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四 魔界

 「まだ犯人は見つからんのか。」

 一人の男性は激高する。

 「まあ、落ち着いてください。現在調査中ですから。」

 激高している男性の隣の男性がなだめる。

 「では、会議に戻ろう。」

 長髪の男が言った。

 ここは魔界のにあるモーデン帝国。そのモーデン帝国にある大きな城の中の大きな部屋に、数十人の悪魔が集まっている。この場所は人間界で言うところの国会であり、帝国の様々なことに関して議論する場である。現在モーデン帝国では二つの大きな問題に直面している。一つは戦争の件だ。モーデン帝国では、隣国であるマクア王国と戦争中なのである。モーデン帝国は、マクア王国に第一防衛線を突破され形勢が不利なのである。もう一つは国宝の件だ。国宝が先日、金髪の謎の少女に盗まれたのだ。その少女は追跡していた兵士の前から突然消え去った後、誰も彼女を目撃した者はいないのだ。

 「今、我が帝国の中で重要な問題は戦争の件と国宝の件の二つだが、より問題なのは国宝の件だ。本日はこの件について議論を行う。」

 先ほどの長髪の男が本日の議題を挙げた。

 「そうだ。今は何よりもあおの国宝が大事だ。戦況が不利な中あの国宝が無いと、この国が占領される可能性が高くなる。」

 先ほど激高していた男が声を荒げる。

 金髪の謎の少女つまり、ライトが盗んだ国宝には秘密があった。その国宝の秘密は、帝国に設置された巨大魔方陣を起動するために必要なのである。その魔方陣が起動すると、帝国の城を中心に半径100キロの巨大な範囲にを魔力の障壁で守り、外部からの侵入を防ぐことができるのだ。この障壁の詳細は省くが、起動すれば約1か月は持続する。その1か月の間に軍を再編成して立て直す等の準備をすることができるのだ。

 「そうだ。マクア王国の戦力がここ数年の間に補強され、どんどん防衛ラインが下がっている。こちらが戦力を補強できない状況にあるのだから、巻き返すのは難しいだろう。切り札である障壁を使うことは常に考慮しなければならない。それなのに国宝が無ければ、起動するか否かの選択すらできないだろ。」

 別の男が激高した男に賛同した。

 「それは理解している。現在調査中であり、戦争に人員を割いていることから、これ以上調査に人員を割くことは難しい。」

 長髪の男が言う。

 「なら、どうするんだ。」

 「・・・。」

 一人の男の質問に会議室は静まり返る。その後も会議は進まず、時間だけが過ぎていった。

 会議が始まって1時間ほどが過ぎたころだろうか。突然会議室の扉が開く。

 「国宝を盗んだ犯人の所在が分かりました。」

 そう言いながら一人の少女が入ってくる。

 「何だと。」

 「本当か。」

 少女の一言に会議室が騒がしくなる。

 「静かにしろ。」

 長髪の男が怒号する。彼の一言に会議室が静まり返る。

 「それでミカ。盗人の居場所が分かったというのは本当か。」

 長髪の男が改めて少女に問う。

 「ええ。私の独自の調査で彼女は人間界にいることが分かりました。」

 「人間界?」

 「どこだ。」

 彼女の一言に再び会議室が騒がしくなる。

 「・・・はぁ。」

 長髪の男は、再び騒ぎ立つ様子を見てため息をつく。

 (冷静に話すことができないのか。)

 長髪の男は頭を抱えながら、会議室が静かになるのを待った。

 「それで、人間界とはどこにあるのだ。」

 長髪の男は会議室が静まり返った後に質問する。

 「人間界とはこの魔界とは別の世界のことです。」

 少女は人間界と魔界の説明を始めた。

 説明の内容は人間界という世界の軽い知識、主に文明や生態系についてだった。少女は用意してきた写真を見せ、魔界との違いを説明した。魔界の建物は、人間界で例えるところの中世ヨーロッパに近い感じである。つまり、人間界の建物の写真を見せるだけで魔界とは別の世界があることは証明できる。しかし、建物以外の説明もすることでより説得力が増すと少女は考え、人間界での乗り物や娯楽の違いも説明した。魔界での乗り物は魔界に生息する魔獣を使役して、人間界で言うところの馬車と同じように使われている。魔界の娯楽は、本や劇のような古典的なものばかりで、人間界にあるゲームやテーマパークのようなものは存在しない。

