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七 別れ

 今日も何事もなく学校の授業が終わり放課後になる。放課後になると、大半の生徒が部活動に行ったり、帰宅するので教室には生徒が少なくなる。涼平は部活に入っていないので、いつもはすぐさま帰宅していたのだが、ライトが転校してき手からは変わった。ライトは放課後少しの時間だけ、聖来と美影と少しだけ教室でおしゃべりをするようになった。涼平はライトと一緒に帰宅する必要があるので、仕方なく教室で待つことにしている。

「今日私部活休みだから女子会でもしない。」

 聖来が提案する。

 「女子会ですか。いいですよ。」

 美影は了承する。

 「私は・・・。」

 ライトは少し考える。

 「ライトちゃんは参加できないのかな?」

 「えーっと。」

 ライトは涼平の方をチラりと見る。

 「俺のことは気にせずに行ってこい。何かあったら連絡してくれ。」

 涼平は鞄を持って教室を出ていった。

 「私も参加する。」

 ライトは聖来に返事をした。


 涼平は帰り道を一人で歩いている。

 (帰って何をしようか?)

 涼平はライトの女子会が終わるまで、家に一人なので前と同様にライトのいる時にはできないようなことをするか考えていた。

 (そういえば、みかんソフトの新作がもうすぐ発売だったな。初回限定版を予約しておくか。)

 「あなたが黒井涼平様ですか。」

 涼平が考え事をしていると一人の少女が話しかけてきた。

 「そうだけど。」

 涼平はいきなり話しかけてきた少女に少し警戒する。

 「私の名前はフレアです。ライト様の従者と言えばお分かりでしょうか。」

 「ああ。そうか。」

 涼平はフレアが敵でないことを知り警戒を解く。涼平は改めてフレアを見る。身長は150センチにも満たないくらいで、綺麗な赤色のボブカットな髪が特徴だ。

 「色々聞きたいこともあると思いますが、家に案内していただけると助かります。」

 フレアは涼平に要望を伝える。

 「そうだな。話は長くなるだろうから、立ち話するよりはいいな。」

 涼平はフレアの意見を了承し歩き始める。

 フレアはその後ろをついてくる。涼平は聞きたいことが色々あるけど、とりあえず何も聞かないことにした。 

 (何か話した方がいいのかな。)

 涼平はフレアをちらりと見る。

 「無理に話題を振らなくても大丈夫です。」

 フレアは涼平の考えを見透かしたように発した。

 「そうか。」

 涼平たちはそれ以降会話をすることなく自宅まで歩いた。

 自宅に入ると、フレアをダイニングにある椅子に座らせる。涼平は冷蔵庫からジュースのボトルを取り出し、コップに注ぐ。そのコップをフレアの前に置き、涼平はフレアの向かい側に座る。

