第五話
シュヴァルツはリリーに魔法について学びながらそれ以外の時間はひたすら歩き続けた。
その結果わかったことはポイントを振らなくてもステータスが伸びるということだ。
ステータスカードを確認する。
STR5
AGI3
VIT2
INT10
DEX2
LUK7
耐久力の数値であるVITが1上がっていた。
頑張れば他のステータスも上がるかもしれない。
シュヴァルツが歩いていると騎士達の訓練を視察しているのか父であるシュタイナーと会った。
「シュバルツ。ずっと歩いていると聞いているが恩恵と関係があるのか?」
「はい。歩くことでポイントが溜まり称号やスキルと交換できるようなのです」
「なんと・・・。その話は他の者には言ったか?」
「いいえ」
「恩恵のことは私とお前だけの秘密だ。母であるマリアンヌにも言わないように」
「わかりました」
「よし。もう行っていいぞ」
「失礼します」
シュヴァルツは再び歩きはじめる。
歩きながら考える。
何故、恩恵のことを秘密にするのか。
きっと深い理由があるはずだ。
公爵家と言えば王家に連なる由緒正しい家だ。
この恩恵を上手く使えば当主になることも難しくないかもしれない。
だが、母であるマリアンヌは後ろ盾を持たない平民出身だ。
このことが漏れれば危険があるかもしれない。
それにシュバルツとしても異世界に転生したのだ。
家に縛られず自由に世界を飛び回ってみたい。
そのことを考えれば評価されるのは避けるべきだ。
夕食の時間。
シュヴァルツはうとうとしている。
歩き始めてからいつもこの時間は睡魔に誘われる。
体力のない幼児の体が恨めしい。
だが、食事をきっちり食べて明日に備えるのも大事なことだ。
なんとか食事を食べきり湯浴みをしてベッドに向かう。
ベッドに倒れ込むような形で眠りについた。
翌朝、きっちりと睡眠をとったおかげかスッキリした気持ちで目覚める。
メイドが桶を運んできてくれ顔を洗い着替えて朝食に向かう。
「おはよう。シュバルツ」
「おはようございます。お母さま」
「また倒れるように寝たって聞いたわよ。無理してない?」
「いえ、無理なんて全然。これからのことを考えたら体力をつけないと」
「そう・・・」
恩恵のポイントのこともあるが今の体力では剣の修練が始まったらついていけない。
正直言えば恩恵を貰う前の自分を叱ってやりたい気分だった。
どうしてもっと運動をしなかったのかと・・・。