番外編 ミカゲ~ 闇夜に舞う少女~
「私はどうすればよいのでしょうか。」
ミカゲは一人物思いにふける。自分のマスターであるミヤが別の世界の存在を知り、その世界を自分の物にしようと考えた。別の世界には自分たちと同じように、世界を管理する神様が存在した。その神様との激しい戦闘の末、ミヤは負けてしまったのだ。ミカゲ自身は何とか戦闘から逃げ出すことが出来た。別の世界の神様であるシンラに戦闘不能になるほどのダメージを受けて戦場に倒れていたが、シンラがミヤと一騎打ちをしている間に隙を見て自分の世界に戻ってきた。あそこにいても自分は役に立たないし、マスターの戦闘の邪魔になると考えたからだ。
戦闘から離脱したことは良いが、マスターが一向に帰ってこない。別の世界に行ってからもう一月は経った。いくら神様同士の戦闘とはいえ、そんなに長期間続くこともないだろう。考えられる結論はたった一つ。マスターであるミヤはシンラとの戦いに敗れたということだ。
つまり、ミカゲの元にもうマスターはいない。これまでのミカゲはマスターの人形だった。マスターの言うことに従っているだけ。それ以外のことは何もしてこなかった。しかし、これからは違う。もう自分に指示をしてくれるマスターはいない。自分で考えて行動しなければならないのだ。
ミカゲは考えた末に自分のマスターの存在を魔界に言い伝えることにした。内容はマスターが魔界に悪魔という生命を作り出したから、シンラに敗れるまで。噓偽りない内容かつ、マスターの雄姿を強調するものとした。これから先、一生後世に伝えていくのだから美談の方がいい。
神様であり時間に制限のないミカゲはたくさんの時間をかけて、一つの神話を作った。そして、神話の証としてマスターの愛剣である邪神剣ラグナロクを顕現させた。邪神剣ラグナロクの所有権はミカゲも持っており、マスターがいない今顕現させても特に問題はない。神様の武器は悪魔の武器とは違い、必ずしも形あるものではない。武器が必要な際に応じて顕現させることが可能であり、悪魔の武器のように常に持ち運ぶ必要がない。ただ、今回は神話の証ということなので、常に顕現させておく必要がある。ミカゲは邪神剣ラグナロクの設定を変更し、悪魔の武器と遜色のないようにした。
ミカゲはこの話を邪神剣ラグナロクと共にある一つの悪魔の集落に伝えた。その後、その話は商人や伝道師を通じて魔界全域に広まっていった。
「やりたいことはやりましたし、これから何をしましょうか。」
神話を伝えるという一つの目的を終えたミカゲは再び悩みの舞台に立たされた。次にやることがない。ミカゲはマスターが普段何をしていたのかを思い出す。マスターは悪魔に魔法を教えたり、戦闘の技術を叩きこんだりと、悪魔の発展に尽力してきた。
「マスターと同じことをすべきなのでしょうか。いえ、それではダメです。」
マスターと同じことをする。それではミカゲは以前と変わらない。これからは自分で行動する必要がある。いつまでもマスターに囚われていてはいけない。それに、マスターがあらかた悪魔に教え込んでしまっているので、これ以上教えることも特にはない。
「しばらくは傍観者でいましょうか。」
ミカゲが神話を考えていた間、悪魔たちの生活を見ていたが、悪魔はミヤが教えた基礎を元に独自の発展を少しずつ遂げている。ミカゲが変に干渉するよりも、悪魔たちが知恵を使っていく方が良いと考えた。ミカゲも悪魔も同じ。ミヤという存在がいなくなって新たな変化が必要なのだ。
ミカゲは変わりゆく魔界を一人で眺めていた。生活の基盤が変わったり、色々な魔法が研究される等、どんどん発展していく魔界を見ることは面白く、興味深かった。悪魔の数だけ考え方がある。ミカゲにも思いつかないようなことが次々生まれることに対するワクワク感が異常だった。ミカゲも悪魔が考えた魔法で興味のあったものは習得する等、日々の生活を満喫していた。
そんなある日転機が訪れる。シンラが魔界に干渉し始めたのだ。今までも、シンラはマイを魔界に派遣しては、魔界の文化や実態を調査していたが、傍観者という立場はミカゲと変わらなかった。しかし、シンラはマクア王国の国王であるゼルアと協力して魔界で戦争を起こそうと企てていることを知った。
