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五 転校生

 昨日の悪魔襲撃から1日が経過した。今日は日曜日で、昨日みたいにに映画を見に行くといった予定はないので、一日家でゆっくり過ごすことになるだろう。

 涼平はいつもと変わらずに朝食を二人分用意して、テーブルの上に並べる。そして、ライトを呼び朝食を食べ始める。

 「涼平。私、今日は外出かけようと思ってるの。」

 「えっ。」

 ライトの唐突な一言に涼平は驚いた。昨日悪魔に遭遇したばかりだから、涼平は一日家の中で過ごすと考えていたからだ。

 「それで、ライトはどこに行きたいんだ?」

 涼平は聞いた。ライトの発言に驚きはしたが、今後悪魔に怯えて一生家から出ないよりはいいだろうという考えに至った。

 「今日は一人で行こうと思うの。もちろん、何かあったらすぐに電話するから安心して。」

 ライトは言った。

 「えっ。一人で。・・・分かった。何かあったら電話しろよ。」

 涼平はライトが一人で出かけることに少し悩んだが、ライトにも一人になりたい時があるのだろうと考えた。それに昨日今日ですぐに悪魔が襲いには来ないだろう。

 「うん。今日は多分昼ごはんいらないから。」

 「分かった。」

 朝食を食べ終えるとライトは準備をして出かけて行った。

 「・・・一人か。」

 涼平は一人で住むには大きい家の天井を眺めながら言った。

 「久しぶりに一人だし、ライトがいる時にはできないことでもしようか。」

 涼平は階段を上り二階に行く。涼平は自分の部屋に入ろうとドアノブに手をかけた所で、ライトの部屋のドアが開いていることに気づく。

 「ちょっとだけ中を見てみるか。」

 涼平はライトの部屋に入ることを決めた。涼平はライトがこの部屋で住むことになってから、一度もこの部屋に入っていない。やはり、プライバシー的な配慮が必要だと涼平は考えていた。涼平だって、出来る限りはライトに自分の部屋には入ってほしくはない。なぜなら、ライトもとい女性には見られたくないゲームや本があるからだ。しかし、ライトの場合はそういった類の物はない。ライトの部屋にあるのはこの前ショッピングモールで買ったものだけだからだ。その時に訪れた店は特にいかがわしい物を取り扱っていない。それに涼平には、一度ライトに自分の部屋に入られたから自分も一度くらいならいいかと自分に言い聞かせて、ライトの部屋に入ることを正当化しようとした。

 ガチャ

 ライトの部屋に入ると、ライトが暮らす以前とそこまで変化は無かった。当然と言えば当然である。ライトが住んでからそこまで時間は経っていないし、ライトは部屋の模様替えをするよりも、ゲームを最優先にしていたからだ。しかし、変化した点もある。まず、部屋の中にあるタンスにはライトが普段着ている服や下着が入っているはずだ。さらに、ベッドはライトが使用するようになった。

 「・・・。」

 涼平の頭の中では激しい葛藤が生じている。ベッドに飛び込んでライトの匂いを嗅ぎたいという煩悩と、ベッドに飛び込むことはやり過ぎだろという理性が対立している。

 「さすがにダメだな。」

 涼平はライトの部屋を出て自分の部屋に入った。

 パソコンを起動してゲームを起動する。涼平が起動したゲームは18禁の学園恋愛シュミレーションだ。涼平が持っている数あるゲームの中でこのゲームを選んだ理由は、このゲームのヒロインが金髪で巨乳で見た目がライトに似ているからだ。性格は違うが、そこは自分の想像の中で変換することで補うことにした。涼平はこのゲームをとっくにクリアしているので、シーン回想から好きなシーンを選択する。

