「鍛冶師からの依頼」
年末なのでたくさん更新します。
翌日、秀我たちと会う約束をしていたので近所のショッピングモールにやってきた。
「やあ、調子はどうだい?」
「おっす、調子はいいよ」
まあ、昨日ウォーグから依頼について聞いていたせいでログアウトするのが遅れて少し眠いけど……。
「そういえば、ユニーククエストを受注した」
「よかったじゃん。あ……、それって『鍛冶師からの依頼』?」
「そうだけど……?」
なんで知っている?もうバレたなんてことはないし、まさか――――――
「割と有名なユニーククエストなのか?」
「そうだね。本人に合った装備を作ってもらえるから確かにユニークではあるんだけどね……。発生頻度は割と多くて有名なんだよ」
「まじかよ……」
ユニークだからって喜んでたのになあ……、まさか有名なユニーククエストだとは……。それってもうユニークじゃねえじゃん。
「まあまあ、不貞腐れないでよ。作ってもらえる装備は高性能でプレイヤーに合ったものだから」
「まあいいか……。そういや、2人は?」
「服見に行ってるって連絡があったよ」
「了解。俺らも向かうか」
その後、ゲームの話をしながら買い物して帰宅した。
ユニーククエスト「鍛冶師からの依頼」は確かに発生しやすいユニーククエストとして有名だが、燈夜は知らない。依頼をする鍛冶師がドワーフなのは彼が初めてだということを。
「さて、ログインしますか」
帰宅後、早速ログインして目を覚ますと、そこはウォーグの工房。
「お、帰ってきたか」
「ああ。早速頼まれた素材を取ってくるよ」
「頼んだぜ」
さて、頼まれた素材は本大陸にあるエリア「妖獣魔竹林」にいるモンスターの素材だ。ここのモンスター、調べた感じだと妖怪の特徴を持った獣系モンスターが多いらしい。後は鬼とかもいるそうだ。
さて、妖獣魔竹林に到着したので目当てのモンスターを探す。岩鉱喰らいの大熊戦ではダイナマイトニウムの活躍によって影が薄くなっていた純白の剣だが今回こそは活躍してもらおう。初心の直剣から強化したことで攻撃力と耐久力が上がったわけだが、まだ大した効果を持ってはいない。
初心武器はどんな強化素材を使うかで性能が大きく変化する。そのためプレイヤー達の間では「一番初めに手に入れるユニーク武器」と言われるほどである。自分で強化素材をある程度選べる関係上、自分に合った形へとカスタマイズできるのが最大の強みだ。獣魔王だっけ?あのレベルのプレイヤーになると本当のユニーク武器並みの性能らしい。純白の剣が最終的にどんな武器になるか楽しみだ。
「にしても不気味なところだ」
竹林とあるように、このエリアには多くの竹が生えている。ただマジで妖怪が出そうな言語化しにくい感覚がある。心なしか肌寒いしな。霧でもかかっているのか視界も少し悪い。
目当てのモンスターを探しながら、どんどん先に進んでいくと竹の上にいるモンスターと目が合う。「ボースター・クロウ」……、ボースター、自慢屋?あー、それでテングってことか。てか、あいつが探してたモンスターだ。
「さっさと目当ての素材落としてくれよ……!」
さて、戦闘開始だ。ボースター・クロウはカラスベースの体にテングの特徴を持ったモンスターだ。長く赤いくちばし、テングが持つうちわを思わせるデザインの尻尾が特徴的なデザインをしている。
攻撃手段はというと、テングの特徴を持っているというのならおそらく――――――
「風だよなあ……!」
相手は羽を羽ばたかせただけだ。それだけで突然発生した突風が俺を襲う。だが疾風の大風狼との戦いで似たような技を経験しているので大した脅威ではない。純白の剣を地面に突き刺して吹き飛ばされるのを防ぐ。
あの技を連続で発動できるとは思えない。これまでの経験から多分モンスターの大技にもスキルと同じようにリキャストタイムが存在する。疾風の大風狼の風をまとう技も竜巻を発生させる技もそうだった。
実際、ボースター・クロウが次にとった行動は急降下からの攻撃。連続で使えるならわざわざこんなことをしてくる必要はないはずだ。ずっとあの風をやっているだけで十分協力だからな。
地面から純白の剣を抜き、迎撃の準備をする。
「カアアアア!」
俺の目の前で急停止したと思ったら、再び羽を羽ばたかせ風を発生させるボースター・クロウ。だが、さっきより風の勢いが弱い。スキルで強化して無理やり体を前に進めて接近し剣を振る。狙いはあの風を生み出す翼だ。
「ちっ……。すぐに離脱するか」
剣を振るった瞬間に避けてその場から上空に離脱しやがった。とはいえなんとなくわかったこともある。風を発生させるのは多分あのモンスター固有の能力だ。とはいえ風の勢いは最初より控えめだった。風の勢いを強めるのが大技枠だろう。とにかく、あいつを倒すには風の攻略が必須ってことだ。
上空に離脱したとはいえスキル込みのジャンプで届きそうな高さではある。ただジャンプ中に風を吹かされたら間違いなく吹っ飛ぶのでタイミングを見計らう必要がある。
「あれ試してみるか」
武器を純白の剣からラスティ・ホワイトに変える。
輪廻の錆白から生まれた剣であるラスティ・ホワイトは魔力を吸うことで錆として魔力を蓄積する。刀身が錆びていても切れ味に大きな影響もないという不思議武器だ。蓄積した魔力を解放することで発光しながら耐久を回復する効果「フラッシュ・リペア」を持っている。そして副次効果である発光の光量もまた蓄積した魔力によって変わる。
目くらましとして使うなら、まだ魔力が少し足りない。手っ取り早く魔力を貯める方法を模索した結果俺が行きついた答えは――――――
―――MP回復用のポーションをぶっかけることだ
MP回復用ポーションをかけるとなぜか刀身がすごいスピードで錆びていくのだ。多分魔力を回復するポーションだから魔力が込められているとかそんな感じだろう。原理は今はどうでもいい。正直よくわかっていないしな。とにかく刀身が錆びたことが大切なのだ。
「よし、準備完了。行くぜ……」
ラスティ・ホワイトを掲げ、相手を見据える。
「フラッシュ・リペア!」
宣言すると同時にラスティ・ホワイトがすさまじい光を放つ。
光ることがわかっている俺は目をつむっていたので特に影響はないが、相手は確実に目が使い物にならなくなったはず。相手の後ろ側まで走りこみ、「ダイナマイト・ブースト」の補正を加えた大ジャンプで一気に同じ高さまで飛ぶ。そして攻撃用スキルをフル稼働して、一閃。頭から真っ二つになったことで、ボースター・クロウの体力を全て削りきることに成功する。
「目当ての素材は……、ないかぁ……。素材集め続行だな」
まあ一回で集まるわけがないか……。よし、次だ。