 「ありがとうございます。」

 フレアはお礼を言うと、ジュースを一口飲んだ。

 「涼平様にも聞きたいことが色々あると思いますが、私の要件を先に済ませてもよろしいでしょうか。」

 フレアは涼平に確認する。

 「いいぞ。」

 涼平は了承する。

 「では、これをつけてください。」

 フレアは涼平に黒色のブレスレットを渡す。

 「これはなんだ?」

 涼平はいきなり渡されたブレスレットに困惑する。

 「これは簡単に言うと嘘発見器です。これからいくつか質問をする際に、涼平様に嘘をつかれないようにする保険みたいなものです。」

 「あんまりいい気はしないな。」

 涼平は文句を言いつつも、ブレスレットを手に付ける。

 「それでは質問します。」

 フレアは一枚の紙とペンを取り出した。

 「人間界の生活は楽しいですか?」

 「楽しいと思うぞ。娯楽は多いし、魔界よりも平和だしな。」

 涼平は予想外の質問にあっけにとられたが、思ったことを答えた。

 フレアは「そうですか。」と返答しつつ、紙にペンで質問の答えを記載した。

 「質問を続けます。ライト様が来てからの生活は楽しいですか?」

 「そうだな~。ライトが来て色々大変なこともあったけど、総合的に判断すれば楽しいかな。」

 フレアは涼平の答えを再び紙に記載する。

 「次の質問です。涼平様はライト様のことを恋愛対象としてみていますか?」

 「何だよその質問。」

 涼平は驚いて思わず立ち上がる。

 「私はただこの紙に記載されている質問をしているだけですので、質問の意図は分かりません。」

 フレアは涼平に驚くことなく淡々と答える。

 「じゃあ、その質問を考えた神は誰だ。」

 涼平は落ち着きを取り戻してフレアに聞く。

 「シンラ様です。」 

 「そうか。」 

 涼平はシンラの名前を聞いて納得する。質問の意図ではなく、フレアがこんなバカげた質問を淡々としている理由がだ。以前ライトと会話した時もそうだが、神様連中はトップであるシンラに対して、絶対的忠誠心を持っていると涼平は感じていた。つまり、シンラの言うことであれば、何の疑問も持たずに実行するということだ。

 「質問の答えを教えていただけると嬉しいのですが。」

 フレアが沈黙している涼平に声をかける。

 「そうだったな。ライトのことは何とも思ってない。ただの同居人だ。」

 「そうですか。」

 フレアはチラリと噓発見器を見たが、反応していなかった。

 「では最後の質問です。涼平様はライト様のことを性的対象としてみていますか?」

 「えっ!!」

 涼平は驚く。涼平も先ほどの質問である程度ぶっ飛んだ質問がきてもいいように構えていたが、予想の遥か斜め上をいっていた。

 「・・・。」

 涼平の頭の中で質問に対する答えをどうすべきか考えていた。質問の答えはもちろんYESだ。ライトでしたことがある。しかし、それを正直に答えることに抵抗がある。できれば、嘘をついて乗り切りたいのが涼平の本音だ。そこで問題になるのが噓発見器だ。この噓発見器は何を基準にして検知するかだ。一般的な噓発見器なら心拍数の変化等を用いて検査するが、今回の噓発見器は神様が持っている代物だ。もしかしたら、何か特別な方法で検知するかもしれない。

 (どうするべきか。)

 「何をそんなに考え込んでいるのでしょうか。質問の意味が分からないのでしょうか。質問内容を端的に言いますと、ライト様でオ〇ニーしたことがあるかということです。」

 「いや意味は分かるよ。」

 涼平はフレアの言葉に反射的に反応した。

 「なら答えてください。はいかいいえでいいですので。」

 「分かった。」

 涼平は覚悟を決める。フレアからもらった噓発見器を通常の噓発見器と同じだと断定し、いつも通りに答えることにした。 

 「したことないぞ。」

 ピピーッピピーッ

 涼平が答えを言うと同時に、噓発見器が白く光り音が鳴った。

 「・・・。」

 涼平は沈黙する。 

 「涼平様。嘘をついた方が余計にかっこ悪いですよ。」

 フレアは涼平に指摘する。

 「そうだな。」

 涼平は落胆する。

 「一応確認しますけど、ライト様でオ〇ニーしたということでよろしいですね。」

 「ああ。」

 涼平が返事をするとフレアは紙に記載した。

 「これで質問は終わりました。お疲れ様でした。」

 「そうか。ところで、この質問の結果をライトに伝えたりするのか?」

 涼平はフレアに聞く。涼平としては、ライトをおかずにしていることを本人に知ってほしくないからだ。

 「心配はいりませんよ。ライト様に伝えるなら、ライト様の目の前で質問しますので。」

 フレアは涼平の不安を払拭する。

 「それもそうだな。」

 涼平はフレアの言葉を聞いて納得する。

 「それでは涼平さんの質問に答えますよ。ただ、私はシンラ様の命令に従っているだけなので、答えられる範囲は限られますのでご了承ください。」

 「分かってるよ。」

 涼平もフレアがシンラの計画の全てを知っているとは思っていない。涼平の目的はフレアの回答から、自分なり計画について推測することだ。

 「早速だが、ライトを俺の近くに転移させたのは偶然か?」

 この質問は涼平にとっては核になる質問だ。涼平とライトの出会いが必然である可能性が高いことは以前から考えていた。人間界に悪魔が来た理由、涼平自身が人間界にいる理由、諸々の事情を考えると出会いが偶然とは考えられない。しかし、それは推測の域を出ないものであったので、この質問で確定事項にしたいのだ。

