三十六話
道中は問題なく迷宮都市アリスについた。
1人になる時間が作れず修行部屋には入れなかったがシュバルツは馬車から見える風景に満足していた。
流れていく景色は美しくついつい見入ってしまったのだ。
馬車は街の中を走っていく。
街は多くの人で賑わっていた。
武器を携帯している人も多くこれぞ異世界という感じだ。
街の外からも目に入っていたがどうやら馬車の向かう先は城のようだった。
御者は身を乗り出して見入っているシュバルツに声をかけてくる。
「はは。あちらが前公爵様のお住まいですよ。魔物が溢れだした際の避難場所にもなっているので立派な物でしょう」
「あそこにお爺様がいるんだね」
「気難しい方ではありますが決して悪いお方ではありません」
馬車が城に入ると先ぶれの騎士が待っていた。
馬車が車止めに停止する。
御者が台を設置してくれたのでシュバルツは飛び降りた。
先ぶれに出ていた騎士は申し訳なさそうにする。
「オグワール様には伝えたのですが勝手に入ってこいとのことです」
「そっか・・・」
シュタイナーからは最初は歓迎されないかもしれないと言われていた。
馬車からマリアンヌがゆっくりと降りてくる。
「ご案内いたします」
先ぶれの騎士に連れられ城内に入る。
装飾は少なく堅牢のイメージがする。
騎士はどんどん奥に進んでいく。
遅れないようにシュバルツとマリアンヌはついて行った。
「こちらです」
重厚な扉を騎士が開け室内に入る。
「2人共よく来たな」
「お爺様。お初目にかかりますシュバルツです」
「お前がそうか。出迎えなくて悪かったな。私が出迎えれば敵を刺激しそうなのでな」
出迎えなかったのはわざとだが本意ではなかったようだ。
「お父様。お久しぶりです」
「うむ。元気そうで何よりだ」
マリアンヌとオグワールは面識があるようだった。
「シュバルツよ。こちらに来なさい」
そう言われシュバルツはオグワールに近づく。
オグワールはシュバルツを持ちあげ高く掲げる。
「こんなに大きくなって・・・」
「もう5歳ですから」
「うむ。そうか・・・。シュタイナーからはシュバルツの自由にさせてやってほしいと言われているが何をしたい?」
「街も色々まわってみたいですし迷宮に挑んでみたいです」
「街をまわるのはよいとして迷宮か・・・。だが、お主はまだ幼い。簡単には許可できんな」
どうやら迷宮に挑むには何とかオグワールを納得させる必要がありそうだった。