 「今日は家に誰もいないから、私の部屋に来なさい。」

 金髪のヒロインは主人公を部屋に誘う。

 「うん。」

 主人公はヒロインに言われるがままについて行った。そして、ヒロインの部屋で本番行為をするシーンに移った。

 涼平はヒロインをライトに、主人公を自分に置き換えて一人で楽しむのだった。


 涼平が一人で楽しんでいる一方で、魔界のモーデン帝国の会議室では緊急会議が開かれていた。

 「恐らく人間界に送った三人の悪魔は死んだ。」

 長髪の男は言う。

 人間界に派遣された悪魔たちとは四時間に一度定時連絡を取り合っていた。その定時連絡に2回も応答が無い。これだけならまだ、定時連絡を忘れたという可能性も僅かに残っている。しかし、悪魔たちは定時連絡以外に一度連絡をしてきたのだ。標的を見つけたと。つまり、悪魔たちは標的との間に何かが起こったと考えるのが妥当だ。そして、定時連絡に応答がない状況というのは、戦闘になり負けたからだという考えに至った。もし、戦闘に勝利したなら報告があるはずだ。もし、標的が逃亡したならば、追いかけている最中と考えられ、定時連絡に応答することは可能だ。定時連絡に応答できない状況、それは死それ以外には考えにくい。

 「おいミカ。人間は弱いんじゃなかったのか。」

 年配の男がミカに問い詰める。

 「ええ。弱いですよ。実際に、あの方たちは定時連絡の時に、人間を数人殺したが話にならない程弱いとおっしゃっていたじゃないですか。恐らく彼女には人間ではない仲間がいるのかもしれません。」

 ミカは自分の説明は間違いでないと反論する。

 「ミカの言う通りだ。それに国宝を盗むような奴だ。仲間に強者がいてもおかしくないだろ。むしろ、盗人の仲間の可能性を考慮せずに悪魔を派遣した我々に落ち度がある。」

 長髪の男がミカを擁護する。

 「まあ、確かにそうだな。」

 一人の男が長髪の男に同意した。

 「盗人の居場所は分かった。問題は次に誰を人間界に派遣するかだ。」

 長髪の男がこの会議の議題を提示する。

 「私から一つ案を出していいですか。」

 ミカは手を挙げて発言権を求めた。

 「私は相手の能力を分析する必要があると考えます。そこで、実力のある悪魔を二人と偵察役の悪魔を一人派遣するのはどうでしょうか。もし、盗人たちの実力が二人の悪魔よりも下ならそれで良し。負けた場合でも偵察役の悪魔が戦闘を記録し、魔界に持ち帰り対策をすることが可能になります。」

 ミカは自分の考えを述べる。 

 「なるほど。」

 「いいんじゃないか。」

 「悪くはない。」

 会議室の悪魔たちはミカの意見に賛同する。

 「どうやら反対はないようだな。ではミカの案を採用しよう。次の問題は派遣する二人を誰にするかだな。」

 会議は次の議題に移行する。


 その後も会議は続き人間界に派遣する三人の悪魔が決定した。偵察役の悪魔はすぐに決まったが、実力のある悪魔二人を決めることに時間がかかった。そして、人間界に派遣する日は今から五日後になった。その理由は、派遣する実力のある悪魔二人は現在西部遠征中で帰還が三日後である。だから、休日を一日挟んだ後に派遣することに決定したのだ。

 会議は終わり、会議に参加した悪魔は次々に退室していった。そんな中、長髪の男は会議室に残って座っていた。

 「アラン君、元気ないね。」

 ポニーテールの少女が長髪の男に話しかける。

 「ラナか。確かに元気はないな。今度の人間界派遣も上手くいくものかと思ってな。今度派遣する二人は確かに強い。しかし、全体から見ると強い部類に属するだけで、その強い部類の中では弱い方だ。相手の実力は分からないが、五分五分といったところだろう。」

 アランは今回の作戦について懸念している。

 「そうだね。本当に強い悪魔たちは今、戦線の最前線で戦っているからね。もしお兄ちゃんがいたら、一人で解決できるのにね。」

 「貴様の兄であるリィトは、戦争中に行方不明になり死亡したと推定されている。いない奴の話をしてもしょうがないだろう。それにリィトがいれば、戦争でここまで劣勢になることは無かっただろう。そうであれば、国宝を取り返すことを最優先にする必要もなくなる。」

