百四十話
子供達の指導をはじめて1週間が経った。
その間、体力作りと基礎である素振りを繰り返させていた。
今日からは魔法の適正を確かめ、魔法の練習もさせる。
魔法の練習はシュバルツが担当することになっており、料理は事前に作ってアイテムボックスに保管していた。
シュバルツは丁寧に魔法の使い方をレクチャーする。
手本としてそれぞれの魔法を複雑な形で見せたのだが、それを見た子供達は夢中になって魔法の練習に励んでいた。
途中、忙しいだろうにサイファーが様子を見に来た。
子供達が魔法の練習をしている所を見て、驚いていた。
冒険者としてやっていくなら魔法がなくてもなんとかなる。
だが、魔法が使えれば選択肢が増える。
選択肢が増えれば生存率も上がってくる。
その為に、シュバルツは妥協するつもりはなかった。
修練開始から1か月が経ち、頼んでいた防具が届いた。
防具を身につけさせ、模擬戦を開始する。
パーティーメンバーと手分けして指導する。
まだまだ、粗削りではあるがある程度、形になってきた。
もうしばらく様子を見て修練は卒業させてもいいだろう。
後は実地で覚えて行ってもらうしかない。
サイファーが頑張ってくれたのか迷宮で獲得した物資は全て換金された。
迷宮都市アリスを離れて3か月近く経つ。
手紙でやり取りはしていたが、祖父であるオグワールや母であるマリアンヌには心配をかけてしまった。
今後、冒険者として活動していくとこういったことも増えていくだろう。
シュバルツ達は最後に子供達を何組かにわけて、実地訓練を見届ける。
十分にやっていけると確認して、旧マールタル王国を後にした。
道中、問題になるようなことはなく迷宮都市アリスに到着して真っ直ぐ城に帰る。
使用人達はシュバルツ達が帰ってきたのを確認してほっとしたような顔をしていた。
無事であることは伝えていたが心配してくれていたようだ。
シュバルツ達はそのまま、祖父であるオグワールの元を訪ねた。
「お爺様。今、戻りました」
「うむ。無事でなによりじゃ」
「やはり、我が家は落ち着きますね」
「今日はご馳走を用意させよう」
「ありがとうございます」
シュバルツ達はしばらく雑談してから食堂に移動して食事を堪能した。
久々に見たリリアーヌは相変わらず天使のように可愛かったが少し成長していた。
赤子の成長は早いのだなと実感した。
とりあえず、忘れられてはいなかったようで安心したのだった。