九十五話
シュバルツ達は普段通りに生活をしていた。
迷宮に潜り夕食を食べてから異空間で修業をする。
そんなある日、父親であるシュタイナーが視察の為に、迷宮都市アリスにやって来るという。
祖父であるオグワールも忙しそうに動き回っている。
使用人達も忙しそうだ。
シュバルツ達は邪魔にならないように牛蛙の出る迷宮へと向かった。
今回も数日をかけて牛蛙を大量に倒して冒険者組合に収めて戻る。
城に戻るとシュバルツは使用人に言われてオグワールの執務室に向かった。
執務室では父親であるシュタイナーとオグワールが難しい顔をして話し合いをしているところだった。
「父様。お爺様。ただいま戻りました」
シュバルツがそう声をかけると父親であるシュタイナーは笑顔で迎えてくれる。
「戻って来たか。ちょっと、背が伸びたんじゃないか?」
父親であるシュタイナーと会うのは半年ぶりだ。
色々仕事が忙しいだろうに父親として気にかけてくれていたようだ。
「父様はお変わりないようですね」
「こっちに来るといい」
そう言って隣の椅子を勧めてくる。
「失礼します」
シュバルツは言われるままに着席した。
「迷宮はどうだ?」
「パーティーメンバーにも恵まれて順調ですよ」
「そのようだな」
シュタイナーは1枚の紙を手に取りにやにやしている。
それは冒険者組合から提出された収支書だった。
「これは・・・」
ぱっとみではわからなかったがよく読めば何かはすぐにわかった。
「よく手に入りましたね」
「出し渋られたがの。公爵家の関係者ということで押し通した」
貴族出身者で冒険者になる者というのは珍しくもない。
たまに、実家がちゃんとやれているのか気にしてその者の実績を確認するということもあるそうだ。
父親であるシュタイナーが今持っている紙もその結果なのだろう。
「少々頑張りすぎているような気もするが・・・。まぁ、いいだろう」
父親であるシュタイナーはすぐそばに置いてあったバックを3つ渡してくる。
「これは?」
「シュバルツの欲しがっていたマジックバックだよ」
「ありがとうございます」
祖父であるオグワールは難しいといっていたはずだがシュタイナーに相談していてくれたらしい。
公爵家と言えども手に入れるのは大変だったはずだ。
アイテムボックスのランクを上げた後ではあるが気遣いが嬉しかった。
「そういうところは年相応だな」
シュタイナーとオグワールは嬉しがるシュバルツを見て笑っていた。