 「それもそうだね。けど、お兄ちゃんが生きてると嬉しいな。」

 ラナはいなくなった兄の生存を切に願う。

 「そうだな。あいつがいれば今の状況も少しは良くなるだろうに。」

 アランは行方不明になったリィトの姿を思い出した。


 涼平はライトがいない一人の時間を楽しんでいるといつの間にか午後6時を過ぎていた。

 「もうこんな時間か。」

 涼平は自分の部屋から出てキッチンに向かった。

 「さて、今日は何を作ろうか。」

 涼平は冷蔵庫の中を見ながら夕食のメニューを考える。ライトはこの時間になっても帰ってこないが、おそらく夕食は家で食べるだろう。ライトが今朝出ていく時には、昼食はいらないと言っていたが、夕食はいらないとは言われていないからだ。

 「餃子にするか。」

 涼平は冷蔵庫の中に餃子の皮があるのを見て決意した。

 「ただいま。」

 涼平が餃子を作っていると玄関の方から声が聞こえた。ライトが帰ってきたのだ。リビングに繋がるドアが開き、ライトの姿が見える。

 「おかえり。それで、ライトはこんな時間までどこに行ってたんだ。」

 涼平はライトが今日何をしていたのか気になり聞いた。

 「ひっみっつ。だけど、明日になったら分かるよ。」

 ライトはニコニコしながら言った。

 (何かいいことがあったんだろうな。)

 涼平はライトを見ながらそう思った。

 その後は普段と変わらず、夕食を食べ、風呂に入り、就寝した。

 次の日の朝

 「じゃあ、学校行ってくるから留守番よろしく。」

 涼平はライトにそう告げると学校へ向かった。

 教室に着くと、クラスメイト達はなにやら騒がしかった。

 「おい、金田。何かあったのか。」

 涼平は騒ぎの理由が知りたくて、近くにいたクラスメイトに話を聞いた。

 「今日このクラスに転校生が来るらしいんだ。」

 金田は答える。

 「なんだ転校生か。それだけで、こんなに騒いでるのか。」

 涼平は少し呆れた。高校に転校生が来ることは、小学校や中学校に比べると珍しいが騒ぎ立てるほどのことではないと涼平は考えていた。

 「実はただの転校生じゃないらしい。何でも超が付くほどの美少女らしい。」

 金田は少し興奮気味に話した。

 「そうなのか。サンキュー金田。」

 涼平は事情を知ることができたので、金田にお礼を言い自分の席に座った。

 「美少女か。」

 確かに男子高校生からしたら、美少女転校生なんてラッキーなイベントだろう。涼平も最近までは他の男子と同じだっただろう。しかし、今の涼平は少し違う。美少女それ自体は涼平は嬉しいのだが、ライトと出会ってしまった以上ライトを超える美少女が転校生としてくるわけがない。涼平は美少女転校生に期待していなかった。