「魔界で戦争をする。・・・別におかしくはない話ではありますが。」
今までも魔界では度々戦争はあったし、戦争に勝利することで得られる利益というのも確かにある。だから、悪魔が自発的に戦争を起こすことには何も違和感は感じなかった。しかし、シンラが関わってくるとなると何か戦争をすることに裏があるはずだ。ミカゲは独自に調査をすることにした。ミカゲではシンラに勝てないので、シンラにバレることなく隠密行動で行った。
「なるほど。そういうことですか。」
ミカゲは時間をかけて慎重に、そして念入りに調査をした。その結果、色々な事実が見えてきた。まず、神様の力の源である神力のことだ。ミカゲも神であるので、その使い方や想いの強さによって力に変化が生じることは知っていた。しかし、マスターの操り人形であったミカゲにとってどういう想いが強いとかは分かっていなかった。それをシンラは恋愛が一番強い想いであると結論づけていた。自身とマイの二人で試した結果だ。ミカゲは恋愛をしたことがないので、実感はわかないが、悪魔を見ていても恋愛が一つの幸せの形であることは理解していた。ただ、それが想いにおいて最上位なのかはミカゲには判断がつかなかった。でも、シンラはそう結論づけてことに運んでいることは間違いない。
次にマスターのことだ。どうやら、シンラはマスターを戦闘の中で殺すことが出来ず、マスターを封印するという形で幕を閉じたらしい。そして、シンラの行動から推察するにマスターの封印は時期は分からないがいずれ解けるのだろう。
最後にライトという神様の存在。シンラの計画の切り札。今は神界にいるらしいが、いずれ魔界に来てシンラが決めた相手と恋愛をさせられるのだろう。
「私はどうするべきでしょうか。」
ミカゲは自分がどうするべきかを考える。シンラが魔界で起こそうとしている戦争を止める。これは難しい。ミカゲにとって悪魔が何人相手になろうとも負けることはない。悪魔の総数を減らしていき、物理的に戦争をできなくさせるという状況は作りだすことはできる。ただ、この作戦を決行するにはミカゲには二つの障害がある。
一つ目はシンラの存在だ。悪魔が大量に殺されていく。そんなことができる者をシンラが見過ごすはずがない。男ならライトの恋人相手にできる可能性があるからだ。そうなると、自分の存在がシンラにバレかねない。それは避けたいところだ。もう一つはミカゲが悪魔に愛着があるところだ。ミカゲはこれまでずっと魔界の様子を見てきた。悪魔が頑張っている姿、苦悩している姿、色々な姿を目にしてきた。そんな悪魔を自分が手にかけるということはできないのだ。
次に考えたのは神界に行き、ライトという神様を直接殺すという選択肢だ。ただ、これも現実的ではない。ライトの力は未知数であり、今の自分で勝てるかも判断できないし、ライトに何かあればシンラが駆けつけないわけがない。シンラと直接相まみえれば今度こそ殺されるだろう。
色々考えたが、中々いい作戦が思いつかない。ミカゲはシンラの動きから見て、まだ時間があることが分かったのでゆっくり考えることにした。
月日はどんどん過ぎていき、百年、千年と年月が流れていく。ここでミカゲはあることに気づいた。シンラのお眼鏡にかなう悪魔というのが一向に現れないことだ。シンラの求める相手というのが高いというのもあるが。ただ、恋愛をするにおいて若さというのは非常に重要なファクターだ。ライトの好みは分からないが、若い方がいいというのが大多数であることは間違いない。それに、シンラの計画では男側もライトに恋をさせたいらしい。そうなると、既婚者や恋人がいる男というのも除外されてしまう。不倫や浮気による恋愛と言うのは、いざこざが残ってしまうので避けたいだろう。やはり、純愛が一番。恋愛を経験したことがないミカゲでもそこは分かる。
