百十八話
シュバルツ達は朝食を食べてから湿地帯に再び訪れた。
前日にしっかり魔物を駆除したので湿地帯を半分ぐらい進んだが魔物との接敵はない。
だが、シュバルツは油断せずに気配探知で魔物を索敵いていた。
油断して怪我などしてはつまらない。
フランは油断していないがミミとシズノは少々、気が抜けている。
シュバルツの気配探知に魔物の反応がある。
「そろそろ、接敵しますよ」
シュバルツはそう告げる。
ミミとシズノも武器を構える。
作戦としては昨日と同じでシズノとフランが時間を稼いでいる間にシュバルツが魔法で倒す。
ミミはシュバルツと前衛組との中間でサポートすることになっている。
現れたのは3匹のリザードマンだった。
シュバルツは距離が空いている間にマジックアローで攻撃をしかける。
シュバルツの放ったマジックアローは狙い違わず3匹のリザードマンの頭部を吹き飛ばした。
リザードマンの死体を回収しその後も湿地帯を行く。
結局、危機に陥ることなどなく湿地帯の魔物の掃討は完了した。
時間的に街の閉門に間に合いそうになくもう1泊、村で泊めてもらうことになった。
「お若いのに大した腕ですな。他の冒険者の方は何日もかかって討伐するというのにもう終わったとは・・・」
「魔法が思ったより有効だったので」
「魔法ですか。優秀なのですね」
冒険者で魔法を扱える者というのは珍しい。
誰しも何かしらの魔法適性を持っているが指導してくれる者などほとんどいない。
いたとしても高額の授業料を取られる。
その日暮らしの冒険者では授業料を支払う余裕などない。
そんなわけで、冒険者で魔法を使える者というのは貴重な存在なのだ。
「ちょっと、庭先をお借りしますね」
「えぇ。どうぞ」
シュバルツは損傷の激しかったリザードマンを取り出す。
倒し方をミスったので素材としての価値が低い。
シュバルツはナイフを手にリザードマンを解体していった。
村の子供達だろうか。
遠巻きにシュバルツがリザードマンを解体するところを見ている。
シュバルツは子供達に手招きする。
子供達はすぐによってきた。
シュバルツは解体を終えたリザードマンの肉を平等に行き渡るようにカットして子供達に渡す。
「いいの?」
「うん。泊めてもらったお礼だからね」
「ありがとう」
子供達はリザードマンの肉を大事そうに抱えながら去って行った。
シュバルツは村長に渡す分のリザードマンの肉を持って家の中に戻る。
「お礼なら十分頂きましたのに」
「いえ、気持ちですので」
家畜は育てているだろうが肉は貴重品だ。
価値の低い物であったし、村人がそれで喜んでくれるなら安い物である。