 「美少女をお呼びですか?」

 いつの間にか美影が傍にいた。

 「えーっと、今の聞いてたのか?」

 涼平は少し恥ずかしくなってきた。

 「はい。どうやらすごくかわいい転校生が来るみたいですね。」

 「そうみたいだな。それよりも、美影も冗談を言うんだな。」

 涼平は美影が言った最初のセリフに驚いた。

 「・・・涼平さんはさっきのセリフを冗談だと捉えるのですね。」

 美影は泣き真似をする。

 「そっそんなことは無いぞ。美影は十分美少女だ。」

 涼平は慌てて返答する。美影の返しに驚いたからだ。

 「本当に。」

 美影は泣き真似を続けながら質問する。

 「本当だ。」

 涼平は美影の目を見てハッキリと言う。涼平の目から見ても美影は美少女だ。ライトという超絶美少女を見ても美影は同等くらいのレベルはあると涼平は考えている。

 「そうですか。」

 美影は少し嬉しそうだった。

 「おい、クラスの連中が騒がしいが何かあったのか。」

 朝練を終えて教室に来た大樹が聞いた。

 「何でも美少女転校生が来るらしい。」

 涼平は大樹に説明する。

 「美少女転校生ね。そりゃあ男どもは盛り上がるわけだ。」

 大樹は理由を聞いて教室が騒がしい理由を納得する。

 キンコンカンコーン

 チャイムが鳴りホームルームの時間がやってくる。

 担任の先生が教室に入ってきた。

 「本日の連絡をする前に大切なお話があります。今日から皆さんと一緒に勉強する仲間が増えます。入って来てくださーい。」

 担任の先生は生徒に転校生が来ることを伝える。

 先生の一言で教室に一人の少女が入ってきた。涼平はその姿を見て目を見開いた。

 「私の名前は神谷ライト。これからよろしくね。」

 ライトは明るく簡潔に自己紹介をした。

 「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」」」」」

 クラスの大半の男子が発狂する。理由は明白。ライトが超絶美少女だったからだ。美少女がクラスに増えるということに、嬉しくない男子なんてそうはいないだろう。

 (気持ちは分からないこともないけど。)

 涼平はクラスの男子たちに呆れていた。

 「皆さん静かに。神谷さんがクラスの仲間になることで、嬉しくなる気持ちは分かりますけど、騒がないように。」

 先生は騒ぐ生徒に注意する。先生の一言で教室が静かになる。

 「今は朝礼の時間ですので、神谷さんの質問は休み時間にしてください。席は黒井くんの隣に新しく机を用意しましたので、神谷さんはそこに座ってください。神谷さんも同居している黒井さんが隣なら色々聞きやすいでしょう。」

 先生は無意識に爆弾を投下した。

 「「「「「はあああああああああああああああああああああああ。」」」」」

 男子生徒が再び騒ぎ立てる。

 「おい。黒井どういうことだ。説明しろ。」

 「そう言えば、神谷さんどっかで見たことあると思ったら、この前校門で黒井を待ってた子じゃないか。」

 「言われてみればそうだ。黒井、お前次の日に聞いた時、神谷さんとは特に何もないって言ってたじゃないか。」

 男子生徒の痛い視線が涼平に集中する。

 ドン 

 先生が黒板を叩く。

 男子生徒はその音で静かになった。

 「うるさい。神谷さんの話では、同居することは急に決まったみたいで、黒井君は神谷さんが家に来るまで知らなかったそうです。」

 先生は男子生徒に向けて説明する。

 「そうか。」

 「なら、仕方ないのか。」

 「・・・。」

 男子生徒たちにも思うところはあるだろうが、教室は静かになった。

 ライトは教室が静かになったので、涼平の隣にある涼平の席に座った。

 「これからよろしくね。」

 ライトは涼平に笑みを向ける。

 「・・・よろしく。」

 涼平はライトに言いたいことが山ほどあったが、それを我慢して返事をした。

 その後、先生から事務的な連絡を済ませ朝礼は終わった。朝礼が終わると教室を出ていく。朝礼が終わり、一時間目の授業まで五分の時間がある。この時間は一時間目が移動教室の場合の移動時間のために確保されているものであり、一時間目の授業が教室である場合は自由時間である。このクラスの一時間目は世界史で教室で行うので、五分の自由時間があることになる。普段なら、各々席に座っていて、近くの生徒と話すのだが、今日は多くの生徒がライトの席の周りに集まっていた。

