百六十一話
迷宮都市アリスでは相変わらず行方不明者が出ている。
専門家である教会の手を借り調査はされるが手掛かりは得られず。
この地の領主であるシュタイナーは事態を重くみたのか騎士団を連れて飛んできた。
「お父様」
「うむ。知らせを聞いて飛んできたがこれはまずいな」
当時の記録は見つけても読めなかった。
実際に対応してシュタイナーの意見が重要になってくる。
「私が、奴を発見した時。悪魔召喚の儀式ははじまっていた。悪魔は顕現しかけていたんだ」
「それでどうしたのですか?」
「術者を殺すことによって、儀式を妨害した。契約者のいなくなった悪魔は術者の死体と共に去って行った」
「ふむ。術者の死体を確保したということは、その悪魔には何か目的があったのですね」
「当時も色々調べたが何もわからなくてな・・・」
「悪魔が去っておらず、術者をリッチに育てたとしたら・・・」
悪魔が自由に動くには色々と制約が多い。
それを回避する為に時間をかけリッチを用意したというのであれば、今後、もっと悪いことが起きるだろう。
シュバルツは気配探知で何やら異物が入り込んだのを感じ取った。
精霊の目で見ればそれは黒い靄のようなものだ。
その靄は父であるシュタイナーを狙っていた。
「父様。危ない」
そう言ってシュバルツはシュタイナーを突き飛ばす。
「ぬ・・・。シュバルツ無事か」
黒い靄はシュバルツにまとわりつき、精神を浸食するかのように入り込んでくる。
意識を手放してはならない。
咄嗟にそう思ったシュバルツは自身の足に剣を突き刺した。
「ぐ・・・」
天から1条の光が降ってくる。
それと同時にクロの声がした。
「やれやれにゃ。話を聞いて仕込んで置いて正解だったにゃ」
「クロ・・・?」
光はシュバルツの体を浄化する。
だが、負荷がかかったのか、シュバルツはそこで意識を手放した。
シュタイナーはシュバルツが意識を失った後、高位の教会関係者を呼びだした。
「どうなのだ?」
「体には異常はありません」
「そうか・・・。いつ目覚める?」
「それは何とも言えませぬ」
「シュバルツに何かあれば私は・・・」
「貴方・・・。シュバルツは強い子です。今はこの子を信じましょう」
「そうだな・・・」
シュバルツは高熱に侵され、マリアンヌは付きっきりで看病する。
シュバルツが目を覚ましたのは倒れてから1週間後だった。
「よかった。目を覚ましたのね」
シュバルツは説明を受け、どういう状況だったのか理解する。
「ご心配をおかけしました」
「いいのよ。貴方が無事であれば」
念の為とシュバルツは3日ほどそのまま休むことになった。