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エデン・ヒストリア 〜言語習得から始まるゲーム攻略〜  作者: ラー油
異端者は舞い降り、世界を駆ける
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幻霧の中に龍を見ゆ 其の四

 背後から迫るオボロの攻撃。攻撃に転じる時のために残しておいた加速系スキルの中から「ダイナマイト・ブースト」を使って気合で避ける。


「だあああああ!あっぶねぇ……!」


 何とか攻撃を避けることはできた……が、気づいたらオボロ達はポジションを変えてしっかりと本体がどれかわからないようにしている。これでまた振り出しだ。しかも3体のうち1体は実体のない幻だ。ここからはどれが本体かに加えてそもそも実体があるかどうかも気に掛ける必要が出てくる。


 とはいえさっき倒した分身はラスティ・ホワイトで比較的簡単に倒せた。霧と実体のある分身、どちらも魔力が関係していたってことは実体のない分身もまた魔力が関係しているのは間違いないはずだ。左手に握られたラスティ・ホワイトが攻略の要なのは間違いないだろう。


 出血のエフェクトは絶えずオボロから発生している。相手も悠長に戦っている余裕はないはずだ。まずは厄介な分身共を倒すことからだ。ラスティ・ホワイトで切った時のエフェクトの有無で本体か分身かは簡単に見分けられる。さっきみたいにどれがどれなのかわからない状況で相手から攻撃されるのが一番面倒だ。


「先手必勝!」


 「風魔脚」とストームゲイルグリーヴの効果を発動し、相手から攻撃してくる前に接近する。


「まずは……」


 目の前にいるオボロに向かってラスティ・ホワイトを振るう。


「1体目!」


 攻撃が空振るってことは、こいつは実体のない分身だ。ラスティ・ホワイトに分身を構成する魔力が吸われたことで分身は消滅。


「次ッ!」


 「ダイナマイト・ブースト」発動。2体目に接近して右手の純白の剣(レフコース)を振るうと今度は血を思わせるエフェクトが発生する。こいつが本体なら――――――


「お前が分身ってことだ!」


 もう1体のオボロに向かって左手のラスティ・ホワイトを全力で投げつける。「ダイナマイト・オーラ」を使い、瞬間的に引き上げられたSTRによって投げられたラスティ・ホワイトは相手が避けるよりも早く、その体に突き刺さり魔力でできた分身の命を吸い取っていく。これで分身の対処も終わりだ。


「残りはお前だけだ!」


 オボロ本体の前足が俺に向かって振るわれるが、「アクロバットステップ」で難なく回避し、その前足に純白の剣(レフコース)を振るい、そのまま今度は相手の体に向かって剣を振るう。


 相手の残り体力が見えず、後どれぐらいで倒せるかっていうのがわからないのはなかなか厳しい仕様だ。相手の残り体力を把握するには相手をよく観察するしかない。


 相手を見れば体には複数の傷があり、息も荒い。確実に相手が弱っているのがわかる。ラスティ・ホワイトを刺した分身を見やると体が薄くなっている。あっちは後少しで倒せるはずだ。


 オボロも死が近づいているからだろう。攻撃のスピードが上がっている。スキルを駆使して攻撃を可能な限り避け、どうしようもない攻撃はパリィなどでとにかくダメージを最小限にする。ひたすら避けて攻撃、その繰り返しだ。






「ギャアアアアアア!」


「ッ……!やっと倒せたな!」


 オボロの分身が倒れた声が聞こえてくる。次の分身を出される前に決める……!オボロの分身の魔力を吸いつくし、地面へと落下していくラスティ・ホワイトを回収するため、全速力で走りだす。


 ラスティ・ホワイトを回収し、オボロ本体と向き合う。手持ちの回復アイテムはほとんど使い切っている。俺もオボロも満身創痍といっていいだろう。「フラッシュ・リペア」による目くらましは何度も使っているので間違いなく対策してくるはずだ。だが、相手の体力を削りきるのであれば「フラッシュ・リペア」による目くらましで時間を稼ぎたい。


「考えろ……。どうする……?」







 一瞬迷い、すぐに答えを出す。


 ストームロックグリーヴに魔力を込め、「風魔脚」でAGIに補正をかけて走り出す。オボロに接近し、左手に携えたラスティ・ホワイトを高く掲げスキルを発動しようとした瞬間、光を警戒したオボロが目を閉じる。


「予想通り……!」


 「フラッシュ・リペア」の発光は確かに目をつむるだけで対策できてしまう。だが目をつむれば一時的ではあるが目が見えないのと変わりはない。目をつむっているうちにさらに接近し、オボロの眉間にラスティ・ホワイトを突き刺す。


「ギギャアアアア!」


 突然眉間に痛みを感じ、叫び声をあげたオボロの目が開かれる。ここだ……!


「フラッシュ・リペア!」


 何度目かわからない「フラッシュ・リペア」の閃光がオボロの視界を奪う。目が見えなくなり、とにかく俺を遠ざけようとただ暴れまわるオボロ。


 このゲームに部位破壊の概念があるのは確認している。であれば――――――




 首を切り落とせば、確実に死に至るはずだ。


「これで終わりだ!」


 武器を両手持ちに変え、上段に高く純白の剣(レフコース)を構える。



 スキル「ダイナマイト・ブースト」、これまで加速スキルとして十二分に活躍してきたこのスキルは、地面を踏み込む力を高めることでその加速力を発揮している。そう、このスキルの本質は踏み込みの強化である。であれば――――――



「ダイナマイト……」


 剣を握る両腕に、そして地面を踏む足に精いっぱいの力を込め――――――






「ブーストッ……!」


 スキルを発動し、オボロの首に近づく。「ダイナマイト・ブースト」で瞬間的に強化された踏み込み、そして攻撃系スキルの効果も乗せ、ありったけの力で振られた剣は――――――











 オボロの硬い鱗をものともせず、その首を断ち切った。


 ウィンドウには勝利の証が表示されている。

『ユニークモンスター:幻魔龍オボロを撃破しました』











「ふう……、終わったぁ~」


 ユニークモンスター、こいつよりもレベルが高いやつもいるのか……。霧と分身だけでもかなり強かったなぁ。ユニークモンスターの討伐報酬は3種類らしい。素材は確実にドロップするが、そこに加えて「追加の素材」、「ユニークスキル」、「ユニークジョブ」の中から1つが与えられる。今回は素材だけのパターンだったようで、特に新しいスキルやジョブは追加されてない。


「帰ったらウォーグに文句言ってやる……」


 こんな始めたての人間にユニークモンスターの討伐なんてさせやがって。


 疲れ切った体を引きずり、ウォーグの工房へ向かうため街へ戻る。

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