 「神谷さんはどこから来たの?」

 「神谷さんはどんな人が好みですか?」

 男女問わずライトに質問が飛び交う。

 「・・・。」

 涼平はライトになぜ転校してきたのか等、色々問いただしたいことがあったが出来そうにもない。

 「前に話した時に言っていた彼女の事情とはこのことだったんですね。」

 美影が涼平の机の隣に立ち話した。

 「まあ、そうだな。」

 涼平は返事をする。

 「いくら転校生が来たと言っても、あれほど席の周りに集まるのはやはり、彼女のルックスが素晴らしいからですかね。」

 美影はライトが人気の理由を予想する。

 「そうだな。ライトは美少女の域を超えているからな。」

 涼平は美影の意見に賛同する。

 「そうですね。そんな彼女と一つ屋根の下で暮らしている涼平さんの間に何も起こらないはずもなく。」

 美影は涼平とライトの関係を聞く。

 「何もないよ。ライトはレベルが高すぎて、俺とは釣り合わないから。」

 涼平はライトとの関係を否定する。実際、涼平自身はライトと釣り合っていないと考えている。他にも理由はあるのだが。

 「そうですね。涼平さんのルックスは悪くはないですが、ライトさんと比べると釣り合わないですね。」

 美影が納得したところで、5分が経ち先生が教室に入ってくる。

 「起立。礼。」

 「「「「「お願いしまーす。」」」」」

 授業の挨拶を済ませ、授業が始まる。

 「えーっと今日は古代ギリシャの続きからですね。教科書を開いてください。」

 先生はそう言いつつ、黒板に板書を始める。

 「ねえ、涼平。私まだ教科書無いから、見せて欲しいな。」

 ライトは涼平に小声で言う。

 「分かった。」

 涼平はライトの机と自分の机をくっつけて、ライトにも教科書が見えるように置く。

 「ありがとう。」

 ライトは涼平にお礼を言い、教科書を見る。

 涼平は授業を聞きながら、ノートをとる。

 隣のライトを見ると、授業を聞かずにノートに絵を描いている。

 (こいつ、何しに学校にきたんだ。)

 涼平はライトが学校にきた理由に疑問を持った。

 (まあ、ライトは別に大学とかを目指すわけでもないし、授業を真剣に聞く必要もないか。おそらく、学校に転校してきた理由も一人で家にいると不安になるとか、そういう理由だろう。)

 涼平はライトが転校してきた理由を考え、一人で納得する。

 一時間目の世界史が終わり、先生が教室から出ていく。授業と授業の間には十分の休み時間がある。十分も時間があると、他クラスからライトのことを聞きつけた生徒も教室に入って来て、先ほどよりもライトの席の周りには人が集まっていた。

 (大変そうだな。)

 涼平はライトの席の方を見て思った。

 ライトは多くの生徒から質問を受けていた。ライトはどうしたらいいか分からずに黙っていた。涼平に助けを求めようにも、生徒たちに囲まれていて身動きがとれない。

 (早く休み時間終わらないかな。)

 ライトはそう思いつつ、教室の時計を眺める。

 その後も授業は続いた。休み時間の度にライトの周りには多くの生徒が集まっていた。ライトは、せっかく学校にきたのだから、友達んができればうれしいと考えているが、大勢の人と会話をすることには慣れていない。だから、ライトは会話をしたくてもしにくい状況に自然となってしまっていたのだ。

