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九 それから ライトサイド

 神界にはただ真っ白な空間が広がっている。その真っ白の空間に大きな建物が一つだけポツンと建っている。その建物には神様7人の部屋を始め、ライトが普段書いている史書を保管する場所等、神様が仕事をするうえでこの建物一つあれば十分なのだ。

 「何だか神界に戻ってくることが久しぶりに感じるね。」

 ライトは神界に戻ってきた感想を言う。

 「それだけライト様が人間界で濃い生活を送ってきたからだと思いますよ。」

 「そうだね。人間界での生活は毎日楽しかったからね。」

 ライトはフレアの言葉に納得する。ライトは神界では毎日史書の作成をするだけだったからだ。

 建物の中に入り、自分の部屋に行こうとするライトをフレアは呼び止める。

 「待ってください。ライト様が人間界にいて、史書の作成が現在止まっています。ライト様には史書の作成にあたってもらう必要があります。」

 「そうだよね。」

 ライトは自分の部屋に行くことを止め、史書を作成する部屋に向かった。その部屋は学校で例えると図書室のようなもので、本の代わりにライトが今までに書いた史書が年代順に置いてある。

 「こちらが人間界での報告書で、こちらが魔界での報告書です。」

 フレアは二つの束をライトに渡す。

 報告書とは、人間界と魔界の二つの世界に神様たちを派遣して、その神様たちがその日起きた出来事をまとめたものである。一日ごとに報告書が送られてくるので、ライトは数週間人間界にいた分だけある。

 「早速始めようかな。」

 ライトは人間界の報告書を手に取りその内容を熟読する。そして、その中から史書に記載するに値する内容を吟味する。吟味して選ばれた内容を史書に記載するといった流れだ。一日の報告書を処理するのに人間界の方は3時間程度、魔界の方は2時間程度である。人間界と魔界の報告書の処理に差がある理由は、人間界の方が魔界に比べて人口や国数が多いからだ。人口や国数が多い分情報量が多くなることは必然だ。


 「終わったー。」

 ライトは溜まっていた史書を4日で終わらせることができた。ライトは立ち上がり身体を伸ばす。そして身体をほぐしたライトは、完成した史書を本棚に入れた。

 「さて、これからどうしようか。」

 ライトは史書を書き終えてやることが無くなった。

 「いつもみたいに昔に書いた史書を読めばいいのでは。」

 フレアはライトが史書を書いている間、ずっとライトの後方に控えているのだ。

 「人間界の娯楽に触れた私が、今更何回読んだかも覚えてないくらい読んだ史書を読んでも面白くないよ。ゲームしたいな。」

 ライトは今までしていた生活がばかばかしくい思えていたのだ。

 「文句を言ってもゲームは神界にありませんよ。」

 「分かってるわよ。もう神界は窮屈なんだから。」

 ライトは文句を言いつつも、本棚に並んでいる史書の中から適当に数冊取り席につく。そして史書を読み始めた。

 「やっぱり面白くない。」

 ライトは2時間ほど史書を読んでいたが、飽きたのか史書を閉じて文句を言った。

 「確かにそうかもしれませんが、それ以外にやることはありませんよ。」

 「だいたいフレアもずっと私の後ろにいるだけで退屈でしょ。あんなにゲーム上手なんだから、ゲームをやることが楽しくてしょうがないと思うんだけど。」

 ライトは自分の後ろでずっと待機しているフレアの様子を改めて見て疑問に思う。

 「私はライト様の従者であることが仕事ですので。特に退屈とかは感じません。」

 フレアは自分の思ったことを言う。

 「そっそうなんだ。」

 ライトはどうツッコんでいいか分からず、適当な返事をする。その後、ライトはこの状況をどうするべきか悩んだ。

 「そうだ。シンラ様に相談すればいいのよ。」

 ライトは妙案を思いついた。

 「許可してくれるでしょうか。」

 「大丈夫。多分何とかなるよ。」

 ライトは立ち上がり、シンラの部屋に向かう。フレアもその後に続く。

 シンラの部屋はライトたちのいる建物の最上階にある。ただ、最上階といってもこの建物は7階建てである。縦に大きい建物と言うよりは横に大きい建物なのである。それが理由で、この建物にはエレベーターはない。人間界の法律ではエレベーターの設置義務に該当する建物ではあるが、ここは神界なので人間界の法律を適用する必要はない。

