五十四話
ミミとシズノの準備が整うのを部屋で待っている。
母であるマリアンヌを待たせることになるが2人を放り出すわけにもいかない。
時間潰しにシュバルツは本を読んでいた。
一度読んだ内容ではあるが再度読むことで新たな発見があったりする。
「シュバルツ様。2人の準備が整いました」
「今行くよ」
シュバルツが部屋の外に出るとミミとシズノが立っていた。
汚れが落ちた髪は光沢を放っている。
用意された服もよく似合っている。
改めて2人見れば顔も整っておりどこかの令嬢と言われても違和感がないほどだ。
「2人共。よく似合ってますよ」
「ありがとう・・・」
「それでは食事に行きましょうか」
シュバルツは2人を引き連れ母であるマリアンヌが待っている食堂に向かった。
「お母様。お待たせしてすみません」
「いいのよ。そちらのお嬢さん達がお客様ね?」
「ミミです」
「シズノです」
「まぁまぁ。可愛らしいお嬢さん達ね」
使用人達が食事を運んでくる。
2人を見れば緊張でガチガチだ。
マリアンヌが声をかける。
「ここではマナーを気にする人はいないから安心して」
「そう言われても・・・」
「ふふ。何を隠そう私も元平民だからね」
マリアンヌはそうおどけてみせる。
「平民だったんですか?」
「えぇ。たまたま主人の目に止まってこんな立場になったけどね」
マリアンヌのその言葉に興味を持ったのか2人は料理を食べながら色々な質問をしている。
シュバルツはガールズトークに巻き込まれないように気配を殺していた。
食事も終え、後は寝るだけ。
そう思っていたのだが部屋の外が騒がしい。
扉が開かれミミとシズノが入ってくる。
「シュバルツ様。助けて―」
「どうしたんですか?」
「あんな広い部屋、落ち着かないよ」
「そうそう。寝れる気がしないよ」
「2人は僕にどうしろと?」
そんなことを言われても困ってしまう。
「一緒に寝て」
「えぇ・・・」
見た目は5歳かもしれない。
でも前世を考えれば2人の提案は受け入れられない。
「困りますよ」
「そんなこと言わずにさぁ」
2人はシュバルツの横に潜り込んでくる。
「うわぁ。シュバルツの匂いだぁ」
何やら変態のような言葉が聞こえた気がするが聞かなかったことにする。
「2人共。近いですよ?」
「抱いたら気持ちよさそう」
「あっ。ずるい」
シュバルツは両サイドから抱え込まれてしまった。
シュバルツの体温に安心したのか両隣から寝息が聞こえてくる。
体は反応しないがそれでもこんな状態では寝られるはずもない。
シュバルツはもんもんとして過ごした。