百六十話
迷宮都市アリスで謎の人の失踪が起きていた。
最初は衛兵が対応していたが、被害は収まらない。
冒険者組合にも捜索の依頼が出されたが調査は進んでいない。
シュバルツ達も調査に加わり、失踪者の手掛かりを求めて動き回っていた。
シュバルツは失踪者が最後にいたと思われる場所を精霊の目でみる。
僅かな魔力の残滓を確認した。
「ふむ・・・」
「シュバルツ様。何か見つけたのですか?」
「魔力の残滓がありますね。でも、それがわかってもこれが何を指しているのかは・・・」
「他の場所もまわってみましょう」
他の被害者が出た場所もまわるが、全てに魔力の残滓が確認された。
「現時点で言えることは、何だかの魔法が行使されたということです」
「目的が見えませんね。一度、冒険者組合に戻りますか?」
「そうですね。情報の共有は必要でしょう」
シュバルツ達は冒険者組合に戻って報告をする。
年配の冒険者の1人がぽつっと言葉を漏らす。
「あの時と同じだ・・・」
全員の視線がその冒険者に集まる。
「あの時?」
「あぁ・・・。当時、Aランク冒険者だったある魔法使いさ」
詳しく話を聞けば、そのAランク冒険者は危険思想の持ち主だった。
空間魔法を操り、人を攫う。
攫った人を使って悪魔を呼びだそうと怪しげな儀式を繰り返していたという。
最終的には当時、修行の為に訪れていた、現公爵であるシュタイナーによって討伐された。
「なるほど・・・。状況が似ているなら調べてみる価値はありますね」
「どうしますか?」
「一度、城に戻りましょう。お爺様に相談しないと・・・。父様にも手紙を書きます」
シュバルツの報告を聞いて、すぐにオグワールは当時のことを思い出した。
使用人に当時の記録を持ってくるように指示を出す。
それと同時に早馬を手配してシュタイナーへの手紙を託す。
使用人達は当時の記録を探し出し、持ってきてくれた。
だが、肝心な記録の部分は滲んでいて読むことができなかった。
その部分だけ、滲むなど通常では考えられない。
何だかの力が働いているとみるべきだ。
シュバルツは修行部屋に向かって、クロに相談してみた。
事情を聞いた、クロは一つの可能性は示した。
「呪いかもしれにゃいにゃ。悪魔を召喚しようとしてたにゃらそっち方面の力があっても不思議じゃにゃいのにゃ」
それを聞いて、シュバルツは恩恵ポイントを消費して呪術関係の本を読み漁った。
その結果わかったのは怨念を抱いた者のアンデッド化。
不死者の迷宮で探しても見つからなかったリッチの存在が頭をよぎった。