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エデン・ヒストリア 〜言語習得から始まるゲーム攻略〜  作者: ラー油
異端者は舞い降り、世界を駆ける
36/79

獣魔の王 其の二

ブックマーク400件までいきました。ありがとうございます。

 腰に表れた朧に手をかけ、意識を研ぎ澄まし相手の出方を伺う。鍾鴉双刃の攻撃を受け止めたガントレットはさっきまでの不定形から、リオンの腕にピッタリ合うように形を整えている。スライム形態への変化が能力か?それだけならユニークとは思えないほどに控えめな能力だが……。実際どうなのかはまだわからない。


「来た……」


 リオンの脚が再び獣のものへと変化。急接近してからの手刀を抜刀した朧ではじき返し、そこから胴体目掛け突きを放つ。しかしそれは難なく回避され、今度はこちらの顔へ向かって振りぬかれた蹴りをしゃがんで躱す。立ち上がると同時に斬りかかり、ダメージを与える。


「ほっ……」


「ラビット・フット」を使い、空中でバク転をするように飛び上がりながら距離を取る。


「なるほどな……」


 あの変化が獣魔王の能力なのは間違いない。映像を見たとはいえ、俺が見た試合とは条件が異なるせいであんま参考にできないな。映像で見た技をどこまで使えるか、どれだけの変化が可能なのか、同時にどれだけ変化できるのか、とわからないことだらけなんだよなぁ……。


 まず、モンスターかな?まあとりあえず、変化する手足にはいくつか種類があるのは確定だ。ざっくり分けるならパワー重視とスピード重視って感じだ。見せてないだけで胴体や腰も変化させてくるだろう。あったら間違いなく厄介なのは「翼」といった飛行系だな。現状、俺が持つ空中にいる相手に対抗する手段は3つ。「ラビット・フット」によって強化された跳躍。ストームロックグリーヴの効果で発生させた風を利用した跳躍。最後に朧の分身を利用した跳躍だ。


 「ラビット・フット」はスキルだから連続使用はできない。ストームロックグリーヴもクールタイムに加えてMPの消費もある。朧もほぼ同じ。クールタイムこそないもののMP消費がある。高さによっては最初に使ったときのように分身を何体も出す必要がある。そうなるとMPが自然回復とアクセサリーの回復だけで足りるか不安だ。


「すぅぅぅ……」


「は?まさか……」


 あ、なんとなくだがあれはヤバイ気がする。


「はっ!!!」


「ヤバ……」


 迫りくる火球を見て思わず声が出る。人間辞めてるな、あれ。てか、どうしよう。あの火球、結構でかいから防御は不可能。避けるしかないか……。スキルを使って火球の射線から外れるように移動し、回避する。まあ、そうすれば当然――――――


「ちっ」


 追撃してくるよなぁ……。何とか朧で防いだが、突然の攻撃は予想していても心臓に悪いから辞めてほしいものだ。迫る拳をしゃがんで回避し、背後に回って朧を振るい背中から斬りかかる。ん?手が変わったな。これまでのは、虎を思わせるような見た目のパワー特化って感じの腕だったが、今度のはトカゲとかそんな感じの鱗を纏った腕だ。こっちはスピード特化か?


「うおっ!」


 はい、正解。速い、そして鋭い。貫手による攻撃は、変化したことで生じた鋭い爪によってその殺傷能力が格段に上がっている。当たれば即死の可能性もある。とはいえ、いいものを見れた。あのガントレットの能力というか強みがわかった気がする。


 ここまで何度か腕による攻撃を受けてきたが、腕が変化している間、あのガントレットはなぜか見えているのがすり抜けるという不思議な状態になっていた。そしてそのすり抜ける状態のままあの不定形状態になって変化後の腕に合う形へ変形、再び実体を持つ。って感じのことが起きている。腕の変化を一切邪魔することなく、そのうえ変化後の腕に合った形へと変わるガントレットは確かにあのバトルスタイルとかみ合っているように感じる。


 くっそ……。相手の攻撃のスピードが上がったせいで、朧一本で捌ききるのは厳しくなってきたな。狼牙も装備して二刀流スタイルに変更。こちらも2本の刀で連続攻撃に対応する。腕がパワー特化のものへと変化したときには狼牙を鞘に納め、朧を両手で持ち攻撃をしのぐ。流石にあれを片手で受け止められるほどSTRにステータスは振れていない。


 防戦一方って感じだ。このままいけば少しずつこっちの体力が削られて負けるのが目に見える。相手のユニークらしき武器の効果もあのすり抜けと形状変化だけだと仮定すれば、本当にあっちはほとんどの手札を使い終わっているっていうことだ。他に使えるであろうモンスターの能力だけが気掛かりだが、まあいいや。


 今度はこっちが攻め立てる番だ。相手がこっちを視認できているうちはどれだけやっても致命傷となるような攻撃は与えられないだろう。それほどまでに獣魔王によって得た力は強力だ。だが、相手の不意を突くことができればチャンスはある。相手の背後を取れた時の攻撃はダメージ量はともかくとして、しっかりとダメージは与えることには成功しているのだ。幸いにも不意打ちはこっちのユニークの得意技と言ってもいい。さあ、やるか。


「幻霧」


 その一言をトリガーに、闘技場は霧に包まれた。

誤字報告ありがとうございます。

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