出会いとユニーククエスト
ブックマークしてくださった方、本当にありがとうございます。すごく嬉しいです!
第3の街「シートナ」。ブレーサとはまた印象の異なるこの街は海に面する大きな街だ。初心者っぽい見た目のプレイヤーもいれば、熟練のプレイヤーといった見た目のプレイヤーも多くいる。
第3の街までが真のチュートリアル。この街から延びる一本の道を進んだ先に「本大陸」と呼ばれる大きな島がある。本大陸にまで進むとここからは進むエリアを自分で選ぶ必要が出てくる。本格的な攻略の始まりだ。そのためにも、この街でできるだけ準備を整えていきたい。
「やっておきたいことは……」
この街の地図を見ながら、どこで何を準備するのかを決めていく。
「まずはサブの職業からかなぁ」
このゲームはメインとサブ、2つの職業をセットすることができるシステムだ。職業がプレイヤーにもたらす恩恵は様々だ。武器の扱いやすさ、ステータスの補正、職業に合ったスキル習得の補助、職業固有のスキルの習得など色々なものがある。
職業は誰でも簡単に就くことができるものもあれば、厳しい条件を要するものやユニークモンスターの討伐など職業に就くための条件も様々だ。
今回はとりあえず誰でも簡単に就くことができる職業や今就ける職業の中からよさげなものを選んで就こうと考えている。というわけでやってきました、職業に就くための施設。
「さて、なんの職業に就けるかな~」
この施設の使い方は簡単。置いてある水晶に触れるだけだ。水晶に触れることでこれまでに記録をもとに現在そのプレイヤーが就くことのできる職業を表示してくれる。どういう原理なのかはあまり気にしないことにする。こんな簡単に就職できるとは恐ろしい世界だ。
いくつかある水晶から空いているところを見つけて、早速触れる。さて、結果は……。
「うーん、微妙!」
現状俺が就ける職業はどれも初期職業ばかりだった。初期職業じゃないのも一つはあったが……。
「爆弾使いはちょっとなあ……」
ダイナマイトニウムによる爆殺で勝利したといっても過言ではない、岩鉱喰らいの大熊戦。その影響か「爆弾使い」なる職業への道が与えられたわけだが、別に爆弾を好んで使うわけでもないしなあ……。職業も何個も就けるわけではなく限度が存在していている。職業をやめれば枠は元に戻るが、だからといってむやみやたらに就けばいいのかというとそうでもない。
「とりあえず剣士に就いておくかな」
メイン武器は剣になりそう、というかほぼなっているので剣士に就くことにした。初期職業は基本的に条件は軽く、簡単に就くことができる。さっきの施設の水晶に触れてウィンドウを操作するだけであっという間に剣士になれてしまう。さて、サブの職業も取ったので他の用事を済ますべく街を歩く。素材の換金、アイテムの購入などやることはたくさんだ。
さて、やることも終わったし今日は遅いからいったんログアウトして明日から本大陸に進むか。などと思っていたのだが――――――
「おい、お前さん。今ちょっとばかし時間はあるかい」
ログアウトしようとしたタイミングで声を掛けられる。振り返るとそこにいたのはNPCだ。少し小さめな身長に立派な髭。この見た目的に―――
「ドワーフ?」
「ああ、そうだ。お前さんに少し興味があってな。声を掛けさせてもらった」
俺に興味?どういうことだ?
「困惑するのも無理はねえが、ここじゃあちいとばかし話づれえ。悪いが俺の工房まで来てもらえねえか?」
うーむ、ログアウトしようと思ったが、どうもユニーククエストぽい感じがする。よし、ついていこう。
「わかりました。いいですよ」
「ありがてえ。おっと、名乗るのを忘れてたな。俺の名前はウォーグだ。それと敬語は使わなくていいぜ」
「わかりました。……あー、いや、わかった。夜火だ。よろしく」
「よろしくな。そんじゃ早速行くか!」
「行くって、どうやって?」
「安心しろあっという間に着くぞ。【テレポート】」
「ようこそ、俺の工房へ。歓迎するぜ」
本当にあっという間に着いたな。テレポート……ってことは魔法も使えるのかよ、このドワーフ。ざっと工房の中を見回す。アルムさんのものよりもだいぶ、というかかなり広いし見たことのない設備も見える。ってあれは――――――
「銃じゃん……」
銃があったことにも驚いたんだが、銃自体は既に確認されている。ただ発見された銃はどれも現代のものからはかけ離れた昔のものばかりだ。ただここで俺が見つけた銃はどう見ても現代に存在するものと同じデザインをしている。
「なんだ、そんなガラクタが気になるのか?」
「いやいや、ガラクタって……。銃を使ってるプレイヤーからしたら喉から手が出るほどに欲しいもんだぞ」
「そうなのか、お前さんたちも変わってるな。そんな滅んだ人類の武器をわざわざ欲しがるなんて」
滅んだ人類の武器?そういえばそんな設定だったな。
「いや、でもモンスターには通じるだろ?」
「いーや、少なからずそいつじゃあモンスターどもには勝てねえな。火力が低すぎる。スキル使って戦った方が効果的だ」
「そういうものなのか……?まあいいや、それより話したいことがあるんだろ?」
「そうだったな――――――」
「さて、お前さん。どうして人類語を話している?」
は?何を言ってるんだ、この人?
「お前さんたち……異界人は他の世界からこっちに来ている。そういう理由で人類語、ようするにこっちの世界の言葉を話せないはずだ。だが、お前さんたちには翻訳機能が働いている。だから会話に困るなんてことはないんだがな。とはいえだ。翻訳機能のせいでお前さんたちと話す時には多少ラグが発生するはずなんだ。だがお前さんにはそれがない」
えーと。ちょっと待て、一つ心当たりがある。異端者の制約である『あなたはこの世界の言語を知らない』、これのせいか?異端者の恩恵とかに関わる話なら確かに話しにくい内容だ。
「なんでかは俺にもわからない。この世界に来た時から翻訳機能?だかはうまく働いてなかったし、その人類語だっけ?それも知らなかった。だから自力で習得した」
あのよくわかんない言葉、人類語っていうのか……。というか、この言い方からすると俺の翻訳機能だかは戻ってないことになるよな。俺は普通に日本語でしゃべっているつもりだが、あっちからすれば人類語で話しているように聞こえてるってことだよな。運営の性格が終わってたら、あの言葉を覚えたうえで、さらにそれを使って会話しなきゃいけなかった可能性もあったのかよ……。
「なるほどな……」
「満足か?」
「ん?ああ、考えこんじまって悪いな。とりあえず……お前さんにもよくわかってないんだな?」
「ああ。異端者の制約らしいけどな」
「ほう……。その制約とやらのせいでそうなったと。まあいいか。聞きたいことはこれで終わりだ」
「そうか、じゃあ―――」
「待て、提案がある。お礼と言っちゃあなんだが、お前さんを強くしてやる。俺の指定する素材を取ってきてくれ、最高の装備を作ってやる」
ピコン!という音が鳴り、ウィンドウが出現する。
『ユニーククエスト「鍛冶師ウォーグからの依頼」を受注しますか?』
ユニーククエスト……。発生条件は様々、クリア報酬は破格である可能性を秘めたクエスト。異端者の効果かはわからないが、こんな序盤から受けられるのはラッキーだ。『はい』を押す。
「よし、早速内容について話させてもらおうか」
そう言ってウォーグは依頼について話し始めた。