ここでミカゲが考えたのはシンラのお眼鏡にかなう悪魔を自分で作り上げようということだ。若さ、強さの二つを兼ね備えた悪魔を。シンラもおそらくこの作戦自体は思いついているだろう。ただ、シンラがこの作戦を実行しない、正確には実行できない理由がある。それはシンラが人間界の神様であるからだ。人間界の神様であるシンラは、人間界のありとあらゆることに干渉できる。例えば、人間界に新たな生命体を作りだしたり、超人を作ったりすることだって可能だ。ただ、魔界ではそうはいかない。魔界の管理者邪神であるミヤとミカゲの二人。ミヤがいない今、ミカゲしかいない。つまり、この作戦を実行できるのは自分だけだ。
ミカゲはこの作戦を実行するために自分の力、神力について色々と調べることにした。特に神様を作るということを重点的に。とりあえず神様を一人作ってみた。神様を作る際は、自分の力の一部を分け与えることで作れる。神様を作れば作るほど自身の力が落ちていくことが判明した。次に、自分が作った神様に色々と命令してみた。自分の力を分け与えているだけあって、基本は忠実に従う。ただ、作った神様にも自我があるので、自害しろとかやりたくない命令に対しては拒否できるみたいだ。さらに、自分が作った神様の心の中をのぞくことができることも知った。これは朗報だった。上手いこと自分の作った神様をライトの恋人にすることが出来れば、情報を逐一入手することが出来るようになるからだ。最後に自分が作った神様を殺してみた。当然抵抗はされたが、弱いのですぐに殺すことはできた。その結果、作った神様に分け与えていた自分の力は、自分の元へと戻ってきた。
色々と試行錯誤を繰り替えし、神様の作り方をどんどん学んでいった。強さの調整や容姿、性格。ありとあらゆる神様を作るまでに成長した。そして、ここから本題だ。悪魔の子どもに神の力を与える。おそらく、シンラは強い悪魔が現れたら身辺調査は欠かさないだろう。その時に素性が明らかでない相手を交際相手にするだろうか?しないだろう。だから、悪魔に産んでもらう必要がある。ミカゲは適当な相手を探した。そして、見つけたのが涼平の家庭だったというわけだ。
リィトの家庭は以前は由緒ある貴族だったが、跡継ぎに強い悪魔が生まれず年々衰退していき、栄光は過去のものとなっていった。ただ、貴族であることに変わりなく、プライドだけはいっちょ前にある。そんな家庭に強い子どもができたら、親は死に物狂いで栄光を取り戻そうとするだろう。そして、世間の目。没落した貴族から最強の悪魔が生まれたら、異端な存在として忌み嫌うことも容易に想像できる。
なぜ、そんな状況の家庭を選んだかというと、ライトと出会う前に恋人や婚約者を作って欲しくなかったからだ。由緒ある家庭で最強の悪魔が誕生したら、異性にモテることは言うまでもない。それに由緒ある貴族の家庭だと、生まれてすぐに両親が結婚相手を決めるなんて話も実際にある。そんなことになることを防ぐためだ。もちろん、ミカゲが裏工作して阻止できなくもないが、なるべく干渉したくない。ミカゲが動けば動くほど、シンラに存在がバレる可能性が高まるからだ。
そういうわけで、ミカゲは後にリィトとして生まれてくる悪魔兼神様の作成に臨んだ。作成するタイミングは妊娠して二か月ほど経った時。妊娠二か月と言えば、心臓や脳、手足を形成する時期だ。ここで、神力を赤子に与え、神力に耐えられる身体にようにいじり、脳も神力を問題なく使えるくらいに高性能にしておく。容姿はミカゲの好みの顔にし、性格は何もいじらなかった。ミカゲの作業はこれでお終い。後はリィトが誕生することを待つだけ。
リィトが誕生してからは、ミカゲの予想通りに物事が進んでいった。自分の子どもに才能があるとしった両親からの英才教育。英才教育と言えば聞こえはいいが、子どものためではなく、自分たちが貴族としての地位を取り戻すための利己的な理由。そこに愛情なんてものは存在しない。学校でも同じ。同級生はもちろん、上級生や下級生からも疎まれて孤独な存在だった。ミカゲの計画通り、リィトに魔界は辛いという感情を与えることができた。これで後はシンラが全てのことを進めてくれる。
シンラはミカゲ仕組んだ存在とは知らず、自分のお眼鏡にかなう相手としてリィトを選び、自身の計画を予定通り進行していく。
ミカゲはもちろん、シンラの計画の内容についてもできる限り調査していた。全部を知ることはできなかったが、ライトを人間界で恋させるために、選んだ相手を人間界で生活させるという情報は得ていた。だから、色々と考えてリィトに魔界を嫌いになるように仕組んだわけだ。全てはシンラの計画が順調に進んでいくために。