 少女の説明に会議室にいた人々は驚いた。しかし、写真によって記録されている点から、人間界が実在すると結論に至った。そして、盗人が人間界にいる写真を見せ、盗人が人間界にいることを示した。

 「それで、どうやってその人間界に行くのだ?」

 長髪の男はミカに聞いた。

 「私が魔界と人間界を繋ぐ魔法を使えます。しかし、大人数を連れていくことはできませんので、三人程人間界に派遣できる悪魔を選別してください。」

 ミカの一言で会議の議題が誰を人間界に派遣するかに変更された。

 ミカの情報によると、人間は悪魔と比べて身体能力が高くないらしい。モーデン帝国は戦争中であり、国宝が必要といってもあくまで最終手段であることと、現在帝国の戦力は最前線で戦っていることから、強い悪魔は派遣できないという結論に至った。

 「では、派遣する悪魔が到着次第人間界に送ります。」

 少女はそう言うと会議室を後にした。


 場所は変わり人間界。ライトが涼平の家に来て約一週間はたった。涼平はいつの間にかライトと生活する非日常になれ始めていた。ライトはこの一週間、家に篭ってずっとゲームをしていた。

 「ライト、朝食ができたぞ。」

 リビングのソファに座ってゲームをしているライトに呼びかける。

 「分かったー。」

 ライトは遊んでいたゲームを中断して、ダイニングの席につく。

 涼平も料理を運び終えた後、テレビの電源を入れニュー合う番組にチャンネルを変えてから席につく。

 「今日は土曜日でしょ。どこかに遊びに行きたいな。」

 ライトは涼平に提案する。

 「いいぞ。ちょうど見たい映画があって、この前行ったショッピングモールに行こうと思っていたんだ。」

 「何の映画?」

 「名探偵シャーロットだよ。この前、俺がテレビで見てたやつだよ。」

 涼平が見る映画の説明をする。

 「「真実はいつの間にか一つに。」って決め台詞を言うアニメだね。」

 ライトはアニメの内容を思い出す。

 「ああ。名探偵シャーロットの映画はオリジナルストーリーだから、登場人物さえ知っていればライトでも楽しめるぞ。」

 「そうだね。私も映画見るよ。映画館、楽しみだなー。」

 ライトは心をときめかせる。

 「そうだな。」

 涼平は頷く。

 「続いてのニュースです。本日早朝、男女3名の惨殺死体が発見されました。被害者の3名は同じ会社に勤めており、死体が何度も切り刻まれていることから、警察は怨恨の線で捜査を進めているとのことです。」

 涼平とライトの会話が一通り終わり静かになった時に、テレビから物騒なニュースが聞こえてきた。

 「何か怖い事件だね。」

 ライトがニュースの感想を言う。

 「そうだな、日本はこんなに平和なのに殺人が起きるんだからな。」

 涼平ニュースをみて切なく思った。

 「もし私が殺人犯に襲われそうになったら、涼平は助けてくれる?」 

 ライトは冗談めいて言った。 

 「もちろん、助けるよ。」

 涼平はそんなことは有り得ないけど、ライトの前でカッコつけるために言った。

 「期待してるね。」

 ライトは笑みを浮かべた。

 朝食後、涼平たちは出かける準備をした。10時から上映開始であり、現在の時刻は8時で準備をするには少し早いが、ライトの初めての映画館ということで、早めに行くことにしたのだ。

