強化プランと新装備
「ダイナマイトニウムは素材にはできません」
「絶対ですか?」
「絶対です」
わかってはいた……。それでも……もしかしたら……!ダイナマイトニウムで爆発する武器が作れるんじゃないのか……!
と思ったけど駄目だったな。これを加工できる人は限られているらしい。基本的には爆薬の代わりとして使うそうだ。駄目なものは仕方がない、さっさと切り替えて本題に移ろう。
「さて、装備の強化プランについてですが……」
そう言ってアルムさんがした提案は次の3つ。
・初心の直剣の強化
・輪廻の錆白を使用した装備の作成
・初心シリーズの防具をベースに今の装備を合成して強化する
まず、初心の直剣の強化については大賛成だ。メインウエポンを強化することに異論はない。素材についてはピュアホワイトクリスタルという鉱石を選択した。疾風の大風狼の素材を使う案もあったが、そうした場合武器の強化の方向性が風系に絞られるらしい。まだ、このゲームにおけるバトルスタイルが明確でない今、あまり強化の方向性を絞りたくないというのが俺の考えだ。
だから今回は色々な進化の可能性があるピュアホワイトクリスタルを選んだ。この素材なら強化の方向性を一つに絞らずに攻撃力と耐久力を上げられるそうだ。
次に輪廻の錆白を使った装備。これは剣にしてもらうことにした。順当にいけば輪廻の錆白の持つ性質をそのまま受け継いだ武器になるそうだ。
最後に防具について。今使っている防具もいいものだが、防御力は出来れば上げておきたい。そこで提案されたのが防具を素材として組み込む方法。今の装備を初心シリーズの防具と組み合わせることで能力を引き継がせることができるのだとか。そうして防御力を上げたうえで、手に入れた鉱石と疾風の大風狼の素材も強化に充てるという提案だ。
これについても反対する理由はない。ただ初心シリーズは若干重かった。どちらかといえば軽戦士寄りのビルドだし、装備は軽量化してもらうことにはした。それ以外は基本お任せだ。
「では、こういった方針で進めさせていただきます。明日中に完成できるか確約はできませんが、全力で作業させていただきます」
「無理はしなくていいですよ。のんびり待ちます」
「そう言っていただけると助かります。装備の貸し出しも行っていますので、再び鉱山に行かれるのでしたらそちらをご利用ください」
そうして装備について話し合った後、その日はログアウトした。明日は休みだし、軽く運動してからログインして鉱山に行こう。今度はモンスターの素材をメインに集めようかな。
次の日、早速ログインして装備を借りてきた。せっかくの機会だからと、色々な武器を借りることにした。双剣に槍、斧にハンマー、その他色々。正直、片手剣が一番使いやすいんだが、使える武器が多ければ多いほどこちらの手数も増える。せっかく傭兵を選んだんだし、このタイミングで片手剣以外の武器を使ってみるのもいいだろう。
さて、ブレーサ鉱山の敵は岩石系のモンスターが多い。岩というと初めて戦ったモンスターであるストーンボアが思い出される。とはいえ、あいつの岩の要素は牙ぐらいだったわけなんだが。それに対してここのモンスターは全身が岩に覆われているようなモンスターばかりだ。ドロップした素材のテキストを見た感じ、ここのモンスターの主食は鉱石とか岩らしく、その影響か体の表面が硬質化しているらしい。ただそのせいで――――――
「倒すのが!めんどくさい!」
ハンマーを振り下ろし体表の岩を砕く。そうして露出した肌に対して、武器を双剣に変えて斬りつける。
とまあ、表面の岩を砕いて相手のガチガチの守りを突破しなきゃダメージを与えにくいのだ。一応、岩がない部分もある。目や関節部なんかは動きに影響が出るからか岩もなく柔らかい。だがいかんせん狙いにくい。相手もじっとやられるのを待っているなんてことはない。だったら表面の岩を砕いて無理やり肌を露出させて、そこを斬った方が手っ取り早い。倒すのは面倒だが―――
「レベル上げにはちょうどいい強さなんだよなあ」
レベル差はちょうど良く、苦戦もしない。ちょうどいい強さのモンスター達なのだ。そんな感じでレベル上げをして装備の完成を待っていた。そうしているうちに意外に早く装備が完成したらしく、その日の夜には装備を受け取ることができた。
「さて、こちらが完成した装備になります」
戦闘を経てレベルも上がり、さらに新しい装備を受け取った今の俺のステータスはこんな感じ。
―――――――――――――――――
PN:夜火
Lv:23
職業【メイン】:傭兵
職業【サブ】:なし
加護:なし
HP:100
MP:20
STM:60
STR:25
VIT:5
AGI:35
INT:10
DEX:55
LUK:10
スキル
・アクロバットステップ
・カウンター
・ダイナマイト・ブースト
・連刃
・ダイナマイト・エンハンス
・テクニカル・アタック
装備
右手:純白の剣(ATK:25)
左手:ラスティ・ホワイト(ATK:30)
頭:なし
胴:ゲイルアーマー(DEF:40)
手:岩石鉄拳(DEF:35)
腰:クリアホワイトコイル(DEF:25)
足:ストームロックグリーヴ(DEF:30)
アクセサリー:なし
アクセサリー:なし
アクセサリー:なし
アクセサリー:なし
アクセサリー:なし
―――――――――――――――――
「いかがですか?」
「最高です」
「ありがとうございます。代金についてもすでに払っていただいたと聞かされていますので、私の仕事はここまでですね」
「いい装備をありがとうございます」
「今後のご予定は?」
「そうですね。そろそろ次の街に向かおうと思っています」
「そうですか。ブレーサ鉱山のヌシも他のモンスターと同様に体が強固な岩や鉱石でおおわれています。どうか、お気をつけて」
強固な岩や鉱石でおおわれたモンスターか……。厄介そうだなぁ……。ハンマーとか打撃武器も用意しておくか?
「それじゃ、俺は行きます。ありがとうございました」
「はい。あなたの旅に祝福があらんことを」
そうしてアルムさんと別れのあいさつを交わし、早速エリアボス討伐に向かう。
新調した装備の調子はすこぶる良好。疾風の大風狼の素材から生まれたゲイルアーマーとストームロックグリーヴの持つAGI補正は便利だ。特にストームロックグリーヴは疾風の大風狼の力を得たことで強化前より加速能力が向上しただけでなく、あいつと同じように風をまとい、さらにその風を解放できるようになっていた。ちなみに岩石鉄拳は拳による攻撃時のダメージを増やしてくれる。
後はこの、ラスティ・ホワイトだ。パッと見は刀身の錆びたなまくら刀だがこれはまだ本領を発揮していない。きっと役立つに立つだろう。
新しく獲得したスキルもいい感じだ。ダイナマイトと名のつくスキルが2つもあるのはダイナマイトニウムの採掘が関係しているのだろうか。ちなみに効果はHPを消費する代わりに自身を強化するというものだ。攻撃スキルはたいして増えてなかった……。やっぱツルハシを振るんじゃ駄目か……。
ボスエリアには特に苦戦することなく到着した。まあ何度も戦っていたこともあり、道中のモンスターに苦戦することはなかった。
「さて、今度はどんなボスかな」
このエリアのボスの名は「岩鉱喰らいの大熊」。アルムさんが話していた通り、全身が岩と鉱石でおおわれた熊だ。