百五十三話
襲撃を受けたことでしばらく、迷宮に潜るのを自粛することになった。
時間の出来た、シュバルツ達は基礎を見直そうという話になり、素振りをしていた。
シュバルツは、仮想の相手を頭に思い描き、剣を振るう。
それはまるで舞を舞っているかのようだった。
理想とする剣の動きには、到達できていない。
シュバルツが休んでいるとまだ少年と思われる騎士が話しかけてくる。
「あのシュバルツ様。僕と模擬戦してくれませんか?」
「構いませんよ」
シュバルツは少年騎士と向かい合う。
少年騎士は正面から斬りかかってくる。
シュバルツは冷静にその剣をかわす。
騎士であるだけあって、基礎はきっちりしている。
シュバルツは反撃をしようとするが、少年騎士は勢いのまま、体当たりをしてくる。
かわせないタイミングであったため、シュバルツは自分から後ろに飛び衝撃を和らげる。
少年騎士は距離を詰めてくる。
シュバルツは牽制の為に、剣で突きを放つ。
少年騎士は半身でその突きをかわす。
無理に避けた為、少年騎士の体勢が崩れる。
シュバルツは素早く剣を引き戻し少年騎士の胴をとった。
「はぁ・・・。参りました」
「ありがとうございました」
シュバルツと少年騎士は揃って水分補給をする。
「君の名前は?」
「カールと申します」
「見ない顔だけど、最近、騎士になったのかな?」
「今年、騎士になりました」
「そうなんだ・・・。その歳で騎士なんて大変だったんじゃない?」
「私は剣しか才能がなかったんです。冒険者の道も考えましたが、騎士になる道を選びました」
「期待しているよ」
「はい。頑張ります」
カールと話していると他の騎士が話しかけてくる。
「シュバルツ様。お話し中、申し訳ありません」
「どうしたの?」
「我々とも模擬戦をしてもらえないでしょうか?」
「いいですよ」
シュバルツはその申し出を快く引き受けた。
シュバルツは夕方まで模擬戦を繰り返した。
人型の魔物もよく相手にするが鍛えられた騎士団員達はそれぞれ工夫して挑んできたので、対人戦のいい訓練になった。
他のパーティーメンバーも模擬戦を申し込まれていたようで、それぞれ、収穫があったようだ。
この日も夕食後、シュバルツの部屋に集まり異空間に向かった。
迷宮に潜れなくなった分、異空間での狩りを頑張ろうという話になっていた。
シュバルツは模擬戦で得られた経験をもとに、リザードマン相手に、色々試すのであった。