どこにあれを発生させる器官があるはずだ」


「あの光は魔力を変換してるって話だ。だからそんな器官はないんだが……」


 そう光や雷を生成する器官はない。しかし、光や雷は魔力を変換して生まれたものだ。だがあれを生み出すのは燃費が悪い。確かあいつは――――――




「魔力を生成する魔力炉心。それがどっかにあるはずだ」


「それを破壊すれば何とかなりそう?」


「多分。破壊してからしばらくすればガス欠になるはずだ」


「よし。じゃあ、その魔力炉心を破壊する方向で行こう」


「場所に心当たりは?」


「あるわけないだろ?これから探すんだよ」


 まあそうだろうな。モンスターは倒した瞬間に素材になっちゃうからどういう構造してるかとか調べる方法はないし。とはいえなんとなく見当はつく。あるとしたら心臓付近な気がする。


「なんかいい方法ない?魔力を感知して探すとかさ」


「うーん。できそうな気はするんだけど、その手段がない」


「それなら提案なんだけれど。夜火の持ってるあの双剣。あれを使えばいいんじゃないかしら」


「なるほど……。振動で体内から攻撃するってこと?」


「そういうこと。うまくいけばその器官にもダメージを与えられるんじゃない?」


「なるほど……。ありかもしれないな……」


「ねぇ、3人とも……。探してる魔力炉心だったっけ?あれの位置わかったかも」


「「「え?」」」


「多分心臓がありそうな場所の真下だよ。そこから全身に何かが回ってる」


「と。とりあえずヨミさんのが合ってる前提で動こうか。夜火、心臓の真下辺りに一本刺してきてくれる?」


「任せろ」


 心臓の位置は人間と同じ位置にあるだろうし、そこら辺を狙うか。


 朧を鞘に納め、鍾鴉双刃を取り出し駆けだす。接近を警戒したのか相手の攻撃は雷による迎撃。こちらの接近を阻むように翼から放たれる無数の雷を、左へ右へと駆けていき回避する。突然、翼を大きくはためかせた次の瞬間、目の前に迫るのは雷の壁。


「やば……」


 回避をあきらめたその時、突然体が浮遊感に襲われる。体を見ると糸が巻き付いているのがわかる。


「ナイス!」


 メイの糸によって一気に相手の頭上へと移動することに成功する。上空に標的を発見したグロリアスがこちらへ向かって突進してくる。空中にいた俺は何もできず、すさまじい速度で迫るくちばしに体を貫かれた。











 ように見えただろう。実際は朧による分身だ。相手の頭上に移動した時点で分身を生み出し、本体はメイの糸によって空中から地面へと移動する。この時にスキル「風魔朧脚」を使ったことで相手は本体を見失い分身へ攻撃を仕掛ける。手ごたえのなさに一瞬相手の動きが鈍る。


「隙あり」


 再び上空へと打ち上げられ、その勢いも利用して渾身の突きを放つ。右手の鍾鴉双刃は深く心臓の真下へと突き刺さる。右手の鍾鴉双刃を手放し、落下する直前。開いた右手の拳を握りなおし、剣が突き刺さっている部分の近くへ全力の一撃をたたきこむ。拳によって生まれた振動は刃へと伝わり、さらなるダメージを与える。


「どうだ!?」


「まだ足りないかも!」


「わかった!」


 頭頂部と翼から溢れる光が心なしか少なくなったように感じるがそれでもまだ相手の機動力が落ちる様子はなく、まだダメージが足りない様子だ。もう一本の鐘鴉双刃とBT-01を取り出し、装備。内部からの破壊に向いていそうな武器オールスターだ。グロリアスの体表の羽に絶大な防御力は無く、剣の刃も通りやすい。銃弾も撃ち込めば弾かれることなく、相手の体内へと深く突き刺さっていく。あっという間に相手の体内には無数の弾丸が撃ち込まれている。


「誰でもいい、大きめの衝撃を剣に!」


「シューガくん、バフお願い」


「任せて。【瞬間強化(クイック・エンハンス)】」


 【瞬間強化】な魔法によってヨミのステータスが一時的に跳ね上がる。


「えいっ!」


 空高く飛翔したヨミがその手に握る剣をバットのように振るい、グロリアスに深く突き刺さっている剣へと打ちつける。



 ギイイイイン!




