百三十八話
シュバルツ達が食事を終え、店を出ると痩せた子供達と遭遇した。
子供達はそれぞれ掃除道具と思われる物を持っている。
「彼等は・・・?」
「あぁ・・・。奉仕活動の子供達ですね」
「奉仕活動?」
「先の戦争で父親が亡くした子供達が多いんですよ。そうすると生活に支障が出まして・・・。そういった子供達向けに簡単な仕事をしてもらっています」
「簡単な仕事ですか?」
「街の清掃活動とかですね。ちなみに発案者は王太子殿下です」
マルセイユ王国では戦死者の家族には手厚い手当が出る。
だが、敗戦国であるマールタル王国の家庭にまで配慮するのは難しかったのだろう。
そんなことをしていてはいくら資金があっても足りない。
「我々も何とかしてあげたいところですが、最低限の食料を配給するのやっとの状況です」
「シュバルツ様。何とかしてあげられないでしょうか?」
「一時的な施しは出来るけど・・・」
一度、贅沢を覚えてしまえば我慢出来ていることが出来なくなる。
それを考えると容易に手を出すのはまずいかもしれない。
「何かするにしても王太子殿下と相談してからかな?」
シュバルツのその発言に護衛をしている騎士達は安堵していた。
シュバルツ達はサイファーに会うために城への帰路についた。
途中、清掃活動をしている子供達を何組も見かけた。
町全体で考えれば想像以上に、戦災孤児の数は多いのかもしれない。
護衛の騎士にそのまま案内された室内に足を踏み入れると大量の紙に囲まれたサイファーがいた。
「やぁ・・・。どうしたんだい?」
「仕事中すみません。よかったらこれをどうぞ」
シュバルツは思わず栄養ドリンクを渡してしまった。
「これは?」
「疲れの取れる薬です」
「それはありがたい」
サイファーはまよわず栄養ドリンクを飲み干した。
「おぉ。これは凄い」
「よかったらもう何本かどうぞ」
シュバルツが追加で栄養ドリンクを渡すとサイファーは嬉しそうな顔をしていた。
「ありがとう。いくら、仕事をしても仕事が減らなくてね・・・」
「よかったら手伝いますけど?」
「書類の整理だけでもしてくれると助かる」
シュバルツ達は手分けして書類の整理をはじめた。
読んでみてわかったが、重要な物とそうでない物が混ざっている状況だった。
最初はサイファーに聞いていたが要領を掴んだシュバルツ達はテキパキと書類をわけていった。
そのおかげで日が暮れる頃には書類の山はマシになっていた。