 四時間目までの授業が終わり、昼休みの時間になった。昼休みは50分も時間があるので、今までよりも酷い状況になるのは目に見えた。

 涼平はさすがに可哀そうだと思い、ライトに声をかける。

 「ライト、昼食はもってきたのか。」

 涼平は質問する。

 「うん。コンビニでパンを買ってきたよ。」

 ライトは鞄から買ってきたパンを取り出す。

 「大樹、翔。今日は別の場所で飯を食うぞ。」

 涼平はいつも一緒に食べている二人に呼びかける。

 「おう。」

 「まあ、そうだね。」

 大樹と翔は反応する。

 「私たちも一緒に食べていい?」

 聖来と美影が涼平の机までくる。

 「いいぞ。」

 聖来と美影とは普段は一緒に食べてはいないが、ライトの話し相手には丁度いいだろう。

 「よし、いくぞ。」

 涼平は皆を引き連れ教室から出る。

 「なあ、涼平。どこで食べるんだ?食堂でも行くのか?神谷さんがいるとどこでも目立つと思うぞ。」

 大樹は涼平に聞いた。

 「大丈夫。とっておきの場所があるから。」

 涼平はそう言うと、皆を目的の場所まで連れていく。涼平が連れてきた場所は、屋上に繋がる扉の前だ。

 「涼平。屋上は入れないだろ。」

 大樹が聞く。大樹の言う通り、この学校は屋上への立ち入りはできない。

 「普通はな。けど、屋上への立ち入りは禁止ではない。例えば、文化祭の横断幕を取り付ける時は入れるだろ。」

 涼平は説明する。確かに用があるときは、生徒でも屋上に入れる。だから、禁止していない。普段は屋上に続く扉に鍵をかけて、生徒たちが屋上に出ることを防いでいる。

 「確かにそうだね。けど、鍵はどうするんだい。」

 翔は涼平の話に納得しつつ質問する。

 「大丈夫。鍵はもってるから。」

 涼平はそう言うとドアノブに手をかけた。

 ガチャ

 涼平は鍵を開け扉を開ける。

 「問題なかっただろ。」

 涼平はそう言い屋上に出る。他の者も涼平の後に続いて屋上に出る。

 「大丈夫なの?先生に見つかったら怒られない?」

 聖来は涼平に聞く。

 「見つかったら怒られるかもな。嫌なら別の場所を考えるけど。」

 「嫌じゃないよ。屋上で昼食を食べるのって、アニメみたいで憧れてたから。」

 聖来は自分の弁当箱を開ける。

 「たまにはこういうのもいいね。」

 翔も地面に座り食べる準備をする。

 「安心したよ。」

 涼平は他の誰かに屋上に来たことを咎められるかと懸念していたが杞憂に終わった。

 皆それぞれ昼食を食べ始める。

 「じゃあ、大樹からライトに自己紹介をしてもらおう。」

 涼平は大樹に伝える。

 「いいぜ。俺は山本大樹。野球部に所属している。運動が得意で勉強は苦手。まあ、よくいるスポーツ馬鹿だ。よろしく。」

 大樹は簡単に自己紹介をする。

 「よろしくね。」

 「次は翔。」

 「僕の名前は山口翔。サッカー部に所属している。趣味は読書。本が読みたいときは、オススメを紹介するよ。よろしく。」

 「よろしくね。」

 「次は聖来。」

 「私の名前は神無月聖来。テニス部に入っているわ。好きなことは恋愛話。恋愛相談にはいつでも乗るからね。よろしくね。」

 「よろしくね。」

 「最後は美影。」

 「私は八神美影。部活には所属していません。勉強が得意なので、分からないところがあったら教えますよ。」

 「よろしくね。」

 全員の自己紹介が終わった。

 「この4人は俺が高1の時からのクラスメイトで、困った時は相談に乗ってくれると思う。特に、聖来と美影は同性だから話しやすいだろう。」

 涼平は最後にまとめる。

 「うん。これからよろしくね。」

 ライトは再び皆に向けて挨拶をする。

 「そう言えば、ライトちゃんは自己紹介で名前しか言わなかったよな。もう一回、詳しく自己紹介頼むわ。」

 大樹がお願いする。

 「そうだな。皆にもライトのことを少しは知ってもらった方がいいな。」

 涼平も頷く。

 「うん。分かった。私の名前は神谷ライト。趣味は涼平の家にあるゲームや漫画かな。えーっとあとは・・・。」

 自己紹介をしたことが無いライトは言葉に詰まる。

 「じゃあ、皆からライトに質問する形にしよう。」

 涼平はライトの様子を見て提案する。

 「はいはーい。ライトちゃんの好きなタイプは?」

 恋愛話が好きな聖来が質問する。

 「好きなタイプか。えーっと、優しくて頼りになる人かな。」

 ライトは答える。

 「じゃあ私からも一つ。涼平さんと一つ屋根の下で暮らしているわけですが、涼平さんとの間に何か問題はありませんか。」

 美影が質問する。

 「問題?特にないと思うけど。」

 ライトは心当たりが無かった。

 「本当ですか。例えば、お風呂覗かれたりとか、寝込みを襲われるとか。」

 「おい美影。俺はそんなことしないぞ。」

 美影の質問に涼平が口をはさむ。

 「うーん。涼平はそんなことしてないと思うよ。」

 「そうですか。」

 美影は少しがっかりする。

 「八神さんの考えは行き過ぎだけど、二人の同居生活は少し気になるかな。」

 翔も質問をする。

 「そうね~。別にみんなが期待するようなことはないよ。私はずっとゲームしたり、漫画読んでる間に、涼平がご飯作ってくれたり、お風呂の用意してくれたりしてくれるの。たまに一緒にゲームしたりするけど、基本涼平は自分の部屋に篭って何かしてることが多いよ。」

