お金と少女、鍛冶師と装備
さて、街に戻って何をするのかという話だが、主に3つだ。まず、このゲームにおける金銭の価値について知ること。次に地図について知ること。後は武器と防具を揃えることだ。この3つは確実にやっておきたい。
とりあえず、雑貨屋にでも行って金銭について聞くついでに、回復アイテムとか揃えよう。
さっそくこの街の雑貨屋にやってきたわけだが、制約のことをなんと説明したものか。
「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」
「すいません。自分、お金の価値やら使い方やらを知らなくて。良ければ教えていただけないかと」
店員さんにそう言うと、突然―――
「おにーちゃん、おかねのことわかんないの?あたしがおしえてあげる!」
下の方から声が聞こえたと思ったら、6歳ぐらいの少女がそう言って立っていた。
「あ、こら!娘がすいません」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
少女は店員さんの娘なのか。さて、彼女の好意を無下にするわけにもいかない。しゃがんで目線を合わせ――――――
「そうなんだ。お兄ちゃん、お金のことなんにも知らないんだ。良ければ教えてもらえるかな?」
そう言うと、少女は嬉しそうにうなずいてこの世界のお金について教えてくれた。
「きんか1まいは、1ゴールドっていうの!それでね、きんかをつかっておかいものをするんだよ!あとね、きんかをいーっぱいあつめるとね、もーっとすごいきんかになるんだよ!」
金貨1枚が1ゴールドね。なるほど、まあ大体予想通りというかなんというか。とはいえ、最後の「もっとすごいきんか」っていうのは気になる。多分これが何なのかしっかり説明を受ければお金も使えるようになるのだろう。
「ありがとう」
微笑みながら少女にお礼を伝えると――――――
「うん!」
少女は満面の笑みで、返事をしてくれた。
「娘が失礼しました。私の方から補足、というかしっかりと説明させていただきますね」
「ありがとうございます」
「まず娘の言う通り、私たちは金貨1枚を1ゴールドと呼んで利用しています。1ゴールドは大体人参1本を買えるぐらいの価値でしょうか」
なるほど、それなら1ゴールドは大体50円ぐらいかな?
「そして娘の言うすごい金貨とは、王金貨のことだと思います」
「王金貨?」
「はい、国同士が大きな取引の際に利用する金貨ですね。王金貨1枚は金貨1000万枚にも匹敵すると言われています」
「へぇ、それはすごいですね」
「私たち一般人は、一度でも見ることができれば幸運の持ち主といわれるほどですね。また、王金貨の特徴に、どの国でも価値が共通であるという点があります」
「というと?」
「私たちが使っている金貨は他の種族が暮らす国では使うことができないことがあるんですが、この王金貨だけはどの国でも価値が同じなんです」
そうか、他の種族なんてのもいるのか。他の種族の国に行くたびに換金とかしなくちゃいけない感じなら面倒だな。
「大体こんな感じですね。これで大丈夫でしょうか?」
ウィンドウには、「あなたは金銭の価値について一部理解した」と表示されている。これで買い物はできるようになったっぽいな。所持金の欄に5000ゴールドと表示されている。
「なるほど……。ありがとうございました」
「お役に立てたのでしたら何よりです」
「いえいえ、本当にありがとうございました。さっそくなんですけど、薬草を10個ほど買わせてもらってもいいですか?」
「はい、薬草10個ですね。100ゴールドになります」
ウィンドウに確認画面が出た。ウィンドウでやり取りするのか、とりあえず「購入する」を押す。
「これで大丈夫ですか?」
「はい、ちょうどですね。ありがとうございます」
「また機会があれば来ますね。色々とありがとうございました」
「またねー!おにーちゃん!」
少女を振る少女に手を振り返し、雑貨屋を後にした。
そのあとは、地図を取り扱ってる店に行って地図について教えてもらったり、ついでに食料品を取り扱っている店で料理について教えてもらったりした。おかげで、地図が使えるようになったし、自分で回復アイテムの料理もできるようになった。
そうして最後に街一番と噂の鍛冶屋を訪れることにした。
ドアを開け、中に入ると厳ついおっさんがいた。おじさんではなく、おっさんって感じの風貌なのだ。
「いらっしゃい!見ねぇ顔だな。おめぇさん、最近ここに来た異界人か?」
「そうですね。武器の修繕の依頼、それと防具を買いに来ました」
「そうか、武器を見せてみな」
ウィンドウを操作し、初心の直剣を出して渡す。
「ふむ、これぐらいなら1000ゴールドぐらいで直せるぞ。防具を買うんなら、そこらへんに飾ってあるやつから適当に見繕ってくれ」
「わかりました。先に修繕の依頼をしちゃっていいですか?」
「おう、わかったぜ」
ウィンドウを操作し、修繕を依頼する。そういえば、武器とか防具って製作も依頼できるんだよな。
「武器や防具を作ってもらう場合はどうすればいいんですか?」
「そうだな……、基本は素材と金さえありゃ引き受けるぜ。金額は制作の報酬と制作にかかった費用を合わせた値段なることが多いな。後はこういうのが欲しいっていうのを言ってくれりゃあ、それに合ったもんをこっちが提案して素材を集めてきてもらう、なんてパターンもあるな」
「へぇ~。あ、ウインドウルフの皮とか残ってるんですけど、これ使うとどんな防具になります?」
「そうだな、ウインドウルフの皮は風への耐性が高いから、風に強い防具になるな。それから速さを上げる装備なんてのも作れる」
速さ……、AGIを強化できる装備か。紙装甲の今の俺にはありがたい効果だ。
「なるほど……。例えば、今持ってる素材を全部見せて、その中からどんなのが作れるか教えてもらうっていうのはいいですか?」
「ああ、もちろんいいぜ。見せてみな」
そんなこんなで色々相談した結果、防具は買わずに持ってる素材から作ってもらうことにした。費用に関しては手持ちのゴールドだけじゃ足りなかったから素材をいくつか買い取ってもらう感じで用意した。完成は明日になるらしい。その日は、次の日が大学ということもあり、武器の修繕と防具の制作を依頼した後、すぐにログアウトした。明日が楽しみだ。