 「私はシンラ様に指定された場所に転移させただけなので、涼平様の近くに転移させたいという意図があったかは分かりません。」

 フレアは答える。

 「なるほど。」

 涼平は頷く。フレアは断言はしていないが、確定でいいだろうと涼平は考えた。ライトを人間界に送るだけが目的なら、場所まで指定する必要はないだろう。わざわざ場所を指定する意味があったということだ。その意味とはおそらく自分と会わせるためだろう。少なくともライトがあの場所に落ちてきて、他に何か特別なことがあったとは思えない。 

 「次の質問だが、今までライトを迎えに来なかったことに何か理由でもあったのか。」 

 この質問もあくまで事実確認程度だ。

 「理由は分かりませんが、シンラ様が指定した日時までは迎えに行くなと言われていました。」

 「そうか。」

 涼平は返事をする。これでライトを人間界に留まらせたことが確定となった。

 (そうなると・・・。)

 涼平は考える。

 ライトを人間界で生活させることが目的だった?違う。それだけなら、俺と出会うことを必要としない。

 ライトを悪魔に襲わせることが目的だった?違う。それだけなら、魔界で襲わせる方が手っ取り早い。

 つまり、ライトを人間界で襲わせる必要があったと考えることが妥当だ。しかし、それだけなら俺と出会うことを必要としない。そうなると、人間界に来た悪魔を倒す役割として俺が抜擢されたことになる。

 しかし、何のためにそうする必要があるのかが疑問に残る。

 (一体何が目的なんだ。)

 涼平が考え込んでいるとフレアが声をかけてきた。

 「もう質問はよろしいのでしょうか。」

 「えーっとそうだな。神様って何か人間や悪魔とは違う特殊なことってあるか。」

 今の涼平の疑問を解消するにはこの質問が最適だと考えた。

 「どうでしょうか。神様は神力しんりょくと呼ばれる力は持っています。それは悪魔で言うところの魔力と同じようなもので、神様が力を使用する時に使います。」

 フレアは答える。

 「それだけか。」

 「はい。それだけです。」

 「そうか。」

 涼平は自分の望むような回答が得られなかったことに落胆する。

 「質問は以上だ。」

 涼平はこれ以上得られる情報はないと判断した。

 「分かりました。それではライト様が帰ってくるまで、一緒に対戦ゲームでもしませんか。」

 「えっ。分かった。」

 涼平はフレアの突拍子のない発言に驚いたが了承した。フレアは扉を使うことのできる神様だ。仲良くしておいた方が良いと涼平は考えたのだ。

 涼平とフレアはソファに座り、据え置き型のゲーム機を起動した。

 