なぜ、ミカゲが敵であるシンラの計画が順調に進むように暗躍しているのか?その理由は、ライトをおびき出すためである。現在ライトは神界で過ごしている。神界はミカゲにとって敵地。敵地での戦闘は出来れば避けたいところ。それに、現状ミカゲはライトのことは、名前とシンラの計画の切り札ということしか知らない。明らかな情報不足だ。敵の戦力をしっかりと把握していれば、マスターはシンラに敗れることはなかった。過去の反省を活かし、ミカゲはリスクのある行動をとらないと心に決めていた。だから、ライトが人間界に来た時に、直接この目で見て今後の計画について判断することにした。
シンラはリィト黒井涼平という名を与えに人間界での生活のいろはを教えることで、人間界での生活の楽しさを存分に伝えた。ミカゲは涼平の心の中を逐一読んで、シンラの動向をうかがっていた。その中で涼平が私立神命学園を受験することを知る。ミカゲはチャンスだと考え、同じ学校に入学し涼平と仲良くなることにした。そのためにまず、自分の戸籍を作ることにした。名前は八神美影。シンラ側の神様は全員で7柱みたいなので、自分が8柱目の神様だと意味を込めてそう自分を呼ぶことにした。
ここからは美影も本気で勉強に取り組むことになった。人間界の情報はシンラが人間界で恋愛させると知った時に調査したが、受験勉強まではしていない。美影は持てる時間をフルに活かして勉学に励んだ。もちろん、シンラの動向を探りながら。
そのまま月日は流れ、涼平、美影共に私立神命学園に入学した。クラスは同じになるように細工をした。流石にシンラもクラスメイトのことまでは調べないと考えていたのと、涼平と仲良くなるにはクラスメイトになることが一番だ。多少リスクがあったとしても、ここは動くべき美影はそう判断した。
無事涼平とクラスメイトになれた美影に訪れる次の問題は、どうやって涼平と仲良くなるかだ。美影はマスターがいなくなってから、ずっと孤独だった。そもそも、コミュニケーションの取り方と言うのをいまいち知らない。いきなり大胆に行くべきなのか、少し待って様子を見るべきなのか。涼平の心が読めるとは言え、難しい内容だった。涼平自身も人間界での生活や、友達とのコミュニケーションにそこまで慣れていない。中学校に転入した際も、転入生という珍しい存在だったから、向こうから話しかけてくれたことがキッカケで友達になれたに過ぎない。涼平の中学校で仲良かった友達は皆、別の高校に進学してしまったので、高校に涼平の知り合いはいない状況だった。(同じ中学校出身の生徒はいたが、涼平とは関わったことがない。)
美影はとりあえず、涼平との関係は仲の良い女友達くらいに留めようと考えた。理由は涼平が誰かと付き合うにはまだ時期尚早だからだ。シンラの計画ではライトが涼平に恋をさせることが目的である。恋人がいる相手にライトが恋をする保障がない。もちろん、世の中には浮気とか不倫とかもあるくらいなので、おかしな話ではないが、そんな恋で神力を最大限引き出せるかは疑問だ。もし、涼平に恋人ができてしまえば、ライトの恋人相手を涼平から別の人物に変えてしまう可能性がある。ただ、千年以上かけて見つけた相手をみすみす手放すとは思えないが。可能性がゼロでない以上、避けなければならない。シンラの計画を予定通り進行させるのが美影の目的なのだから。美影は涼平とそれなりの関係を築きつつ、ライトが人間界に来ることを待った。
二年生になり、いよいよ目当ての相手ライトが人間界で涼平と出会った。
「ここから本番ですね。」
涼平の心を読んでライトが人間界に来たことを美影は知る。ここからはいくつかのパターンを想定して計画を立ててはいるが、どうなるか美影にも想像がつかない。臨機応変に対応する必要がある。
美影は涼平とライトのファミレスの話を涼平の心を通じて聞いていた。
「涼平さんのライトさんへの第一印象はすごくいいですね。」