 映画館に着くと早速販売機で、本日のチケットを購入することにした。

 「学生1枚と・・・。」

 涼平はライトをどうするべきか悩み、ライトの方をチラっと見る。

 「私も学生でいいよ。見た目は学生と変わらないと思うし。」

 「そうだな。」

 ライトの見た目は学生と言っても問題ないし、この映画館は学生証の確認をしないから大丈夫だろう。

 涼平は学生2枚を選択し次の画面に移る。

 「次は座席の位置か。ライトはどこらへんから見たい?」

 ライトに質問する。

 「そうね~。真ん中後ろの方がいいかな。」

 ライトは画面を見ながら答えた。

 「了解。」

 涼平は座席を選択し、お金を支払いチケットを入手した。

 「次は・・・先にグッズでも見るか。」

 涼平はスマホで時間を確認し、食べ物を買うには早いと考えた。

 「何か買っていいの?」

 ライトはグッズを眺めながら聞いた。

 「いいぞ。」

 涼平は返事をした。

 5分ほどグッズ見た後、購入する商品を決めた。

 「ライトは決めたか?」

 「うん。これとこれにする。」

 ライトはスマホケースとスマホスタンドを手に取っていた。

 「そう言えば、スマホは買ったけどケースとか買ってなかったもんな。」

 涼平はライトから商品を受け取りレジに向かう。会計を済ませ、スマホケースをライトに渡す。ライトは早速自分のスマホにケースを取り付けた。

 「よし、次は食べ物だな。」

 涼平とライトはポップコーンとジュースを購入した。それから少しして、アナウンスで涼平たちの見る映画の入場可能の知らせが伝えられた。

 涼平たちはチケットを見せ、スクリーンの中に入り、自分の座席に座った。

 「楽しみだね。」

 ライトは初めての映画にワクワクしているようだ。

 「そうだな。」

 涼平もライト程ではないがワクワクしている。やはり、映画館で見る映画はテレビで見るのとは迫力が違う。

 しばらくすると、辺りが暗くなりいよいよ映画が始まる。

 映画の内容は、日本で開催される国際会議。その会議の開催1週間前に、会議を中止しないと会議場を爆破するという犯行予告があった。会議が開催されるまでに犯人を見つけろというものだった。

 「映画面白かったね。」

 ライトは映画の余韻に浸りながら感想を言う。

 「そうだな。やっぱり、爆弾の爆発とかは映画館で見た方が迫力あるよな。」

 「そうよね。ドカーンって物凄い音で、鼓膜が破れるかと思ったわ。」

 涼平とライトは映画の感想を言いながら映画館を後にした。その後、昼食を済ませショッピングモールで遊んだ。午後6時を過ぎると、夕食の準備もあるとから、自宅に帰ることにした。いつも通り、電車に乗って涼平の家の最寄り駅で降りた。そして、家に帰るまでの道を歩いていると3人の男に呼び止められた。