 一方ライトは、聖来と美影に連れられて学校近くのファミレスに来ていた。3人ともドリンクバーを注文した。

 「ところで女子会って何をするの?」

 女子会に参加することが初めてなライトは、女子会の内容を聞くことにした。

 「それは女の子同士でしか話せない話をするのよ。例えば恋バナとか。」

 聖来がライトの質問に答える。

 「そうなんだ。」

 ライトは女子会について少し理解することができた。

 「恋バナと言えば、ライトさんはかわいいしスタイルもいいから、男子の注目の的ですよね。」

 美影はライトについて語す。

 「そうよね。ライトちゃんのことが気になる男子は多いよ。私も何度かライトちゃんのこと聞かれたし。」

 聖来が美影に同意する。

 「そうなのかな?転校生が珍しいからじゃないかな。」

 「そんなことないですよ。現にライトさんは、転校早々校内一の男子である池さんに告白されたじゃないですか。」

 美影はライトがかわいい理由を示す。

 「そうだよね。ライトちゃんがあそこで振ったから、男子たちはライトちゃんに直接アタックすることは止めたと思うよ。」

 「えーっとそうなのかな。」

 ライトはどのように返答してよいか分からなかった。

 「それでは話題を変えて、好きな人について話しましょう。ライトさんは好きな人とかいますか。」

 美影はライトの様子を見て話題を変えた。

 「好きな人?いないよ。」

 「そうなの!!黒井君と仲良いけど、好きとか気になったりしないの?」

 聖来はライトの返答に驚いた。聖来から見て、ライトは涼平のことを意識していると思っていたからだ。

 「私はいついなくなるか分からないから、今誰かと付き合っても未恋が残るだけだよ。」

 ライトはこの人間界での生活が長くないことは覚悟している。そもそも、神様である自分が恋愛をしてはいけないと自分の心に鍵をかけていることも要因ではあるが。

 「そうなんだ。それは悲しいね。せっかくライトちゃんと仲良くなれたばかりなのに。」

 「そうですね。」

 聖来と美影は寂しそうな顔をした。

 「まだ決まったわけじゃないから。それより、聖来は好きな人とかいないの?」

 ライトは聖来に話題を振った。

 「えっ私。私はその・・・。」

 「聖来さんは幼馴染である山本さんのことが好きなんですよ。」

 聖来が言い淀むのを見て美影が答える。

 「そうなんだ。聖来と山本君は幼馴染なんだね。告白とかしないの。」

 ライトは聖来の話に興味津々だった。ライトにとって恋愛は体験し難いことだからだ。

 「私としては大樹に告白して、振られたら多分ショックを受けて顔向けできなくなるわ。」

 聖来は振られた時が怖くて告白できないと告げる。

 「私は山本さんは、聖来さんのことが好きだとずっと言ってるんですけどね。しかし、山本さんの方もいつまでも聖来さんを待たせることも良くないと思いますけど。」

 美影は早くくっつけと言わんばかりだった。

 「もう私の話はいいでしょ。それに修学旅行までには覚悟を決めておくし。」

 聖来は顔を少し赤くしながら言った。

 「修学旅行は告白イベントと言っても過言ではないですからね。」

 美影は恋愛するにあたって学校行事は一つのチャンスであることと理解している。

 「そうだよね。アニメとかだったら、修学旅行で告白する場面って結構あるし。」

 ライトも人間界のアニメや漫画等で修学旅行が恋愛するにあたって重要であるという知識は得ていた。

 「そうだよね。ところで美影はどうなの。あなただってライトちゃんと同じくらいモテるでしょ。好きな人はいないの?」

 聖来は美影に質問する。美影も男子生徒の間ではかなり人気なのである。聖来はそのことを知っていて、さらに美影が告白される現場を何度も見てきたのだ。

 「そうですね。私は涼平さんのことが好きですよ。」

 美影はジュースを一口飲んでから言った。

 「「ええええええええええええええ。」」

 ライトと聖来は驚いて思わず立ち上がる。

 「ちょっと美影。私一度もそんなこと聞かなかったけど。」

 聖来は一年生の時から美影と一緒にいたが、そんなことは一度も話さなかった。

 「それは直接聞かれたことが無かったので答えなかっただけです。」

 「そうだったかも。」

 聖来は過去を振り返り納得する。聖来は美影に告白してきた男子と何で付き合わないのとか、好きなタイプはどんな人みたいな質問はしたけど、確かに直接聞いたことはなかった。

 「そっそれで、涼平のどこが好きなの?」

 ライトは美影に問い詰める。ライトとしては涼平が美影と付き合ってくれれば、自分自身は応援に回ることができる。そうすれば、自分の中にあるモヤモヤな気持ちを解消できると思った。

 「それは色々ありますが、やはり気遣いができて優しいことですかね。」

 「分かるよ。」

 美影の答えにライトは同意する。ライトも涼平の同居する中で、彼の優しさに触れてきたからである。

 「それで、美影は告白しないの?」

 聖来は美影に質問する。美影は自分に対して告白しろと勧めるのに、美影自身が行動に移してないことに不満を持つ。

 「してないですね。一年生の時に好きな人はいますかと涼平さんに聞いたことがあるのですが、涼平さんはいないと言っていたので脈無しだと思いまして。」

 美影は振られることが分かっているのに、告白する人はいないといった顔をする。

 「そっか。けど、今は分からないと思うよ。それに美影のような美少女に告白されて、嬉しくない男子なんていないよ。」

 ライトは美影の後押しをしようとする。

 「そうでしょうか。しかし、今の涼平さんにはライトさんという超絶美少女の同居人がいます。むしろ、涼平さんはライトさんを好きになった可能性が大いにあり得ます。」

 美影はライトの事を強力なライバルだと考えている。

 「そんなことないと思うけど。涼平が私に興味があるなら何か行動に起こしてると思うよ。涼平は私がいついなくなってもおかしくないことは知ってるから。」

 涼平はライト自身が神界にいずれ帰ることは知っている。もし、自分のことが好きなら告白して、ひと時でも長く恋人関係でいたいと思うはずだ。

 「そうですか。それなら、また今度聞いてみようと思います。」

 美影はライトの話を聞いても少しも声のトーンや表情が変わらなかった。

 その後も三人で他愛のない話を数時間程度続けた。時間は7時を過ぎ、聖来が夕食の時間だから帰ることなり、そのタイミングで女子会はお開きになった。3人とも帰る方向が違うのでファミレスでそのまま解散となった。