 金属同士がぶつかる音が山頂に鳴り響く。


 体内に埋まった弾丸と剣の刃が受けた衝撃に反応し、自身もまた振動する。体のあちこちに発生した振動によるダメージでグロリアスの体はバランスを崩し、地面へと向かっていく。


「チャンス!」


 落下するグロリアスへと走り出しながら、両手に握る二つの武器の刃をぶつけ合わせ振動させ、その攻撃力を強化する。


「くらえ……!」


 右手に握る鐘鴉双刃の刃を首目掛けて振るうが、グロリアスは体制を整え、飛翔。間一髪のところで避けられる。


「ちっ……」


 左手のBT-01を構え、発砲。狙いは目だ。撃ち出された弾丸は真っ直ぐに飛んでいき、命中。相手の左目に大ダメージを与える。目を潰され怯んだところへ跳躍し接近。全力のパンチを相手の顎へ叩き込み、さらに蹴りを刺さっている剣の柄に打ち込む。


「どうだ!?」


 相手の様子を確認する間もなく、振り抜かれた翼が眼前へ迫る。自分の体と相手の翼の間に手に持つ武器の刃を挟み込み、攻撃を受ける。翼によって場外へと押し込まれるよりも早く、こちらからも相手の翼を押し返し、その勢いを利用して地面へと向かい着地。


 体力は……、まだ持つな。そろそろ相手も限界だろ。


「「「「!」」」」


 全員がその瞬間を待ち望んでいた。


 グロリアスの全身から溢れ出ていた光が弱まる。作戦が功を奏したのか、単に相手が弱ってきたからなのかはわからないが、とにかく相手の要である光の力は失われつつある。決めるならこのタイミングだ。


「トドメは任せる、メイ!」


「ええ」


 それは()()()()()封じられていたメイの切り札。だが光が失われつつある今でなら使える切り札。


 極光山の山頂付近の大地に漆黒の球体が突如出現する。その内部にいるのは微かな光を放つグロリアスと影の力を得たメイの2名だけだ。


 グロリアスの周辺へ漆黒の影が迫る。それらはグロリアスの放つ光によってあっという間に掻き消されるが、それよりも早く手に握られた剣を振るい、全身に無数の傷を与えていく。


 光が弱点だと気づいたのかグロリアスも力を振り絞り全身に魔力を流し、その身に光を宿す。


 ドーム内が瞬く間に光で満ちる。影の力は失われるがそれは()()()である。




 影のドームが解除され、グロリアスの上空から迫る2つの刃。回避しようにもいつの間にか体に巻きついた糸がそれを許さない。俺とヨミの持つ剣の刃がグロリアスの胴体を斬り裂いていく。




「どうだ!?」






 地面へと着地して上空を見れば、そこにあるのは拘束対象を失った糸とポリゴン。そして極光来鳥グロリアスの素材。




「勝ったな……」


「うん」


「お疲れ様」


「ええ……。本当に疲れたわ……」


「みんなありがとうな」


「いいよ。今度は僕たちの手伝いもよろしく」


「もちろんだ」


「わぁ……。ねぇ、見てみんな」


「ん?おお……」


「これは……いいね」


「ええ、綺麗だわ」


 気づいたら夜が近づいていたらしい。


 目の前にあるのはオレンジ色に染まった太陽が地平線へと沈んでいく景色。ゲーム内とはいえ、その圧倒的な景色に皆が見惚れていた。

50話到達ですね。いつも応援してくださる方、ありがとうございます。

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