 「何か用でもあるのか。」

 涼平は尋ねた。

 「ああ。ただ、お前ではなく、そちらの女の方に用があるんだ。」

 3人の内の一人が言った。

 「ライトに?何の用だ。悪いがナンパはお断りだぞ。」

 涼平は警戒する。

 「これを見せれば、そちらの女は理解できるだろ。」

 3人の男はズボンを少しずらし、人間には決してあるはずのない尻尾を見せつけた。

 「っ!悪魔。」

 ライトは驚いた。

 「そう。俺たちは悪魔だ。要件はわかるよなぁ。盗んだ国宝返してもらおうか。」

 「駄目よ。ここで返したら盗んだ意味が無いじゃない。」

 ライトは男たちの要求を拒む。

 「それじゃあ、力ずくで奪うしかないなぁ。」

 3人の男たちは隠し持っていた剣を取り出す。

 「涼平どうしよう。」

 ライトは震えながら涼平の腕を掴む。

 「ライトは戦えるのか?」

 ライトの様子を見て答えは既に出ているが一応聞いておく。

 「無理かな。」

 ライトはどうしようもないような顔をしていた。

 「おい。そこの男。逃げるなら今の内だぜ。逃げないなら切り刻んでやるよ。昨日試したが、人間とやらは俺たち悪魔と比べると、ゴミのように弱いからなぁ。」

 「昨日?」

 涼平は今朝のニュースを思い出した。男女3人が惨殺されていたが、犯人はこの悪魔たちのようだ。おそらく、人間の強さを測るために殺したのだろう。

 「さて、どうしたものか。」

 涼平は考える。

 「そこの男、俺たちに抵抗せずに逃げた方がいいぞ。10秒待ってやる。それまでに逃げなければこぞすからな。」

 悪魔が涼平に逃げるチャンスを与える。

 「・・・。」

 涼平は考える。今、ここで戦うべきか否かを。悪魔が人間界に来た。つまり、悪魔は人間界に来る手段を入手したということだ。仮に戦闘を避け逃げたところで、いつまで逃げることができるかだ。土地勘がこちらの方に分があるとはいえ、ライトの体力や魔界から増援が来ることまで考えれば、逃げるだけこちらが不利になるだろう。やはり、ここは戦って勝利しておくべきだろう。

 「なあライト。何か武器を出せるか?できれば剣がいいけど。」

 涼平は戦う決意をした。

 「涼平、戦う気なの。無茶だよ。悪魔は人間の何倍も身体能力が高いのよ。」

 ライトは涼平が戦うことを必死に止めようとした。

 「そんな御託はいいから、武器は出せるのか。」

 涼平はライトに向かって怒鳴る。

 「・・・分かった。」

 ライトは涼平に委縮して、戦うことを止めることを止めた。そして、涼平の要求通りに剣を出した。

 「これは神剣デモンスレイヤー。きっと役に立つよ。」

 ライトは涼平に少し怯えながら剣を渡す。今の涼平はいつもの優しい涼平ではないことをライトは肌で感じていた。

 「ありがとう。」

 涼平はライトから剣を受けとると、軽く素振りをして剣の感触を試す。

 「どっから剣を出しらか分からねえが、戦うってことでいいんだな。」

 涼平が剣を持ったことを見て悪魔は聞いた。

 「ああ。かかって来いよ。」

 涼平は挑発する。

 「なめんなよ。」

 一人の悪魔が涼平に向かって走ってくる。

 「ライト。離れてろ。」 

 涼平はそう言うと、敵の攻撃に備える態勢をとる。悪魔は涼平が攻撃射程範囲内に入ったところで一度止まった。

 「女のためにカッコつけるから、命を無駄に落とすことになるんだぞ。」

 「そっちこそ、死にたくないなら失せな。」

 涼平はまた挑発をする。

 「減らず口が。」

 悪魔は涼平に向かって剣を振り下ろす。涼平はそれを難なくかわし、悪魔の右脇腹に剣を突き刺す。そして、悪魔の腹を貫通してから剣を抜いた。すると、剣を突き刺した箇所から大量の血が噴き出た。

 「バ・・・カ・・・な。」

 悪魔は刺された箇所を手で押さえながら口にする。悪魔には残った気力は無く、その言葉を最後に地面に倒れた。絶命したのだ。

 「マジかよ。」

 「嘘だろ。」

 残り二人の悪魔が驚く。それも当然だ。自分たち悪魔よりも格下だと考えている人間にやられたのだ。驚かないわけがない。

 「えっ。えっ。」

 少し遅れてライトも驚く。ライトも悪魔たちと同じように涼平が勝つとは思っていなかったからだ。

 「これで俺が悪魔に勝てることが証明されたな。どうする?今なら見逃してやるぞ。」

 今度は涼平が悪魔たちに忠告する。

 「「よくもやってくれたなー。」」

 二人の悪魔は仲間がやられたことに怒り、涼平めがけて走ってくる。

 「馬鹿が。戦闘は冷静じゃないとだめだぞ。俺が悪魔を倒したことに疑問をもてよ。策もなく突っ込むのは無謀だぞ。」

 涼平は悪魔たちの行動にため息をつく。

 悪魔たちは走った勢いそのままに涼平に向かって剣を振りぬく。

 「そんな単調な攻撃が俺に効くとでも思ってるのか。」

 涼平は一人目の攻撃をかわし、二人目の攻撃を剣で受け止めた。そして、涼平はすぐさま攻撃に切り替える。剣での防御を解除し、剣を振りぬく。悪魔はすかさず剣で受け止める。涼平はまたすぐに攻撃する。涼平の剣さばきが速すぎて悪魔が後手に回る。そして、悪魔が防御が間に合わなくなり、涼平の一撃が悪魔の体を真二つに切り裂いた。