涼平はライトの容姿にメロメロなことが分かった。金髪巨乳。涼平が人間界に来てハマったアニメやゲームでの好きなキャラのタイプとライトの見た目がそっくりだったことも要因の一つだろう。シンラがそこまで狙っていたとは思わないが、概ねライトの容姿は一般受けしやすいようにしたと考えられる。それに性格面でも涼平はライトのことを好きな節がある。涼平が人間界での孤独感というのがあったとはいえ、初対面の女の子を家に泊めるなんて気を許さないと出来ない。もちろん、体目的とか別の理由があったら可能性はあるが、涼平の心の中からそのようなことを考えてはいなかった。
「これはまずいかもしれません。」
美影の想定している計画の一つであった、涼平と美影が付き合ってライトが立ち入る隙など無い作戦が頓挫したことはほぼ確定となった。初日から作戦の一つを潰されてしまうと、幸先が不安である。
涼平とライトが出会った次の日、美影は涼平と一緒に下校して涼平がライトのことをどう思っているか心の中を探ったが、特に新たに得た情報はなかった。
次にライトの情報を得ることが出来たのは、初めて悪魔が涼平たちと対峙した時だ。ここから、ライトは悪魔に勝てないということが分かった。ライトはポテンシャル自体は高いが、神力の使い方を完全に理解していないと美影は推察する。
「今の彼女なら殺せはしますが。」
美影はライトを殺すことについて考える。戦力面では特に何も問題はない。ただ、ライトを殺した場合、美影にとって二つ不利なことが出来てしまう。
一つは、シンラに自分の存在がバレてしまうことだ。神様を殺すには、刃物とか銃、魔法程度では殺すことはできない。神の武器を用いて殺す必要がある。そうなると、美影は自分の武器であるゴッドサイズを使わなければならない。そんなことをすれば、一発でシンラに正体がバレてしまう。
もう一つは、一つ目と関連しているのだが、ライトを殺すことでライトの持っている神力が全てシンラに還元されてしまうことだ。神様が自分の子どもを作るには自分の力を分け与える必要がある。ライトに力を渡した分、シンラは弱体化している。おそらく、美影でも勝てるくらいには。
つまり、ライトを殺してしまえば、生きていることがバレる上に、力が戻ったシンラに殺されてしまう。デメリットしかないわけだ。
「やはり、この選択もなしですね。」
美影はさらに一つ想定していた計画を捨てた。(これは神様の特性上、実行するとは思ってはいなかったが。)
悪魔の襲撃があった後、ライトが私立神命学園に転入してきた。美影としては幸運な出来事だった。美影にとってライトの存在は涼平の心の中のイメージが中心で構成されていた。ショッピングモールの時や買い物際に遠目で見ていたが、見ているだけではライトがどういう神様なのか判断できない。しかし、ライトが学校に来たことで、友達となり話す機会が出来れば、ライトと人となりを自分で判断することができる。あわよくば、ライトが涼平に恋をしないように仕向けることができるかもしれない。美影が女子会で涼平のことが好きだと言ったのも、ライトが涼平のことを好きになることを阻害するためだ。
ライトが一度神界に帰ったことで、再び孤独になった涼平に美影が寄り添うことで、涼平が自分に好意を抱くように尽力した。ただ、美影は涼平の心が読めるので、涼平がライトのことで頭がいっぱいだったことはしっていた。この作戦は何もしないよりはましだという気休め程度だ。
涼平たちが魔界に行ったときは、美影は何もしなかった。美影ができる選択と言えば、涼平が戦争で戦った相手を、戦争前に予め殺しておくことくらいだ。ただ、それはライトを殺すことと同様リスクが大きい。そして、この魔界での出来事で涼平がライトのことを好きだということを自覚した。それ以前から、好意があることを美影は知っていたが、涼平が自覚したことで完全に涼平が美影に恋をするという計画は終わった。
さらに、ライトが涼平のことを好きなことはほぼ間違いないので、二人の恋路を阻止するという類の計画は全て失敗に終わった。中間テスト、神様のお茶会、修学旅行と二人が結ばれるためのイベントを美影はただただ見ているしかなかった。
「恋愛って難しいですね。」
自分が経験したことのないことを邪魔するというのは至難の業だ。勉強で例えるなら、解き方が分からない問題を延々と解こうとあがいているようなものだ。
