表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エデン・ヒストリア 〜言語習得から始まるゲーム攻略〜  作者: ラー油
異端者は舞い降り、世界を駆ける
37/79

獣魔の王 其の三

 フィールドは霧に包まれ、こっちの現在の位置を正確に把握できていないことでリオンが警戒しているようだ。幻霧による視界の阻害効果は俺にはほとんど効果がない。それに対してあっちは周りがほとんど見えていないだろう。ここからの戦い方はシンプルだ。


 イメージはあの時の戦い。この力の持ち主である幻魔龍オボロ、あいつと同じような戦い方だ。つまりは分身を織り交ぜたヒットアンドアウェイ戦法である。大事なのは相手に分身していることを悟られないこと、そして攻撃してすぐに離脱することだ。


 ここで一つのスキルが真価を発揮する。「幽楽走波」というスキル。これは相手に認識されていない時、AGIへの補正効果が強化されるのだ。つまり、今なら俺は全てのスキルをフルパワーで使うことができる。


「ふぅ……」


 MPもいい感じに回復してるな。行くか。


「朧影「此岸」」


 分身を3体生み出す。4対1、まずは数的有利を取る。AIに完全に操作を任せるのは心配だ。ここからは余計なことを考えている余裕はない。アバターと分身の操作に全神経を注ぐ。


 まずは本体の俺が背後へと回り込み、剣を振るう。幻霧は完全に視界を遮るわけじゃない。接近すればするほど気づかれるリスクも高くなる。流石の反応速度だ。完璧にではないが、ガードされた。即離脱、分身ではなく高速移動による追撃と勘違いさせられるタイミングを見計らって分身に追撃を指示。分身の追撃が迫る。背後から迫る刃を今度は防ぐことができなかったな。ようやくいい攻撃が入った気がするな。


 今度は正面。急接近させた分身による抜刀。これも躱されるが問題はない。回避した先には既に――――――




「なっ!?」




 本体である俺が回り込んでいる。「阿修羅乱舞」発動からの両手に握られた2振りの刀の連続攻撃。回避中の体勢で捌ききれるかな?


「ちっ……」


 あれにも反応するか……。とはいえ確実にダメージは与えられてるな。この調子でいけば――――――


「っ……!」




「マジかよ……!」


 危なかった……。こっちの位置を把握できているのか?突然の攻撃に思わず焦ったがなんとか回避に成功する。そろそろ分身してることぐらいは気づいてそうだな……。だが相手に幻霧をどうにかする手段がない限りこっちの有利は変わらないはずだ。


 近くにいる分身に指示を出す。俺は刀を鞘にしまい手を体の前で組んで待機。走りこんでくる分身が組んだ手を足場に飛び上がり、相手の頭上を飛び越え背後へ。不意打ち成功、2振りの刀による攻撃は相手の背中に傷を残す。


「ヤバッ……」


 分身に高速の拳が迫る。攻撃直後ですぐに回避に移ることは不可能。だがあそこにいるのが分身でよかった。


「解除」


 お、驚いてるな。まあ当然か。




 目の前からいきなりいなくなったわけだし。




 朧の分身は「此岸」、「彼岸」関係なくこちらの任意で解除することが可能である。別に倒させてもよかったんだけどな。解除するとMPが多少は返ってくるからいつ決着がつくかわからない以上MPは大切にしていきたい。


 分身にBT-01を撃たせて、相手をそちらへ誘い込む。弾丸の軌跡を辿ったとしてもそこには何も残っていない。分身は解除した。まだMPが必要だからな。ほんの一瞬でも相手を迷わせることができれば、それは隙になる。弾丸の先に誰もいないことで回りを探しているようだが――――――


「タイミングばっちりだな」


 「風魔朧脚」の効果が切れるタイミングでちょうど相手の背後へ。あっちからすれば突然俺が現れたように感じただろうな。振り向きざまに放たれた拳を避け、胴体へ一閃。初めにつけた傷をなぞるように剣を振るう。


「ちっ……、めんどくさい霧だな……」


 幻霧に苦戦しているみたいだな。これをどうにかするには魔力に干渉する力が必須だ。幻霧は視界を遮りやすいように見た目が変化した魔力を体外に放出しているとかなんとかってウォーグが言っていた。まあとりあえず、現実と同じ方法ではこの霧を晴らすことはできない。相手がそれに気づているか……。


「はあっ……!」


「うっそぉ……」


 地面に両腕を叩きつけただけで幻霧があっという間にリオンの周辺から吹き飛ばされてしまった。あれ、何したんだ?


「ほら、出て来いよ」


 もう同じ戦法は使えないだろうな。幻霧は破られたも同然なのでこのまま出しておいても意味は無いだろう。狼牙をラスティ・ホワイトへ切り替え、幻霧を全て吸いつくす。


「やっぱり何人かいたか」


「よくわかりましたね」


「傷のつき方とかが違ったからな」


 フィールドには分身を含めて2人の俺がいる。朧の分身は便利だが、傷などが共有されないっていうのは強みでもあり、弱みでもある。基本不意打ちに近い攻撃を繰り返していても攻撃は当然受けている。ダメージを受ければ傷もつく。そこから分身していることに気づくのは流石だな。


 ここまで致命傷になりうる攻撃こそ受けていないものの、確実にダメージは蓄積されている。ダイナマイト系スキルの自傷もあり、体力に十分な余裕があるとは言えない。


 幻霧に頼った攻撃はもうできない。ここから試されるのは俺の力だけだ。朧とラスティ・ホワイトを握りなおす。分身を解除し、MPを回復。さて、そろそろ終わりにしたいな。


「行きます」


「ああ、かかってきな」






 2人の戦い、その決着の時は近い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