九十八話
季節も進み、新年を迎えた。
城でもそのお祝いで必要最低限の見張りを残し宴会が設けられていた。
普段からよくつくしてくれる使用人に兵士、騎士は身分を問わず酒を片手に騒いでいる。
それを眺めながら母親であるマリアンヌとお茶を飲んでいた。
未成年であるシュバルツはお酒を飲めないし、妊婦であるマリアンヌもお酒を口にするわけにはいかないからだ。
祖父であるオグワールもそれに付き合っておりゆったりとした時間を過ごす。
「お前達がもうきて半年も過ぎたか・・・。時が進むのは早いな」
「義父様にはすっかりよくしてもらって」
「本当ならシュタイナーと過ごしたいだろうに・・・。すまんな」
他の妃達との縁談を決めた一部はオグワールも関わっている。
付き合いやら何やらで断れない類ばかりだった。
だが、その結果としてマリアンヌやシュバルツは命を狙われることになった。
関係にヒビを入れてでもそういった者との縁談は断るべきだったと思っている。
命を守る為とは言え、避難を余儀なくされたシュバルツとマリアンヌに申し訳なかった。
「お爺様。せっかくのお祝いの席なのですから」
「そうじゃの・・・」
シュバルツは聡い子だ。
たまに、大人を相手にしているようなそんな違和感がある。
それでもたまに失敗をして周囲をあわあわさせることもある。
この間も錬金術を学んでいて爆発させたりしていた。
怪我をしていなくてほっとした。
肝心の本人はおかしいなぁとか言っていた。
何でも風邪が流行っているので風邪薬を作っていたらしい。
それで何故爆発するのかは本当に謎だったが・・・。
その後もめげずに風邪薬の開発をしていた。
風邪薬は無事に完成し治験という形で貧民街に配られた。
正直、助かった面もある。
シュバルツの開発した風邪薬はよく効いたのだ。
あのまま風邪が広まれば統治に影響が出ていたのは間違いない。
こっそり食べ物なんかも配っていたようだ。
その食べ物がどこから出てきたのは怖くて聞けなかった。
シュバルツの恩恵の効果らしいというのは間違いないがシュタイナーが口止めをしているようだ。
信用されていないという見方もできるが特殊すぎるケースの場合それぐらい徹底したほうがいいだろう。
なので、シュバルツがどういった恩恵を持っているのかは極少数しか知らない。
母親であるマリアンヌも知らないと言っていた。
シュバルツを敵視している者が知ったら間違いなく強硬な手段で排除に動くだろう。