 コンコンコン

 シンラの部屋の前に着いたライトは扉をノックする。

 「誰かしら。」

 扉の奥から声が聞こえる。

 「ライトです。シンラ様に相談したいことがありまして。」

 ライトは自分の要件を伝える。

 「ライトが相談なんて珍しい。いいでしょう入りなさい。」

 「失礼します。」

 ライトとフレアは部屋に入る。

 「とりあえず座りなさい。」

 シンラは部屋にある席を指さす。ライトとフレアはシンラの指示通り席に座る。

 「それで、相談事とは何かしら?」

 「私の史書作成の仕事はそんなに時間がかかりません。だから、人間界で生活しながらでも仕事を全うできると思います。」 

 ライトは自分の要望を伝える。ライトがゲームをしたいと要望せずに、人間界で生活したいと要望したのは本心であるからだ。ライトとしては一人でゲームをするだけでも楽しいが、やはり協力プレイや対戦プレイをしたいので、人間界で涼平とフレアとまたできたらいいなと考えている。

 「今まではずっと史書を読んでるだけで良かったのに。人間界で生活してあなたは変わったのね。人間界で生活して何をしたいのかしら。」

 シンラはライトの心境の変化に、顔には出さないが喜んでいる。

 「人間界は娯楽にあふれています。アニメ・漫画・ゲームどれも楽しいものでした。」

 ライトは人間界で自分が感じた魅力を伝える。

 「そうですか。いいでしょう。しかし、人間界に行くことは認めません。神界に娯楽を用意しましょう。それいいわね。」

 シンラの返答はライトが望む百パーセントではなかった。

 「それは・・・。」

 ライトは言葉に詰まる。ライトはこのままシンラの条件を呑むか、人間界で生活したいと自分の要望を押し通すか迷っている。もし、自分の要望を押し通して、シンラ様の機嫌を損ねてしまって、話自体をなかったことにされることが一番困る。

 「あら不満かしら。ライトの話を聞いていると娯楽があればいいみたいだったけど、それとも他に人間界で生活したい理由でもあるのかしら。」

 シンラはライトの本音を引き出そうとする。

 「それは・・・。」

 ライトは再び考える。涼平とのことを正直に話すかそれとも、別の理由を話すか。

 (そうだ。学校に行きたいことにすればいいんだ。それならシンラ様も認めてくれるはずよ。)

 ライトは人間界に行きたいそれっぽい理由を思いついた。

 「ライト。私に嘘やごまかしは通用しないので、それを考えて回答しなさい。」

 シンラはライトの考えを見透かしたような発言をする。

 「私が人間界で生活した理由は、私をかくまってくれた涼平という男の子とゲームしたいからです。」

 ライトは包み隠さず本心を話した。

 「まあ、今はそれでいいでしょう。ところで、ライトは人間界で生活するとして、どこで生活しようと考えているのかしら。」

 「それはさっき言った涼平の家です。」

 「そうでしょうね。でも、その涼平さんはライトとの生活を望んでいるのかしら。」

 「えーっと。」

 ライトは考える。涼平は自分と一緒に生活していてよかったのだろうか。涼平の視点で考えると、神様である面倒な女に付きまとわれ、悪魔と戦わされたのだ。普通に考えると邪魔な存在だとライトは認識した。

