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エデン・ヒストリア 〜言語習得から始まるゲーム攻略〜  作者: ラー油
異端者は舞い降り、世界を駆ける
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影より現れるメイド 後編

 影に潜むのは「フラッシュ・リペア」で影を打ち消すことで対処するとして、まだあるはずのユニークジョブの能力が気になる。


 互いにユニークモンスターの能力がわからず様子見が続く中、先に動いたのはメイだった。


 ナイフを持ったまま糸を操らんと手を振るうが、そうはさせない。スキルをフル稼働させ接近する。影への対策は十分なはず。まず狙うは腕の先、糸が伸びているであろう位置だ。「技巧剣舞」を発動して状態で右手の朧を振り、糸を断ち切らんとするが、相手も負けじと糸の張りを緩め切られないようにする。糸に武器が絡め取られないように急いで自分の元へ武器を引き寄せ、右足で蹴りをいれるがガードされる。そろそろ使うか……。


「朧影」


 朧の能力によって生み出される分身は1体ごとにMPを10程度消費する。今回は「此岸」を2体、「彼岸」1体生成する。


「さあ、ここからは4対1だ」


 常に位置を入れ替えて本体、そして実体のない分身「彼岸」の位置が分かりにくくなるように立ち回ることを意識する。4人がかりで攻め、相手に攻撃の隙を与えないようにする。


 MPの回復を確認し、幻霧を発動。糸の攻撃も視界が悪ければ何もできないだろう。幻霧の中ではアクセサリーの効果も相まって俺の姿は接近するまで視認することは不可能と言ってもいい。このまま押し切る……!


「厄介ね、この霧」


 幻霧は魔力による霧。風で吹き飛ばすこともできず、温度を変えて解除することも不可能な理不尽技と言ってもいい。ヒットアンドアウェイを繰り返すだけでもそれなりのダメージは与えられるだろう。


「こっちも切り札を使おうかしら」


 突如、闘技場の空が闇に包まれる。それは無数に張り巡らされた糸のドーム。光を遮り――――――




 影を生み出すためのドームだ。




 そして、闇夜幻影のもう一つの能力。夜火の持つ朧、その分身能力によく似たその力は「影の分身」を生み出す力。生成上限は自身が触れている影の面積に応じて増加し、意思なき分身を無数に生み出す。生み出された分身は自分の意思で操ることはできず、その分身を動かすAIも大したことはない。しかしその分身は、メイのサブ職業「傀儡者」の力により糸を用いて操ることでその力をさらに増している。




「ッ……!いきなり暗くなったと思ったらなんだ?これ」


 全身が黒のメイの形をした何かが突然出現する。俺の姿は見えていないのか攻撃が当たることはないが、いかんせん数が多い。しかもメイ本人は影に隠れているのか姿が見当たらない。よく見ると闘技場の中にドームみたいなのができて光を遮っている。


 メイを引きずり出すなら影を無くせばいいのだろうが、問題はそれなりに広いこの謎のドーム一帯を照らすにはラスティ・ホワイトに貯められた魔力が足りないことだ。やむを得ないが幻霧を吸収する。視界が晴れたことで影の分身が一度に襲いかかってくる。


 迫る分身の攻撃をはじき、受け流す。霧を吸収すればするほど視界は開け、襲いかかる分身の数も増えていく。どういう原理で動いているのかわからないが正確に首を狙ってくるのが面倒だ。スキルを適宜発動しながら攻撃を捌いていく。




 なんとか分身の猛攻を凌ぎ、魔力のチャージは十分。発光してメイが出てくるのであればこのタイミングで決着をつけたい。出てこなければドームの破壊が目標だ。ドームの中心へ向かい、ラスティ・ホワイトを掲げる。


「フラッシュ・リペア!」


 幻霧を吸い尽くし大量の魔力を消費して放たれた光は、ドーム内の全ての影を打ち消し、影がなくなったことでメイが姿を現す。


「眩しい……」


 フラッシュ・リペアの光が影を打ち消すだけでなく、メイの視界を一時的に奪う。メイは目が見えなくても気配だけで俺の位置を探って反撃してくるかもしれない。


 そういう相手のためのスキルが「風魔疾風脚」だ。効果発動中、俺の気配を限りなく無くすこのスキルによって加速し接近、目が見えていないメイの背後に回り込む。朧は既に納刀済みだ。攻撃スキルを全て発動、相手に感知されていないことで発動している「アサシンズソード」の効果に加えて、「抜刀術」の効果が乗った渾身の一太刀。


「終わりだ……!」


 朧はメイの胴体を切り、その体力を全て奪い去る。











「次は大会のルールとか気にせずやりたいな」


「そうね。とはいえ課題は見つかったから良かったわ。またやりましょう」


「ああ、次も俺が勝つがな」


「次こそは私が勝つわよ」


「2人ともお疲れ〜。メイも夜火くんも凄かったよ」


「あなたもあれぐらいやれるでしょうに」


 え?あの天使みたいなやつ、多分シューガが言ってた加護なんだろうけどあのレベルの強さなの?ちょっと気になるな……。


「私は対人戦苦手だからな〜。あそこまではできないと思うよ」


「お疲れ、2人とも。今日はもう遅いし、大会のエントリーを済ませたらもうログアウトしよう」


「そうね」


「わかった」


 大会のエントリーは闘技場の受付みたいなところでできた。もう少し遅かったら参加できなかったそうなので本当に危なかった。大会はバトルロワイヤル形式で人数を絞り、そこからトーナメント戦らしいが一番プレイヤーはシード枠としてバトルロワイヤルなしで本戦に参加できるらしい。俺もメイも中級リーグに参加することになりそうとのこと。


 大会ではレベルが50で固定されるらしいがスキルはレベル50以上の時点で習得したものも使えるそうなのでスキル目当てでレベル上げする必要がありそうだ。装備だって更新したいし、本戦は来週だからそれまでに準備を進めなきゃな。目標は当然優勝した上で、獣魔王とやらにも勝つことだ。


「やることは山積みだな……」

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