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極光

「ふぅ……」


「結構な数倒したんじゃない?」


「そうだな」


「目標数はいくつなのかしら?」


「うーん、あと少し、かなぁ……」


 光来鳥グロリアス1体目と遭遇したのが昼前。その1体目はそれなりに苦戦したものの4人で戦って撃破。昼休憩をはさんで素材集めを再開。それから約3時間が経過していた。


 一度撃破してから再度湧くまで時間があるおかげで適度に休憩しながら戦闘できているから疲れはあまり溜まっていない。とはいえ、何度も似たような戦いを繰り返せばそれはもう作業であり、ゲームにおける作業というのは時に精神的な疲労となる。そろそろ飽きが生じてくるのも無理はない。


「お、来たか。おーい、次で最後だ」


「そうなんだ。よし、みんな頑張ろう!」


「ヨミさんは元気だなぁ……」


「ねえ、あれって……」


「ん?ああ、説明忘れてたな。あれが()()のモンスター」


「名前が違う?」


「そう。光来鳥グロリアスを狩りまくると出てくる親玉みたいなやつだな」


「はあ……。最初からそう言って欲しかったな……」


「悪かったって。さて、ラストだ。最後まで頼むよ」


 光来鳥グロリアスの素材集めも今回の目的だが、それ以上の目的があるとするならこいつがそうだ。


 ここまで遭遇してきた光来鳥グロリアスたちのサイズに個体差はあれど、ある程度は同じ大きさだった。だが、こいつは違う。光来鳥グロリアスよりも二回りほど大きな体を持ち、頭頂部と翼から放出される光は段違い。光来鳥グロリアス、その上位個体。






 極光来鳥グロリアス






 極光とある通り、こいつがどこからか降りてくると同時にオーロラが発生している。極光という言葉を極まった光とも解釈できそうだが、実際相手の放つ光は光来鳥グロリアスたちとはレベルが違う気がする。


「オーロラ、どうせなら夜に見たかったな」


「そうだけど……。そんなこと言ってる場合かい?」


「来るよ!」


「速っ!?」


 上空から飛来してきた極光来鳥グロリアスは、地面へと近づいたタイミングで俺に向かって高速接近。その体は今にも地面に触れそうなほどの高度を飛行しながら真っすぐにこちらへと向かってくる。


 光来鳥グロリアスと比べて圧倒的に速い。しかし体から溢れ出す光の影響で、その存在感は大きい。姿を捉えるのは容易だ。


 抜いてあった朧を構えながら、スキルによって強化された脚力によって空中へと身を投げ、攻撃を回避する。


 その巨体ゆえに左右への回避には距離を必要とする。とはなれば避ける方向は上か下だが、相手は地面ぎりぎりを飛行しているせいで下への回避は現実的ではない。そうなると上への回避が正解なのかというとそうでもない。


「ッ!」


 突進を回避された極光来鳥グロリアスはすぐさま体を反転させ、未だ空中にいるこちらへ向かい再度突進を仕掛けてくる。空中で回避することはままならず、くちばしが体を貫こうとするのをなんとか朧で阻むが、踏ん張りがきかない空中で相手の突進を受け止めることはできずに吹き飛ばされる。


「あ、やば……」


 今現在、俺たちが戦っているフィールドは頂上付近の開けた場所だ。それなりの広さはあるが、それでも落下して死ぬ可能性は大いにある。つまりは――――――




 このまんまだと落下して死ぬわ。


「こんな簡単に死んでたまるか……!」


 ストームロックグリーヴに魔力を込め、風を纏わせる。極光来鳥グロリアスは俺が空中に放りだされた時に離脱している。纏った風を解放し、その勢いを利用して再び地面へと戻ることに成功する。


 この方法に何回か救われてはいるんだが、制御がきかないんだよなぁ……。毎回着地に失敗してる気がする。ダメージは……、大丈夫だな。にしてもあいつやたらと俺ばっか狙ってくるな。他の3人への攻撃は控えめというか、最低限の反撃しかしていない印象を受ける。


