百四十二話
「そう難しいことじゃないさ。所属する集団を明確にして危険を避けるだけだ。お前が頭ならこの街でちょっかいを出す奴はそうそういないさ」
シュバルツ達はこの街の冒険者の稼ぎ頭だ。
実力も十分ある上に、背後には公爵家も控えている。
何か問題が起きたとしても十分に対応できる。
「シュバルツ様。一度、関わったのです。このまま見捨てるのは・・・」
他のパーティーメンバーも頷いている。
「わかりました。クランを作ってみましょう」
「そう言ってくれると助かるぜ」
「差し当ってすることは?」
「メンバー全員の登録と拠点の登録だな」
「メンバーの登録は戻ってくるをの待つとして拠点ですか・・・」
「拠点についてはいくつか候補をあげておいた。金を払ってくれればすぐに使える」
「それはありがたいですね」
シュバルツ達は候補地を実際にまわってみることにした。
郊外の広い場所から少し狭いが冒険者組合から近い所まで様々だ。
治安や便利性を考えて冒険者組合から近い場所を2か所借り受けた。
2か所にした理由は男女で別れる為だ。
子供と言えど、同じ屋根の下にして問題を起こされても困る。
そんなわけでクランハウスの手続きを終え、集められている子供達の元に向かった。
「お久しぶりです」
「皆、元気そうでよかったよ」
子供達の数を数えてみると結構な人数がいる。
「シュバルツも元気そうだな」
そう言って話しかけてきたのは子供達のまとめ役であったザックだった。
「それにしても、思いきったことをしましたね」
迷宮に潜るにはまだ実力不足だが、スライムや小物の魔物なんかを倒せばやっていけるだけの実力は身につけたはずだ。
「出稼ぎなんて偉そうなことを言っているが口減らしの意味もあるんだ」
話を聞けば、動ける大人達の中には冒険者登録をせず野良の魔物を狩って生活している人々がそれなりにいたらしい。
狩り場が競合し全員が十分な成果を出すのが難しかった。
そこで、迷宮都市なら何か仕事があるはずだとこちらにやってきたとのことだ。
「事情はわかりました。とりあえずクランメンバーの登録をすませてしまいましょう」
控えていた職員が全員に名前を聞き記録していく。
最後にシュバルツがクラン登録料を支払い無事、クランとして認可された。
「いつまでもここにいるわけにはいきませんね」
そう言ってシュバルツ達は確保したクランハウスに移動を開始した。
女子組をパーティーメンバーに任せ、男子組を連れてシュバルツは確保したクランハウスに案内した。