再会はいつも突然で
「買い物も済ませたし、この後どうするか……」
城を訪れた後、集合場所へと戻って買い物を済ませて回復アイテム辺りは揃え終わったので、今日は解散ということになった。今日はログアウトすることも考えたんだが、せっかくだしもう少し観光でもするか?とはいえ、観光するにはいささか遅い時間帯だし……。もう少しだけ城下町を適当に散策して今日は終わるか。
路地裏とかって何かイベントとかあるんだろうか?こういう場所、路地裏もそうなんだが、そもそも王国っていうのが色んなイベントが起こせそうな場所だよな。とはいえ、クエストも人の少ない夜には発生することなんてめったにないか。
街を歩いているとNPCが経営する店もあれば、プレイヤーが経営する店もある。販売している物も様々だ。プレイヤー産のアイテムや装備も存在するのが、このゲームだ。生産職のプレイヤーとも交流して色んな繋がりが欲しいものだ。となれば、明日の予定は――――――
リオンさんの所属しているクランの訪問だな
良ければ寄って行ってくれって言ってたし、お言葉に甘えることとしよう。
「さて、宿屋に行ってからログアウトするか」
「やっと見つけた……」
「へ?」
振り返るとそこには1人のプレイヤーがいた。
「みょー……?あ!久しぶりです」
「ああ、久しぶり」
ヨミのお兄さん、こっちの名前はみょーだって言ってたし、声には聞き覚えがあったから案外すぐわかったな。
「何か用ですか?」
「うーん。久しぶりにお前に会おうと思ってな」
「確かに去年は全然会ってなかったですね」
「そういうこと。いい店がある。おごってやるから久しぶりに話そうじゃないか」
「ええ、ぜひ」
「はー、すごい。こんな店もあるんだ」
「いい店だろ?隠れ家みたいで」
案内された店はぱっと見では店とわからないような見た目なんだが、内装が男心をくすぐるようなデザインで立地も相まって確かに隠れ家って感じの店だ。
「あんまし料理の事は気にしてなかったんですよね」
「まあ、空腹度を回復するだけなら特にこだわる必要はないからな」
「にしても、美味しいですね」
出てきた料理を食べるとしっかり味を感じるし美味しい。そうか……、こういう店を探してみるのも楽しそうだな。多分色んな店があるんだろうし。亜人種の料理とかすごい気になる。
「妹は元気か?」
「あれ?こっちで会ってないんですか?」
「いや、この前こっちでは会ったんだが、リアルの方はまだ会って無くてな」
「元気ですよ。大学も楽しそうですし」
「そうか。それは良かった。お前も元気か?」
「ええ、心身共に健康そのものですよ」
「よろしい」
「それを聞くためにわざわざ会いに来たんですか?」
「うーん。それもあるんだが……」
「やっぱ大会のことですか?」
「バレたか。まあ、そういうことだ。優勝おめでとう。先輩に勝ったのも流石だ」
先輩?大学一緒なのかな?
「まあ、ハンデありですけどね」
「それでもだ。まあ、その後ボコボコにされたんだろ?」
「知ってるのか……。まあそうですね。ボコボコにされました」
「まあ、そんなすぐに1年分の差は埋まらないさ。この後の予定は?」
「今日はログアウトして明日はリオンさんのクランにでも行こうかと。そこからは装備整えてレイドに参加って感じですね」
「先輩のクランはすごいぞ。うちのも負けてないがな。今日はもう少しだけ俺に付き合ってくれないか?」
「何かするんですか?」
「いやあ、先輩が負けたって聞いてな。俺も戦いたくなっちゃった」
「あー、はい。1回だけなら……」
「ありがとう。お礼は……後でもいいか?」
「いいですよ」
「さて、じゃあ闘技場に行こうか」
何というか……、偶然だとしてもこうして闘技場のトップ帯のプレイヤーと戦える機会がもらえるのはありがたいことだ。実戦が一番経験になるからな。闘技場での戦闘は経験値がもらえるわけではないので意味がないと捉えるプレイヤーもいるかもしれないがそんなことはない。レベルアップまでの経験がスキルに反映される関係上、ただレベルを上げればいいというわけでもない。いい経験は最終的に自分のためになるというわけだ。
そういうわけで、こうしてトップレベルのプレイヤーと戦えるのはとてもありがたい話だ。確かリオンさんが1位であの人は3位。そのうち2位のツバキさんだっけ?あの人とも戦うことになったりしてな。
「おし、受付も終わったから早速やるぞー」
「はーい」
ハンデはなしでお願いした。確かにハンデありなら拮抗して戦える可能性はあるが、ひとまずはハンデなしでいいだろう。というかリオンさん以外あのレベルのプレイヤーと戦ったことはないから、どんなものか知りたいっていうのが正直な感想だ。
闘技場に足を踏み入れた瞬間、とてつもない威圧感が俺を襲った。
「はは……」
思わず笑ってしまうほどに。
つい先ほどまで仲良く話していた人とは別人と感じてしまうほどに。
先に闘技場に入っていたみょーが放つ威圧感は圧倒的で、彼の雰囲気は先ほどとは別物だった。