 ライトは涼平の家までの帰り道を一人で歩いていた。

 「まさか美影が涼平のことが好きだったなんて。まぁ気持ちは分からなくもないけど。」

 ライトはファミレスでの会話を思い出していた。

 「それとなく涼平に聞いてみようかな。誰か好きな人はいるかって。もし私だって答えたらどうしよう。・・・それはないか。」

 ライトはファミレスで自分が言ったことを思い出して、涼平が自分のことが好きである可能性を否定した。しかし、美影のためという建前で涼平に好きな人を聞いてみたかった。ライトも涼平の好きな人に興味を持っていたからだ。

 「帰ったら聞いてみよう。」

 ライトはそう決意した。

 ファミレスから涼平の家まで徒歩20分程度だった。ライトは玄関の扉を開けて中に入る。

 「誰か来ているのかな。」

 ライトは玄関に涼平のものではない靴があった。

 「ただいま。」

 ライトは廊下を歩きリビングへ続く扉を開ける。

 「お帰り。」

 「おかえりなさいませ。ライト様。」

 涼平とフレアはゲームをしながらライトに返事をする。

 「えっフレア。何でいるの?」

 ライトは自分の従者であるフレアが涼平の家にいることに驚く。

 「それはライト様を迎えに来たからです。」

 フレアは答える。 

 「そうだよね。」

 ライトは迎えが来たことに安堵すると同時に、もうこの楽しい生活が終わってしまうことに寂しさを感じる。

 ライトは鞄を床に置き、涼平とフレアがやっているゲームを見る。ゲームの内容はレースゲームで、現在フレアが1位で涼平が2位。その後ろには10人のNPCが続いている。

 「フレア強すぎだって。」

 2位を走っている涼平と1位を走っているフレアの差は4分の1周差だ。

 「ショートカットを駆使しているだけですよ。」

 フレアは凄まじいテクニックでみるみるその差を広げていく。結局レース終了まで差は開き、フレアは涼平に圧勝した。

 「フレアマジですごいわ。同じ神様であるライトとは大違いだ。」

 以前ライトとこのゲームをしたときは、ライトはNPCにすら勝てなかったのだ。

 「フレアゲーム超うまいね。やったことあるの。」

 ライトもフレアのゲームの上手さは知らなかった。

 「はい。人間界のゲームの有名どころは一通りやりました。」

 「そうなのか。」

 フレアの答えに涼平は驚いた。ライトは今まで人間界の娯楽に触れたことが無かったのに、従者であるフレアが触れたことがあることにだ。普通逆じゃないのか。神様の事情は分からないものだと涼平は考えた。

 「そうなの?いつ遊んだの?まさか神界にゲームがあるの?」

 ライトも驚いた。ライトの方は当然である。フレアが人間界の娯楽に先に手を付けていたことにだ。

 「以前私はシンラ様の命令で1年間人間界で生活していました。その時に、娯楽をはじめ料理、スポーツ等、人間界で様々なことを体験してきました。」

 「そういえば、フレアが1年くらいいなかったことあったね。」

 ライトは思い出しながら言った。

 「ところで、ライトは帰ってきたけどもう帰るのか?」

 涼平はフレアに効いた。

 「すぐに帰る必要はありませんよ。シンラ様の命令は今日中に帰還せよとのことですので、まだ少し時間はあります。どうしますかライト様。すぐに帰りますか?」

 フレアは帰るタイミングをライトに委ねる。

 「それならギリギリまでここにいるよ。まだ涼平と遊び足りないから。」

 ライトはゲームコントローラーを持ってきてゲームに参加する意思を見せる。

 「フレアは少しは手加減しろよ。ライトめっちゃゲーム弱いから。」

 「知ってますよ。けど、手加減はしません。ライト様をいじめられる絶好の機会ですから。」

 フレアはライトの従者とは思えない発言をする。

 「アイテムは無限の可能性があることを教えてあげるんだから。」

 ライトのセリフは自分の実力ではフレアに勝てないことを物語ったていた。

 (ライトとフレアは仲いいみたいだな。)

