百十九話
シュバルツ達は問題なく、迷宮都市アリスに戻ってきた。
祖父オグワールからの指示であったが素材は好きにしてよいとのことだったので冒険者組合によって換金を行った。
解体所の職員は倒し方が綺麗だと褒めてくれた。
リザードマンは固い外皮に覆われている。
通常の冒険者だと接近戦になり素材が無駄になることが多いらしい。
受付で料金を受け取り城へと戻った。
シュバルツ達は報告をする為に、オグワールの執務室を訪ねた。
「お爺様。戻りました」
「ほっほ。早かったの。もう数日はかかると思ったが」
「シュバルツ様の魔法が役に立ちました」
フランがそう報告する。
「皆の頑張りのおかげですよ」
シュバルツはそうフォローを入れた。
「さて、シュタイナーの奴が首を長くして待っておるぞ」
「父様はどちらに?」
「リリアーヌと遊んでおるよ」
父であるシュタイナーも末娘が可愛いいらしい。
「それでは失礼しますね」
シュバルツ達は母であるマリアンヌの部屋を目指した。
コンコンと扉を叩いてから部屋に入る。
「失礼します」
室内に入室すると玩具を片手にリリアーヌの相手をしているシュタイナーの姿があった。
「おぉ。帰ってきたか」
父親の威厳を持とうとしたのだろうが、リリアーヌが泣き出したのでシュタイナーは慌てて顔を笑顔に戻していた。
見かねたマリアンヌがリリアーヌを抱っこする。
シュタイナーは少し残念そうにしながら椅子に移動した。
シュバルツ達も椅子に座る。
「すまんな。戦争のせいとはいえ、フォローさせるような形になって」
「いえ。仕事ですから」
本来であれば冒険者の手で間に合わなければ正規の軍隊であるシュタイナーの配下が動くことになる。
だが、マールタル王国の一件で正規の兵が足りていなかった。
その為、昇格したばかりのシュバルツ達にも声がかかったわけだ。
「それと、これを渡しておく」
シュタイナーは1つのメダルを渡してくる。
メダルに描かれているのは馬に鷹そして右側にだけ剣が描かれていた。
「これは・・・?」
「王太子殿下の配下であるメダルだ」
ちなみに国王の配下である場合は左側に剣があるそうだ。
クロイツェン公爵家のメダルには鷹が描かれている。
マルセイユ王国では鷹に馬は王家の紋章であり、その一部を許可されているということはそれだけ結束の高さを知らしめる意味がある。
「王太子殿下もその場で渡してくれればいいのに」
「私がこちらに来る理由付けをしてくれたのだろう」
本来であればシュタイナーは真っ直ぐ公都に戻らなければならない。
不在時の仕事は山のようになっているだろう。
「王太子殿下も食えない人ですね」
「仮にも王族だからな・・・」
シュバルツは親しみやすそうなサイファーの顔を思い浮かべ苦笑いを浮かべた。