 「後はお前だけだ。」

 涼平は最後の悪魔に狙いを定める。悪魔は先ほどの剣の打ち合いを見て、剣では勝てないと判断したのか涼平と距離をとる。

 「くらえ、<ファイア>。」

 悪魔は炎魔法を唱える。野球ボールくらいの大きさの火の玉が涼平めがけて放たれる。涼平はその魔法をあっさりと剣ではじいた。

 「そんなっ。」

 悪魔は驚いた。その隙に涼平は悪魔との間合いを詰めた。

 「終わりだ。」

 涼平は剣で切り裂いた。

 ライトを狙った3人の悪魔は涼平の手によって倒されたのだ。

 「・・・噓でしょ。」

 ライトは呆然と立ち尽くした。

 「さっライト。戦いは終わったんだ。さっさと帰ろう。」

 涼平は学校から一緒に帰るくらいのノリで言った。

 「涼平。あなた何者?」

 ライトは思ったことを口にした。ライトにとって人間では悪魔には勝つことはあり得ないからである。

 「何者って、まあ悪魔に勝ったんだし気にもなるよな。けど、今はただの高校生ってことじゃダメか?」

 涼平はライトに根掘り葉掘り聞かれることを嫌がった。

 「・・・分かった。家に帰りましょう。」

 ライトは涼平の感情を察し、何も聞かないことにした。これ以上涼平に聞いても答える可能性は低いことと、涼平にしつこく聞いて関係が悪化することを避けるためだ。

 涼平とライトは家への帰り道を歩き始めた。しかし、いつものように話すことはなく、お互い無言で歩いていた。

 帰り道を歩いている中、ライトはずっと涼平について考えていた。

 (人間が悪魔を倒すなんてことはあり得ない。単純な比較にはなるけど、人間の平均身体能力を100とすると、悪魔の平均身体能力は700はある。簡単な話、人間が進むのに7秒かかる距離を悪魔は1秒で進めるのよ。まぐれでも勝てはしない。しかも、涼平はまぐれなんかではなく、実力で悪魔を倒した。そうなると結論は一つ。涼平は悪魔ってことになる。身体は人間と変わらないし、悪魔の特徴である尻尾が生えていないことが疑問ではあるけど、これが私の中で一番納得ができる答えね。)

 ライトが自分の中で結論を出したところで家に着いた。

 家の中に入り、とりあえずライトはダイニングの椅子に座った。涼平は冷蔵庫からジュースを取り出し、コップに二人分を注いてテーブルの上に置いた。

 「ありがとう。」

 ライトはジュースを手に取り飲む。

 涼平はライトの向かいの席に座った。

 「ライトが俺に思うことは色々あるだろうけど、とりあえず詮索しないでくれ。多分ライトの考えであってるとは思う。」

 涼平はライトに自分のことを詮索しないよう念押しした。

 「うっうん。」

 ライトは頷いた。ライトは涼平が自分の正体を直接明言しなかったものの、答えを言ったようなものだ。ライトにとって大事なのは涼平の正体ではなく、涼平の強さの理由の裏付けが欲しかっただけだ。なぜなら、今後も悪魔が襲ってくる可能性が高い。そういった状況の中で、涼平に戦ってもらう必要がある。先ほどの戦いで涼平がまぐれではないことは分かった。涼平が悪魔なら強い理由は分かるし、今後も悪魔に勝てる可能性が大いにある。だから、ライトが涼平に聞くことはたった一つ。

