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八十八話

シュバルツはカインの妹を怖がらせないように明るく振舞う。

「こんばんは」

「こんばんは・・・。お客様?」

「この人は・・・」

カインが説明しようとするがそれを遮る。

「いつぐらいから体調が悪いのかな?」

「1月ぐらい前から・・・」

少女はやせ細っている。

改めて見ればカインも痩せている。

まともに食事をとれていないのだろう。

「ちょっと触るね」

カインはそう言って頭を触る。

少女はそう言っている間も咳き込んでいる。

「酷い熱だね。それに咳も酷い」

栄養失調に悪い風邪にあたったのだろう。

これでは治るものも治らない。

「ちょっと調理場を借りるよ」

シュバルツはアイテムボックスから米を取り出しおかゆを作る。

そこに異空間で取れたかぼちゃを細かくして加える。

砂糖と塩で味を調える。

家の中にはぐつぐつと煮込まれる音がしていた。

出来上がりを待ちその間に恩恵ポイントで買える薬を探す。

その中から解熱作用のある薬と喉の炎症を抑えるトローチを購入する。

おかゆもいい感じに出来たので器に入れて少女の元に運ぶ。

「熱いから気をつけて食べて」

「うん・・・」

少女はゆっくりとおかゆを食べる。

シュバルツは調理場に戻り、カインにも渡す。

「俺も・・・?」

「君達、まともな食事をとれていないだろう。それだといつ君も妹さんと同じ症状が出てもおかしくない」

カインは勢いよくおかゆを食べはじめた。

シュバルツは2人が食べ終わるのをゆっくり待つ。

「ありがとう・・・」

「君はこの薬を飲んでね」

少女に風邪薬と水を渡して飲んだのを確認する。

「後は・・・。咳が酷い時はこれを舐めてね」

いつの間にかカインも食べ終わっていたようで言ってくる。

「こんなに色々してもらっといて悪いけど金はないぞ」

「別に気にしなくていいよ。僕がしたくてしたことだから。おかゆはまだあるから温めて食べてね」

シュバルツはそれだけ言ってカインの家を出た。

無言で3人もついてくる。

「シュバルツ様。よろしかったのですか?」

「まぁ・・・。知ってしまったからね。放って置くことができなくて」

シュバルツは偽善でしかないことを理解していた。

このようなケースは探せばいくらでも出てくるだろう。

強大な力を持つクロイツェン公爵家と言えども全てを救うことなどできない。

だが、目の前で苦しんでいる人がいるなら助けてあげたい。

それがシュバルツの考えだった。

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