「やっぱり俺が一番素材を持ってるからかな?」


 思い当たる節はこれぐらいだ。多分当たってるだろう。実際あいつは光来鳥グロリアスを何体も倒すのが出現条件らしいし。とりあえず情報共有だな。


「多分そいつは俺を狙ってくる。引き付けるから攻撃頼む」


「了解」


「来るか」


 俺の姿を確認すると3人への攻撃を中断し、こちらへと標的を変えた極光来鳥グロリアスの攻撃がこちらへと迫る。翼から光の球が溢れ、空中へと向かっていく。空中で不自然に止まると同時にそこから雷が降り注ぎ、いくつもの雷の柱が生まれる。


 真上から落ちてきた雷をサイドステップで躱し、回避した先に降り注ぐ雷はスキルによる強化を加え前進することで避ける。そのまま上空に浮かぶ光球を注視しながら回避を続ける。


 おいおい、こっちばっか見てていいのか?これは1対1じゃないんだぜ?


「はああ!」


 大天使の加護によって強化されたヨミの跳躍。あっという間に極光来鳥グロリアスと同じ高度に達したヨミの剣は相手の背中へと振るわれ、その背中に一筋の傷を与える。ダメージを受けたことで雷による攻撃が中断され、攻撃対象がヨミへと移る。


「メイ!」


「任せて」


 振り返ると同時に高速で振られた翼はいともたやすくヨミの体を弾き飛ばす。剣でガードしたとはいえ空中にいるのではさっきと同じように踏ん張りがきかず簡単に地面のない場所へと飛ばされてしまう。ヨミには空中で跳躍する手段はない。しかし彼女が落下死することはない。メイの操る糸が彼女の体を掴み、地上へと引き寄せる。


「ありがとう、メイ」


「どういたしまして」


 よし、ヨミは大丈夫だな。このまま俺が攻撃を引き寄せて他の3人で攻撃してれば勝てるか?


「シューガ、作戦はあるか?」


「とりあえず夜火は攻撃を引き寄せ続けてもらえる?とはいえあの吹き飛ばしは厄介だね。毎回ああやって場外に飛ばされるのは面倒だ」


「だな。相手の攻撃手段もあれで全部かわかんないしな」


「うん。まだ様子見って感じだ」


「わかった」


「聖職者は外しておいて正解だったかな?」


「まあ相手は鳥だしな。サポート頼む」


 さて、どうしたものか。幻霧は相手の視界を奪うという点で有用な能力だが、味方の視界も奪ってしまうという欠点があるから、こういうパーティでの戦闘には向いていない。分身もそっちの操作に加えて3人とも連携しなくちゃいけないとなると集中力が長持ちしないだろう。ラスティ・ホワイトの発光効果も光を操る極光来鳥グロリアスに対してどこまで効果があるかはわからない。小細工はできないだろう。だが、これはあくまで俺の話だ。


「メイ、糸をそこら辺に張り巡らしてあいつの動きを制限できないか?」


「わかった。やってみるわ」


 極光来鳥グロリアスの周辺に糸が展開され、その体を捉えようと動き出す。目視することも困難なほど細い糸であるにも関わらす、相手はその全てを見えているかのように回避する。


「見えてるのか?」


「見えてはいないんじゃないかしら。たぶん別の方法で糸を感知しているんだと思うわ」


「やっぱあの光か……?」


「ふっ!」


 メイの持つナイフが糸を利用して相手へ向かって飛んでいくが、それは簡単に回避されてしまう。投擲されたナイフを咥えるグロリアス、そのくちばしの周りに雷が走る。


「ッ!まずい!気を付けて!」


「まさか……!?」


 それはくちばしと電流による疑似レールガンとでもいえばいいのだろうか。金属製のナイフがくちばしから射出され、圧倒的な速度でこちらへと向かう。


「ちっ……」


 シューガのおかげで気づけたからよかったものの、その破壊力は圧倒的だ。確かに回避はしたが、それも完ぺきではなかった。ナイフは俺のわき腹を掠っていき、ダメージを与えている。


「そのナイフ投げるの禁止な?」


「ええ」


 さーて、どうすっかなぁ……。

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引っ越し終わった~

0時更新と12時更新、どっちの方がいいんですかね

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