 「涼平はどれくらい強いの?今後もさっきにみたいに勝てるの?」

 ライトにとって必要なのは、涼平の強さを知ることだ。

 「ああ。俺に勝てる奴はほとんどいない。心配するな。」

 涼平はライトの不安要素を取り除く発言をする。

 「分かったわ。」

 ライトは涼平から具体的な根拠を示されたわけではないが、涼平の言葉に何故か説得力を感じた。

 「安心してもらったところで本題だ。一番の問題は悪魔が人間界に来たという点だ。」

 「そうだね。涼平の言いたいことは分かるよ。神様の誰かが悪魔に協力しているってことでしょ。」

 ライトは落ち着いて言った。先日ファミレスで涼平が神様の関与を指摘した時に、声を荒げたことに反省したからだ。

 「そうだ。どういう意図があって神様が悪魔に協力しているのかが不明だ。ライトには何か心当たりはないか?」

 「特には無いかな。悪魔に襲われて、何のメリットもないと思うけど。それに、涼平が戦ってくなければ、私は悪魔に捕まって国宝を奪われてたし。そうなれば、本来の目的である国宝を盗むことが無意味になっちゃうでしょ。」

 ライトは自分の考えを述べる。

 「確かにそうだな。俺とライトが出会わなければか・・・。そう言えば、ライトが空から落ちてきたよな。」

 涼平は何か思いついた。

 「そうだけど。」

 ライトは涼平の質問の意図が分からない。

 「確かライトは、ライトの仲間に出してもらった扉の中に入ったら空に繋がってたんだよな。」

 「そうだよ。」

 「その扉は好きな場所に繋げることができるのか?」

 「好きな場所に繋げることはできるけど条件があるの。繋げたい場所を思い浮かべるか、誰かの近くに繋げたいなら、その人物を思い浮かべる必要がある。」

 「なるほど。なら、俺のことを知っている神様がいれば、俺の近くにできるわけだ。つまり、俺とライトの出会いは偶然ではなく、必然だった可能性が出てくるわけだ。」

 「確かに。」

 ライトは涼平の考えに一考の余地があると思った。涼平は直接話してはくれないだろうが、涼平のことを知っている神様は存在するとライトは考えている。涼平を悪魔と仮定すると、涼平が人間界に来るには神様の協力が必要不可欠である。ただ、涼平がどのように神様に接触したかは不明であるが、この疑問は今考えたところで無駄であるので、ライトは考えないようにした。

 「よく考えると、ライトが空から落ちてきて無傷でいられる人間がいるはずがない。もし俺じゃなかったら、確実に怪我をしていた。いくらライトが無茶ぶりをするからと言って、自分が怪我させた相手にお願いなんてできないからな。」

 涼平は説明する。

 「そうだけど・・・。涼平は私のことを無茶苦茶な女だって思ってたのね。」

 ライトは涼平の説明よりも、涼平の自分の評価にショックを受けていた。

 「それはそうだろ。いきなり家に泊めて欲しいなんて無茶なことを言い出すんだから。それより本題だ。俺とライトが一緒に暮らすことになるのは、ライトが俺に頼んだ時点でほぼ確定だ。ライトが神様で、この世界は人間界・魔界・神界の三つに分かれているなんて、中々人間には理解できない。俺はたまたま人間界と魔界の2つの世界があることを知っていたから、ライトの話を信用できた。そして、俺にもライト正確には神様と繋がりを持つというメリットが欲しいから、ライトと一緒に住むことにした。」

 「そうだね。普通の人は私の話なんか信用しないからね。」

 ライトは涼平のメリットについて気になったが、今は追及しないことにした。

 「ああ。そして悪魔の襲撃の件だが、もし俺じゃなかったら悪魔を倒すことはできず、ライトは捕まっていた。ライトを捕まえることが目的なら、わざわざ人間界ではなく、魔界で捕まえればいい。つまり、ここまでの一連の出来事は、俺とライトを出合わせることが目的と考えられる。」

 涼平は一つの結論を出した。

 「私と涼平の出会いが目的なら、こんな回りくどいことをする必要ないと思うけど。それに私と涼平が出会って、計画立案者にとってのメリットは何なのかな?」

 ライトは涼平の結論に疑問を持った。

 「確かにそうだよな。これ以上考えても無駄だな。とりあえず、今後悪魔が襲ってきても俺が守ってやる。俺が学校に行っている時に何かあったら電話をくれ。すぐに駆け付けるから。」

 涼平は言った。 

 「うん。ありがとう。」

 ライトは涼平に感謝を告げた。

 

 

 


 

 

 

 

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