 涼平はライトとフレアのやり取りを見て思った。涼平の中の主従関係は、主が絶対的な存在であるから、従者が主と対等なやり取りはできないと考えていた。

 「さあ、行くよ。」

 レースがスタートした。

 

 その後はひたすらゲームをした。レースゲームではライトが全敗した。また、格闘ゲーム・FPS・パーティーゲーム等、対戦できるゲームを次々に遊んだが、ライトは1勝もすることはできなかった。

 「そろそろ時間ですね。」

 フレアの一言で涼平は時間を確認する。時刻は11時半を回ったところだった。日付が変わるまで残り30分だ。ゲームも丁度対戦が終わった時だったので、切り上げるにはいい時間だった。

 「・・・そうね。楽しい時間はあっという間に終わるものね。」

 ライトはコントローラーを置き立ち上がる。ライトの言葉からは悲しい気持ちがひしひしと伝わってきた。

 「ライト様。最後に涼平様に話しておきたいことはありますか。おそらくもう会うことはないと思いますので。」

 フレアはライトの様子を見て別れの言葉をいうように勧める。

 「そうね。」

 ライトは涼平の方を向く。

 「ライト。」

 涼平はライトの顔を見る。改めてライトの顔をよく見ると、目はうるうるとしていたが、涙が出ないようにこらえているように見えた。涼平自身もライトと別れること自体は悲しい。しかし、ライトの前で涙を流すというかっこ悪いところを見せたくなかった。

 「涼平。今までありがとう。私に人間界の娯楽を教えてくれてありがとう。毎日ご飯を作ってくれてありがとう。悪魔から私を守ってくれてありがとう。これまでの日々は私にとって最高の思い出だよ。」

 ライトは涼平に感謝の言葉を重ねる。

 「俺もライトと過ごした日々は悪くなかった。」

 涼平はライトに気持ちを伝えることが恥ずかしくて、直接的な表現は控えた。

 「それでね、涼平には何かお礼をしたいのだけど、涼平は魔界に戻りたいんだよね。フレアがいるから今なら帰れるけどどうする?」

 ライトは以前涼平から聞いていた願いについて話す。

 「まあ、確かに最終的には帰りたいんだけど、今はまだ人間界で学生生活を送っていたい。」

 「そっか。それならどうしようかな。」

 ライトは考える。ライトとしては涼平のために何かしたいのだ。

 「そうだ。」

 ライトは何かを思いついたようだった。ライトは二階に上がり自分の部屋からアニメキャラのキーホルダーをとってきた。

 「そのキーホルダーがどうしたんだ。」

 涼平はライトが何をしたいのか分からなかった。

 「えい。」

 ライトはキーホルダーは強く握った。すると、ライトの身体が光り輝いた。そしてその光がキーホルダーを握っているライトの手に集まる。

 「これでオッケーかな。」

 ライトは先ほどのキーホルダーを涼平に渡す。

 「えーっと。」

 ライトから渡されたキーホルダーをじっくりと見る。特段キーホルダーに変わったことはなく、ライトがこのキーホルダーに何をしたのかが分からなかった。

 「私の力をそのキーホルダーに込めたの。このキーホルダーを握って自分の願いを念じれば叶うはずだよ。魔界に帰るっていう願いを叶えることはできないけど、涼平の役に立つと思う。」

 ライトはキーホルダーの説明をする。

 「ありがとう。」

 涼平は礼を言う。

 「・・・そろそろ行かないといけないね。フレアお願い。」

 フレアはライトの言葉を聞いて、人間界と神界を繋ぐ扉を顕現させた。フレアは扉を開き先に中に入る。

 「涼平、また会えるよね。」

 ライトは最後に一言そう言った。

 「ああ。きっとすぐに会えるさ。」

 涼平はライトを悲しませないために、根拠のないセリフを発した。

 「うん。ばいばい。」

 ライトは扉を閉めた。そうすると、扉は下側から光の粒子となり消えた。

 

 

 

 

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