百三十九話
「いやぁ。手伝ってもらって悪かったね」
「いえ・・・。サイファーも大変ですね」
毎日あの量の書類と格闘していたら時間などいくらあっても足りないだろう。
「それで?何か話があったんじゃないかな?」
「あぁ・・・。忘れてました。戦災孤児の件です」
「戦災孤児か・・・。頭の痛い問題だね。出来ることはしているけれど・・・」
書類の整理を手伝っていてわかったが、食料状況は火の車だ。
旧、王都であるこの街はこれでも優遇されているのだとわかる。
「考えていることがあるんですけどいいですか?」
「何かいい解決策があるのか?」
「現状、冒険者も足りていない状況です。見込みのある子を冒険者として育成してみるのはどうですか?」
「冒険者にか・・・。だが、どこもかしこも人手が足りていないんだ。指導者を用意できないぞ?」
「そこは、僕らに任せてください」
サイファーがお金の準備を終えるまでどっちみち、暇なのだ。
ならば、見込みのありそうな子供に指導するのも悪くないだろう。
「だが、武器や防具をどうする?」
「武器はこちらで用意します。防具に関しては素材を渡すので職人に依頼を出します」
「わかった。手配しよう」
サイファーの許可も得たので、シュバルツ達は早速、準備にとりかかった。
異空間で大量の鉱石を確保して、剣と槍をシュバルツが準備する。
最初は防具はいらないので剣と槍が確保できたところで休息の為に、現実世界に戻った。
翌日、指定された練兵場に向かうと多くの子供達が集まっていた。
まずは採寸を図り、それを記録して素材であるリザードマンの皮と共に手伝いの騎士に託した。
これで、訓練を終えた頃には防具の準備もできるだろう。
まずは、体力がどれぐらいあるのか確かめる為に、子供達には走り込みをしてもらう。
予想はできたことだが、体力のない子が続出した。
これは満足に食べられていないことも関係があるだろう。
シュバルツは監督をパーティーメンバーに任せて料理を開始した。
食事をしっかりとり体を作るのも訓練の一環である。
昼頃まで、子供達を走らせ食事を与える。
どの子もがっつくように食べていた。
食後、1時間は座学の時間だ。
冒険者として押さえておきたいポイントを説明する。
それが終われば素振りの時間である。
とりあえず、剣と槍を振ってもらい適性のある方を勧めて基礎訓練を固める。
ここでも、シュバルツはパーティーメンバーに監督を任せて料理を準備する。
夕方となり、食事を食べ終えたら本日の修練は終了である。
子供達は疲れた様子ではあるがしっかり歩けている。
これなら、このまま続けても大丈夫だろう。