 「この質問はあなたが考えても正解は出ないでしょう。なので、涼平さんの口からライトに会いたいととれる発言をした場合にのみ、人間界での生活を認めましょう。」

 「・・・分かりました。」

 ライトはシンラの条件を受け入れる。

 「それでは話は終わりです。下がりなさい。」

 「失礼します。」

 ライトは部屋を出る。

 「フレア?どうしたの?」

 シンラの部屋を出ないフレアにライトは疑問に思う。

 「私もシンラ様にお話しがありますので、ライト様は先に行っていてください。」 

 「そう?分かった。」

 ライトはフレアを置いて歩いて行った。

 「それでフレアは何のようかしら。」

 「どこまでがシンラ様の計画の内なのか疑問に思いまして。」

 「どこまでとは?抽象的な発言ではなく、具体的な発言にしてくれるかしら。」

 「ライト様が人間界で生活したいとシンラ様に直談判したことです。」

 「それは私の計画の中に入っているわ。それが何か問題でもあるのかしら?」

 シンラの鋭い眼光がフレアに突き刺さる。

 「いえ。しかし、これだけは言っておきます。私はライト様の従者です。何があってもライト様の味方です。もし、シンラ様がライト様を傷つけるようなことをするなら・・・。」

 フレアはその先の言葉を言うことはできなかった。理由は簡単だ。フレアにとってシンラという存在が恐ろしいものであるからだ。

 「別にライトを傷つける計画は立てていませんよ。過程はともかく、最終的にはハッピーエンドを迎えられる計画ですから。」

 「そうですか。それを聞いて安心しました。」

 フレアはシンラが本当のことを言っているか否かは判断がつかなった。しかし、シンラの言葉を信じることにした。

 「では失礼します。」

 フレアは部屋を出ようとした時、シンラの方から語りかけてきた。

 「私の計画では、ライトは人間界で再び生活するようになります。あなたに何のために人間界で生活させたか分かりますね。」

 「・・・はい。ライト様を支えられるように頑張ります。」

 フレアはシンラの意図が伝わり返事をする。その言葉を聞いてシンラはニコリと笑った。


 ライトは毎日史書を作成しながら、人間界で生活できる時を待った。その時が来るのは意外にも早く、ライトがシンラにお願いしてから数日しか経っていなかったのだ。

 「ライト。どうやら条件を満たしたようです。あなたには人間界で生活することを認めましょう。ただし、人間界でので生活が楽しいからといって仕事をおろそかにしてはいけませんからね。」

 ライトとフレアはシンラの部屋に呼び出され、シンラから吉報を受け取った。

 「はい。ありがとうございます。」

 ライトは人間界で生活できる許可を受けて喜ぶ。

 「それからフレア、ライトを頼んだわよ。」

 「分かりました。」

 ライトとフレアはシンラの部屋を後にし建物の外に出る。

 「それじゃあフレアお願い。」

 ライトはフレアに人間界に繋ぐ扉を出すよう指示する。

 「分かりました。場所は涼平様の家の中でいいですか。」

 「それでいいよ。」

 フレアは扉を顕現させ、ライトとフレアはその扉の中に入った。


 ガチャ

 涼平は玄関のカギを開けて家の中に入る。靴を脱ぎリビングに繋がる廊下を歩く。ドアを開きリビングに入ると涼平は驚きの光景を目にした。

 「おかえり涼平。」

 そこにはもう会うはずのない美少女の姿があった。

 「ライトどうしてここに。」

 「どうしてって、涼平はが私に会いたいって願ったんでしょ。」

 ライトは少し照れながら理由を説明する。

 「そっか。そうだな。」

 涼平は納得する。あのキーホルダーに願ったことが叶ったのだ。嬉しいと同時に恥ずかしさが涼平の感情を渦巻く。ライトに会いたいなんてことを願ったことをライトに知られてしまったのだ。傍から見れば告白していることと同義とされてもおかしくない。

 「涼平。突っ立てないで一緒にゲームしよ。」

 ライトはテーブルに置いてあるコントローラーをとる。

 「そうだな。」

 涼平もコントローラーをとる。ライトが涼平の願いについてどう思ったのか定かではないが、今はとりあえずライトとのゲームの時間を楽しむことにした。 

 

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