五十二話
「ここって・・・」
「お城・・・」
ミミとシズノは驚いて固まっている。
「ここが僕の家です」
シュバルツは笑いながら家だと主張する。
「シュバルツってお貴族様?」
「改めて僕はシュバルツ・フォン・クロイツェン。クロイツェン公爵家現当主の10男です」
「玉の輿?」
ミミが再起動してそんなことを言っている。
シュバルツは苦笑いして聞かないふりをした。
「まずはお爺様に挨拶に行きましょう。この時間なら執務室かな?」
「恐らくは」
フランは頷き先導するように城に入っていく。
シュバルツもそれに続き慌ててミミとシズノもついてくる。
フランはコンコンと執務室の扉を叩く。
「入れ」
そう声が聞こえ執務室の中に入室する。
「執務中に申し訳ありません」
「いや。区切りのよいところだったから気にするな。見慣れぬ者がおるな」
「お爺様。紹介します。冒険者のミミとシズノです」
ミミとシズノは緊張しているようだが慌てて頭を下げる。
「それでどうして連れてきた?」
「フランと2人というのも悪くはありませんが今後のことを考えてパーティーを組もうと考えております」
「パーティー候補ということじゃな」
「はい」
「信頼はできるのか?」
「この2人は借金があります。お金を払えないところを助けました。裏切ることはないかと」
このまま放置すれば2人は奴隷落ちだ。
それを考えれば裏切る可能性はゼロに近い。
「ふむ。ちなみにその額はいくらぐらいじゃ?」
ミミが答える。
「最初は銀貨1枚でした。利子と言ってだんだん額が上がっていき1人金貨1枚。2人で金貨2枚です」
「ほぅ・・・。どうやら真っ当な金貸しではなさそうじゃな」
「お爺様もそう考えますか」
「そんな輩を野放しにしていたのは儂の責任でもある。1度調査させてみよう。金貸しの名は何という?」
「ゴルゴンです」
「聞かぬ名じゃな。しばらく2人は城に留まるとよい。身の安全を保障しよう」
「お爺様。ありがとうございます」
「部屋を用意させるから今日は休むといい」
シュバルツとミミ、シズノは執務室を出る。
シュバルツは2人をお風呂に案内する。
「まずは体を洗って。入っている間に食事も用意させるから」
「シュバルツ様。ありがとうございます」
そう言ってミミとシズノは抱きついてくる。
シュバルツは2人が落ち着くまでされるがままだった。
3人共、顔が赤くなっていた。