「それにライトさんのこと、私は好きですしね。」
美影は学校生活を送る中で、ライトに好意を持ったことは間違いない。立場を気にしないなら、ライトとは永遠の友達でいれる。そう言い切れる自信もある。
「私は邪神ですし、そうはいきませんが。」
美影はマスターが復活したら、彼女の命令に従う必要がある。もちろん、拒むこともできなくはないが、その時は自分がマスターに殺されてしまうだろう。つまり、ライトとは敵対するしか選択肢がないわけだ。
「私はここからは何もしないのがいいでしょう。」
正確にはもう何も出来ないといった方がいいだろう。後はライトとマスターのどちらが勝つか、美影自身はライトに勝って欲しいと思っていた。マスターとの生活に不満があったわけではない。ただ、マスターと自分は主従関係、ライト自分は友達関係、どちらがいいかなんて明白だ。
文化祭。シンラとの衝突があり、その現場をライトたちに見られてしまった。美影はライトとの関係はここで終わったと思ったが、ライトは美影とは友達でいたいと言ってくれた。正直に言ってめちゃくちゃ嬉しかった。ライトにとって自分がどれだけ大きな存在になれたかということを。涼平も自分がしたことを全部話しても、忌み嫌うことなく接してくる。本当に良い人たちに恵まれたものだ。
クリスマス。美影は一人で過ごしていたが、涼平とライトが二人で幸せなひと時を送っている。それだけで満足だった。
そして、最終決戦。死闘の末、ライトが勝利した。ライトはマイの反対があったものの、自分を受け入れてくれた。自分がマイに与えた精神的ダメージは大きい。許してもらえるとは思っていないし、向こうが自分のことを忌み嫌う理由も分かる。ただ、ライトが自分とマイがいがみ合うのを心苦しそうに見ていた。ライトのためにも少しでもマイとの溝を埋める必要があると思った。
現在は・・・。
「遊びに来ました。」
「待ってたよ。」
美影がライトの自宅によると、ライトが満面の笑みで出迎えてくれた。ライト、それに涼平とは今でも学校と変わらない関係を続けることが出来ている。フレアは、ライトの意向を汲み取り、本心は分からないが、表面上は仲よくしてくれる。マイ以外の他の神様も同様。彼女たちは自分がしたことを伝聞でしか知らないから、今一実感がわかないのだろう。ラナに関しては、自分のことを友達のように接してくれる。美影自身もラナは義理の娘みたいな立ち位置なので、仲良くしてくれることは嬉しい。
「どうしたの?玄関前で突っ立って。」
「いえ、少し考え事をしていただけです。」
「考え事って何?」
「友達って素晴らしいなと思いまして。」
美影は微笑んだ。
お久しぶりです。作者の凛音です。社会人生活が始まって三週間が経ちました。ようやく書けたので投稿します。ただ、時間を余り取れなかったので、雑な文章はご了承ください。
今回は番外編一弾として、美影視点の話を書きました。理由としては、本編で語れなかったところの補足をしたかったからです。後は私が単純に美影が一番好きなキャラだからというのもあります。それに美影視点の話は必要だと思っていました。本編では涼平とライトの二人が中心だったので、重要な立ち位置にいるにもかかわらず、美影のことを余り書くことが出来ませんでした。(シンラも同様。)なので、美影が裏で色々していたと言うことを伝えたかった。本編を成立させる上で、最重要だったシンラの計画。この作戦を完遂させるために、ご都合主義なところもかなりあったと思います。そのご都合主義的なところを少しでも理由付けしようと努力しました。ただ、シンラの計画を深堀していく程、計画に粗があったりとシンラの無能な部分が垣間見えるのですが、そこは内緒で。
次の予定は、各キャラの設定を書けたらと思います。私は漫画とかラノベの公式設定資料集とかを見るのが大好きなので、ひそかにそれを書くことを憧れています。投稿した際には、ぜひ見てください。
最後になりますが、この番外編を読んでくれてありがとうございました。よりこの作品に興味を持ってくれたら嬉しいです。では、また次の機会に会いましょう。




