百十四話
食事を終え、お茶を飲む。
今日の予定をどうするか話し合う。
牛蛙の迷宮でもいいのだが、Cランクの冒険者になったことで行ける迷宮の選択肢が増えている。
そこに慌てた様子の使用人がやってきた。
「シュバルツ様。お客様です」
「お客様ですか?」
「はい。冒険者組合の方がお見えです」
「わかりました」
シュバルツは3人を連れて応接室に向かった。
そこで待っていたのは何度か受付でお世話になっている女性だった。
「朝早くから申し訳ありません」
「いえ、何かありましたか?」
「こちらを」
そう言って受付嬢は書面を渡してくる。
そこに書かれていたのは冒険者組合の長であるマーセルからの指名依頼だった。
迷宮都市アリスからそう離れていない村からの支援要請だ。
どうやらその村を猪の魔物であるイーブルボアの群れが襲っているらしい。
「受けていただけますか?」
「えぇ。構いませんけどどうして僕達に?」
「他の高ランク冒険者が出払っていまして」
「なるほど・・・。僕は受けてもいいと思うけどどうかな?」
「私もいいよ」
「えぇ。今の時期は種植えの時期ですから村の人達は困っているのでしょう」
「シュバルツ様が決めたのなら私はついて行くだけです」
「この依頼、引き受けさせていただきます」
「よろしくお願いします」
シュバルツ達は準備をして迷宮都市アリスを発った。
半日ほどで問題の村に辿り着いた。
村人達は忙しそうに柵の修理をしていた。
そのうちの1人に話しかけ状況を聞く。
「イーブルボアが暴れるのは毎年のことなんだが、今年は数が多い。俺達も抵抗したんだが怪我人が出たんだ」
「なるほど・・・。怪我人がいるなら僕が見ましょう」
村人は怪我人がいるという家に案内してくれた。
怪我人は3人いた。
突進を受けたのか怪我の状態は結構酷い。
シュバルツは怪我の状態を確認して回復魔法で怪我を治す。
回復魔法を使う機会があまりないので心配したが怪我人は動ける程度には回復した。
「ありがとうございます」
「怪我は治しましたが出血状況を考えるとしばらくは安静にしていてください」
怪我は治せても失った血は戻ってこない。
栄養をしっかりとり安静にしているのが一番だ。
「さて、僕らはイーブルボアの討伐に向かいましょうか」
「そうですね」
シュバルツ達はイーブルボアがいるという森に入っていった。
イーブルボアが通ったと思われる場所では木が折れている。
これなら早々にイーブルボアを見つけることが出来るだろう。