 ライトは涼平との生活を思い出しながら話す。

 「なんだそれ。せっかく同居してるんだから、もっと仲良くしたらどうだ。」

 大樹がライトの話を聞いて、涼平に向けて話す。

 「ほら、ライトにもプライベートな時間が必要だろ。ライトとは食事の時にコミュニケーションをとってるし、たまに一緒に遊んだりする程度で十分だろ。」

 「えー。私はもっと涼平と仲良くなりたいんだけど。」

 涼平の言葉にライトが意見する。 

 「まあ、そうだな。今後は2人の時間をもっと増やすか。」

 涼平としては、ライトと仲良くすることは全然ありだ。涼平は1年以上も一人暮らしをしていて、家での寂しさは少し感じていた。余りライトに干渉しすぎると、嫌がるかと思って避けていた。

 「二人の時間って黒井君響きがエロいよ。」

 聖来がつっこむ。

 「気を付けろよ、ライトちゃん。涼平は大人しそうに見えて、エロいことは大好きだからな。」

 大樹が追撃する。

 「大丈夫だと思うよ。涼平はとても強いから、私なんかすぐに襲えちゃうけど、今まで何もなかったから。」

 ライトは大樹の話に真面目に返答する。

 その後も話が弾んだ。昼休みが終わるころには、ライトも仲良くなれたと思う。

 午後の授業も何事も無く進み放課後になった。


 「さて、帰るか。」

 涼平は鞄を持ち立ち上がる。

 「待ってよ。」

 ライトは急いで荷物を鞄の中に入れる。

 「心配すんな。俺が一人で帰ったら、ライトがわざわざ学校に転校してきた意味ないだろ。待ってるから早く用意を済ませろ。」

 涼平はライトの準備が終わるのを待った。

 涼平とライトは話をしながら、玄関で靴を履き替え外に出た。

 「それでね・・・。」

 「神谷ライトさん。少し待っていただきたい。」

 ライトとの会話を遮り一人の男が話しかけてきた。

 「えーっと誰?」

 ライトは首をかしげる。

 「俺は池隼人。3年生だ。」

 池は自己紹介をする。

 「あれって池先輩だよ。」

 「ほんとだ。今日もかっこいいね。」

 玄関近くにいた女子生徒が話す。

 (池先輩か。そういえば、学校で一番イケメンだとか言われてたっけ。)

 涼平はおぼろげな記憶を呼び起こす。

 「何かあるのか。」

 「あれ、池先輩と美少女転校生だぞ。」

 生徒たちが生徒玄関に集まる。学校で有名な池先輩と今話題の美少女転校生の対峙。何が起こるのか気になったのか、いつの間にか100人以上の生徒がいた。

 「池さんだっけ。何か用があるのかな。私は早く家に帰ってゲームしたいんだけど。」

 「そうだね。単刀直入に言おう。神谷ライトさん。僕と付き合ってほしい。」

 池先輩はライトに告白する。

 「・・・付き合うって恋人になるってことだよね。それは無理かな。」

 ライトはあっさり断る。

 「どうしてだい。」

 池先輩はショックを受ける。

 「どうしてって私あなたのこと知らないし。」

 ライトは池がショックを受けていることに疑問を持つ。

 「それは付き合った後で知ればいいさ。」

 「まあそうなんだけど。でも、何も知らないのに付き合うとなると、その人の見た目とかで判断するってことでしょ。私あなたの見た目が好みってわけではないし。そもそも、初めて会った私に告白するってことは、あなたは私の見た目が好みだったからでしょ。私は見た目で選ぶ人は好きじゃないかな。」

 ライトは淡々と思ったことを口にする。

 「うっうっう。」

 ライトの言葉に池は崩れ落ちる。

 「話は終わり?なら帰るね。」

 ライトは歩き始めた。

 (容赦ねぇなぁ。)

 ライトの返答を聞いた涼平は、もっとやんわり断ればいいのにと思った。しかし、ライトはまだ人間の感情を勉強途中なので、あのような返答になるのもしょうがなかった。

 

 これは余談だが、ライトはその素晴らしいルックスから多くの男子生徒の心を奪った。そして、彼女に告白したいと多くの男子生徒が思った。しかし、池先輩の一件でライトに告白することは断念された。今告白しても玉砕することが目に見えているからだ。

 

 


 

 

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