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始まり

皆様に少しでも楽しんでいただければ幸いです。





 

 シャワーを浴びて朝食を作る、これが僕の朝のルーティーンだ。

 

 朝食を作るといっても大したものは作らない。正確に言うと作れないが正しい。

 

 卵とハムを使いフライパンで焼き、お皿に盛る。冷凍ご飯をレンジで温める。この二つの工程で僕の料理は終了した。

 

 僕は醤油派なので、目玉焼きとハムに醤油をかける。醤油は何にかけてもうまくなる神の調味料だと思っている。

 

目玉焼きを一口サイズにして箸で食べる。その間に左手でリモコンを使ってテレビをつける。行儀が悪いが周りに人がいないとやってしまう僕の悪癖だ。

 

 僕はぼんやりとテレビを眺めながら、ラッキーアイテムの幼馴染について思考を巡らせていた。

 

 僕の幼馴染である鷲尾水樹は小柄で活発なスポーツ少女だ。綺麗に切りそろえられた前髪と艶やかな黒髪を高めのポニーテールにして、幼さの残る顔の愛くるしさが際立つ美少女だ。クラスのマスコットみたいな存在でもある。

 

 勉強が得意ではないのが玉にキズだが男女問わず人気がある。

 

 僕とは正反対の人間で、幼馴染でなければ関わることはなかっただろう。

 

 「後でRINEするか~」

 

 考えた末、結局ラッキーアイテムであるという誘惑に負けた。そして、水樹に連絡を取ることを決意してテレビのチャンネルを変えた。

 

 ニュース番組にすると日本各地で暴動が起きているみたいだった。

 

 「日本も物騒になったな。えぇ、ここって結構近いじゃん…」

 

 どうやらここら辺の地域でも暴動が起きているみたいだった。

 

 「なんかあったら怖いな。とりあえず戸締りはいつもよりしっかり確認してから学校に行くか」

 

 そう心に決め目玉焼きを口に運ぶペースを上げる。

 

 チャンネルを変えずにテレビを見ていると、次のニュースでアメリカの人口の約3割が滅んだとのことだった。

 

 僕は目を疑った。さすがにあり得ないことを言っているのでフェイクニュースかミスかと思った。

 

 しかし、ニュースが本当であることを示すかのように、いつも見る女性のニュースキャスターが深刻そうな顔をしていた。

 

 理解が追い付かない、信じたくない僕は火の鳥というSNSアプリで調べようとした。

 

 「さすがにアメリカの人口3割が滅びるなんてないだろ。でも、もし本当だったら…いやいや、そんなわけない」

 

 そのタイミングで奇しくもニュースキャスターがその原因について語ってくれた。

 

 「3日前アメリカで突如発生したウイルス通称UIR-Sによって、現在アメリカの人口のおよそ3割が滅びました。UIR-Sについて現在分かっていることは感染したら約3日で死に至ること、そして…日本人全員感染しているであろうことです。治療方法は日本やアメリカなどの研究者が全力で探してくれています。なので皆さん希望を捨てずに家族や大切な人と待っていてください。彼らなら、きっとやり遂げてくれます。」

 

 「まじかよ…」

 

 テレビでここまで言っているなら疑う余地もないと思う。

 

 これがドッキリならいいが、もし、ドッキリだとしても質が悪すぎる。

 

 「今日は学校行かなくていいか。」

 

 そもそもこんなことになってるから今日は学校ないか、と呟き椅子の背もたれに寄りかかった。

 

 「家族や大切な人か」

 

 ふと水樹の顔が浮かんだ。

 

 「どうせ死ぬなら最後に話したいなぁ…」

 

 真っ先に浮かんできた水樹。もし一生会えないと考えたら錆びたナイフで心臓をえぐられるように胸が痛む。

 

 「なんでもう会えないかもって考えたらこんなに胸が苦しいんだろ。あいつを好きってわけじゃないから…。そうか、自分が思ってるよりあいつは大切な友達だったのか」

 

 実際は分からないがそう思えばそんな気がしてきた。

 

 「あいつに電話しよう」

 

 そう思い机の端に置いてあったスマートフォンを手に取ろうとした。そのとき、玄関のチャイムが鳴った。

 

 まさかと思い、スマホを投げ捨て急いで玄関に向かい扉を開けた。

 

 そこには想像の中と変わらない水樹がいた。

 

 「圭大丈夫っ?」

 

 こんな世界になっても他人を心配する水樹はいつもと変わらない様子だった。

 

 「大丈夫だよ。別に僕に何かあったわけでもないし」

 

 さっきまで会いたがっていたが、実際に会うと安心してしまい返答が雑になってしまう。

 

 「よかった~。ずっと圭のこと心配してたんだよ」

 

 そんな僕を気にも留めず会話を続ける。

 

 「こんな世界になっちゃったね。信じられる、私たちあと3日しか生きられないんだって…」

 

 こんな世界だから水樹相手でも空気が重くなってしまう。

 

 それでも水樹はその事実すらを前向きにとらえていた。

 

 「でも、こんな世界だからこそできることってあると思うんだ。私はこの世界最後の瞬間までできることをやりたい」

 

 どこまでもかっこいい僕の幼馴染はそう言った。

 

 「まぁそうかもしれないけど。例えば何をするの」

 

 「えーっとね、困っている人を助けて役に立つことをする。あ、あと普段いけない場所に行って思い出を作りたい」 

 

 人助けが一番最初に出てくる水樹は相変わらずだった。

 

 「人助けはどっちでもいいけど普段行けない場所は僕も行ってみたいな」

 

 僕は非日常的なアニメが大好きだった。けど、実際にそんな世界になってしまうとは思わなかった。実際になると不便で怖くなってくるし何より絶望を感じる。たが、水樹と一緒なら頑張れる気がした。

 

 「よし、じゃあ今から学校に行こーっ」

 

 「なんで学校?」

 

 いつも行っている場所なのにわざわざ学校に行くことを疑問に思って聞いた。

 

 「いやー学生の内に一回は学校の屋上に入ってみたかったんだよね。なんか、青春って感じするからね」 

 

 僕たちの学校の屋上は基本的に立ち入り禁止だ。何かのイベントとがあれば入れるらしい。

 

 らしいというのは、僕たちの在学中にそういうイベントはなかったからだ。

 

 「確かにね。今日なら入れるだろうし、僕も入ってみたかったんだよね」

 

 そういい学校に向かうことに賛成した。男ならロマンがある学校の屋上を憧れないはずがない。

 

 「それじゃあ決定だね。学校に向かうぞ~」

 

 元気に歩く幼馴染は、世界の終わりを感じさせない足取りで学校へ向かっていた。

 

 太陽は僕たちのプロローグを応援するかのように照らしていた。







読んでいただきありがとうございます。次回も楽しみにしてください。

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