四十話
シュバルツは準備が整うまで異空間で修業をしながら積極的に城の人達と交流していた。
シュバルツは錬金術師のアーリーの元に通っている。
アルシェ姉様に基礎は教えてもらっていたが新たな師と出会えたことで錬金術の腕が上がっている。
アルシェ姉様は天才型で教えるのはあまりうまくなかったようだ。
それに対してアーリーは多くの弟子を育てた経験から何に躓いているのか瞬時に判断して教えてくれる。
錬金術の素材については城に保管されていた分もあるが異空間の森エリアに行って集めた分もこっそり混ぜている。
アーリーは材料の管理についてはずぼらだったので助かった。
ある朝、祖父であるオグワールに呼び出された。
「待たせたの。騎士の選抜が終わったぞ」
「ありがとうございます」
「紹介しよう。若手の騎士であるフランだ」
そう言って紹介されたのは美しい女性騎士だった。
「フランです。シュバルツ様。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
シュバルツとフランは握手を交わす。
「後はこれが用意しといた武器と防具だ」
剣と槍、それに皮製の防具が置いてあった。
「大切に使わせていただきますね」
「本当はもっと人員を配置してやりたいが我慢してくれ」
「いえ、少数の方が動きやすいですから」
「そうか。そう言ってくれると助かる」
オグワールとしては少数の護衛をつけただけで放置しているという体裁をとりたいのだろう。
「それではシュバルツ様。準備をしましょうか」
「はい」
フランに手伝ってもらい装備を身につける。
「シュバルツ様。よくお似合いですよ」
「ありがとうございます」
「では、早速行きましょうか」
「はい」
フランに連れられてシュバルツは城を後にする。
向かったのは冒険者組合だ。
冒険者組合は周囲の建物より巨大な建物だった。
冒険者組合の中は込み合っている。
フランと2人、列に並ぶ。
フランが美人なせいか視線を感じる。
だが、騎士の正装をしているため、絡まれることもなかった。
しばらく待っていると順番になる。
「お待たせしました。ご用件はなんでしょうか」
「この子の冒険者登録を頼む」
シュバルツを見た受付嬢は一瞬固まる。
「こんな幼い子をですか?」
「本人の希望でもあるし公爵家の都合でもある」
「わかりました・・・。では、こちらに記入してください」
シュバルツはペンを受け取りスラスラと必要事項を埋めていく。
名前はあえて家名を書き込まなかった。
「これでいいですか?」
「はい。確認が終わりました」
そう言って受付嬢は紙を機械に投入する。
しばらく待つと機械からカードが出てくる。
「こちらのカードに血を1滴垂らしてください」
シュバルツが針で指を刺し、血を1滴垂らす。
カードが一瞬発光した。
「はい。これで冒険者登録は完了です」
「ありがとうございました」
「ランクはGランクからとなります。規約などの説明は必要ですか?」
「いえ。大丈夫です」
シュバルツは暇な時間に規約を熟読していた。