幻霧刀「朧」
あけましておめでとうございます。
「さて、できてるぜ」
そう言ったウォーグの手には、一本の日本刀がある。
「それが完成した武器か?」
「ああ。幻霧刀「朧」、それがこの武器の名だ。ほらよ、試しに振ってみな」
ウォーグから幻霧刀「朧」を受け取る。重すぎず軽すぎないちょうどいい重さだ。次に鞘から刀を抜く。
「おお……」
刀身は薄い紫色をしていて、見事な輝きを放っている。そして、存在感?みたいなのがすごい。抜き放った瞬間、空気が重くなるような感じがした。はあ……すごいな……。言葉も出ないとはこのことだ。
「能力は確認したか?」
「あ、忘れてた」
朧のデザインにばかり目がいっていたが、この刀はユニークモンスター、幻魔龍オボロの力を受け継いでいるのだ。
幻霧刀「朧」(ATK:100)
・幻霧
MPを消費することで、幻霧を発生させる
・朧影「此岸」
MPを消費することで、その時点のプレイヤーと全く同じステータス、アイテムのプレイヤーの実体のある分身を生み出す。
・朧影 「彼岸」
MPを消費することで、その時点のプレイヤーと全く同じステータス、アイテムのプレイヤーの実体のない分身を生み出す。
・分身は思考によるマニュアル操作とプレイヤーの思考をトレースしたAIによる操作の2種類が可能。
・DEXの値に応じて、分身の生成や思考操作に精度が上昇する。
・INTの値に応じて、分身のAIの性能が向上する。
なるほど?わかったような、わからないような。とりあえず使ってみればわかるか。
「試しに使ってみていいか?」
「おう、あっちに試し切りのための場所がある。そこを使うといい」
さてと、まずは幻霧からだな。
「えーと、幻霧」
発動を念じた瞬間、刀身からあの時俺の視界を遮ったのと同じ霧が放出され、辺り一面に広がる。発動を念じている間はずっと霧が放出される感じかな?MPがグングン減っている。ちなみにこの霧、やっぱ放出している俺の視界にはあまり影響がないようになっている。どこら辺まで広がっているか視認できるが、あの時のように全く見えないってことはない。これでオボロがあの霧の中で正確に攻撃できた理由はハッキリしたな。
「どう?俺の姿見えてる?」
ウォーグに確認しないと霧が他人から見たらどんなもんかわかんないのは微妙だな。
「全く見えねぇぞ。少し近づいてみるからその場から動くなよ」
「了解」
ふむ。ウォーグのおかげで大体わかった。朧の刀身と同じぐらいの距離まで近づかないと俺の姿はわからなかったそうなので、視界を阻害する効果は絶大だろう。いいね、PvPで便利そうな効果だ。霧も俺の任意ですぐに消せるみたいだし。
「次。えーと、朧影「此岸」」
効果を発動したら目線の先に霧が発生して中から俺が出てきた。ふむ、こんな感じに出てくるのか。思考操作でも分身を操作できるらしいし、とりあえず思考操作で動かしてみるか。
「うーむ。なんとも言えないな〜、この分身」
それなりの時間試してみたが、戦闘しながら分身を完全に思考で操作をするのは厳しそうだ。オートモードにして定期的に指示を出すっていう使い方が主になりそうだ。分身の発生場所は何も考えないと視線の先に、意図的にここにこういう体勢でということを考えておくとそこに出てくるって感じだった。難しいが使いこなせれば圧倒的に便利な能力というのが総評かな。
「よし、最後に一つ試したいことをやるか」
スキルを発動して思いっきりジャンプ。
「朧影「此岸」!」
朧の能力を発動、足が上になるように分身を呼び出す。呼び出した分身の足裏を踏み台にし、さらにジャンプ。このとき分身にも俺を蹴り上げるよう操作する。
「おおっ!いいね!」
試したかったことはこれだ。この方法ならMPがある限り、無限に空中ジャンプできるのでは?分身は踏み台にしたらすぐに消すようにしているので落下死もしていない。素晴らしいアイデアだ。うん、間違いない。
「…………!」
ん?ウォーグが下でなんか言っている。あれ、ちょっと待て。調子に乗って擬似空中ジャンプを繰り返した結果かなり高いところまで来たわけだが―――
「降りる方法考えてなかった……」
その後、地面に思いっきり叩きつけられウォーグに怒られたのは別の話だ。
「さて、朧を気に入ってもらえたようで何よりだ。頼まれてたアクセサリーも完成してるぜ。まあ本職じゃあないがそれなりにいいもんになったと思うぜ」
朧隠れの龍鱗
・DEX+15
・幻霧の中にいるとき、他プレイヤーから認識されにくくなる。
かなり便利では?DEXを上げる効果もいいけど、それ以上に2つ目の能力はありがたい効果だ。あの霧の中、元々見えづらいのにそっからさらに見えにくくなるんだろ?
「神アクセサリーでは?」
「そっちも気に入ってもらえたんならよかったぜ」
ピコンッ
『ユニーククエスト:鍛治師からの依頼をクリアしました』
お、クリアか。
「さて、俺は個人的にお前に興味がある。今後ともお前さんの武器や防具を作りたいんだが、どうだい?」
「いいのか?こっちとしてもぜひお願いしたいんだが」
「ああ。今後ともよろしくな」
「おう、よろしく」
ウォーグの工房には滅んだ人類とやらが使っていた武器も置いてあったし、鍛治の腕もいい。今後とも関われるのはありがたい話だ。ストーリーも進行するらしいし、ウォーグから色々情報を仕入れられればいいな。
お正月ということで帰省やらなんやらで少し投稿をお休みしていました。
とりあえず私は無事です。
年末の連続投稿でブックマークがかなり増えていて嬉しい限りです。今後ともよろしくお願いします。
主人公の空中ジャンプはスカイラブハリケーンみたいなのを想定していただければ大丈夫です。