三 新生活
ピピッピピッピピッ
目覚まし時計の音がする。今日はいつもより30分早く起きた。理由は簡単だ。ライトがいるから、普段のような適当な朝食ではなく、1品ほど普段よりも作ろうと考えたのである。
涼平は昨日と同じように洗面台でやることを終えたらリビングに向かった。
リビングではライトがゲームをしていた。
「おはよう。ライトは早起きなんだな。」
涼平はライトが昨日遅くまでゲームをしていたことを知っていたので、てっきり寝ているものだと思ったのだ。
「そうだね。神界ではいつも朝5時に起きていたから、朝5時に起きるということが体に染み付いているのだと思うわ。」
「そうなのか。」
涼平はキッチンに向かいつつ返答した。
涼平はキッチンで朝に作るメニューを考えた。
「やっぱり、朝は卵料理かな。」
食パンに乗せれる方がいいと考え、スクランブルエッグではなく、目玉焼きにすることにした。これなら、30分早く起きる必要は無かったかなと思いつつも、ライトの分も含めて2人前を作る必要があるので多少の早起きは致し方無いことだ。
「ライト。朝食ができたぞ。」
涼平はダイニングテーブルにできた料理を置く。ライトはその言葉を聞いてプレイしていたゲームを中断して椅子に座る。
「涼平って優しいね。」
「いきなりどうしたんだ。」
涼平はライトから想像外の言葉を聞いて驚いた。
「ほら、私は食事を摂取する必要が無いことは昨日伝えたでしょ。それなのに、わざわざ私の分まで料理を作ってくれるから。」
「理由は単純だ。一人でたべるよりも、ライト二人で話しながら食べる方がいいと思ったからだ。」
涼平は思ったことを言った。涼平は口にはしなかったが、ライトには色々な食べ物を食べて欲しいという気持ちもあったからだ。
「そっか。」
ライトは少し微笑みながら食パンを口にした。
食事を済ませた後、涼平はいつも通り学校に行く準備をした。
「ライト。俺は学校に行くから家で待っててくれ。」
「うん。いってらっしゃい。」
涼平はライトに見送られて家を出た。
涼平は通学路を歩く。昨日はとんでもないハプニングが起こったが、あのような出来事はそうそう起こることでもない。涼平は何事もなく学校に着いた。
涼平が教室に入ると数人の男子が涼平に詰め寄ってきた。
「おい黒井。昨日の可愛い子とは知り合いなのか?知り合いなら紹介してくれ。」
詰め寄ってきた男子の内の一人が発した。どうやら昨日の生徒の集団の中にいたみたいだ。
「知り合いじゃない。昨日、登校途中に彼女がトラブルにあっていたから助けただけだ。校門で俺を待っていたのは、そのお礼がしたかったからだった。だから、知り合いではない。」
涼平はそれっぽい理由を言った。
「そうなのか。連絡先とかは交換しなかったのか?」
「交換しなかった。」
「そっか。」
男子たちはガッカリそうに涼平のもとから離れていった。
涼平は自分の机まで歩くと、大樹が俺の机の上に、翔が俺の椅子に座っていた。
「なんだ。そんな理由だったのか。面白くねーな。」
大樹は言った。先ほどの会話を聞いていたのだろう。
「そうだ。残念だけど、大樹が期待するようなことは何も無かったぞ。」
涼平は言った。このように大樹たちから質問をされることは想定していた。だが、先ほどのように初めて同じクラスになって、まだ一度もまともに話したことがない男子たちに先に質問をされるとは涼平は思ってもいなかった。それだけライトの魅力が男子高校生を惹きつけたのだろう。だが、高校生が恋人を作りたいと考えることは何ら不自然ではないし、ライトみたいに可愛い子と仲良くなりたい気持ちがあることもしょうがないのである。
「でも、彼女と連絡先を好感しなかったことは、もったいなかったんじゃないかな。」
翔は言った。
「俺は必要ないと思った。俺じゃあ彼女のは釣り合わないだろ。それに彼女が連絡先を聞いてこないのだから脈は無いと思ったしな。」
涼平は事実を織り交ぜつつそれらしい理由を考えて返答した。
「まっそうだな。」
大樹が納得したように言った。
話がひと段落したところでチャイムが鳴った。生徒たちは席に座り、担任の先生が入ってきた。先生は軽く連絡事項を伝えると教室を出ていった。5分経つと別の教師が入ってきた。
「これからテストを始める。くれぐれもカンニングも無いように。」
教師はそう言うと問題用紙を配り始めた。
今日は実力テストであり、科目は国語・数学・英語の3教科だ。どの科目も今までに習ったことがテスト範囲であり、低い点数を取っても留年にも特に影響がないので、気楽にテストを受ける人が多い。涼平が昨日勉強していたのは単純にいい点数を取りたいからである。
3教科のテストが終わり今日の授業は終わった。テストが終わったので、各部活の活動も再開する。大樹、翔、聖来は部活動があるので、放課後一緒に帰ることはない。涼平は部活動に参加していないことと、一緒に帰るほど仲がいい人がほとんど部活動に参加しているので、基本一人で帰っている。美影も部活動に参加してはいないが、一緒に帰ることは少ない。美影は物静かな少女で、聖来以外の女子とは余り話す印象はない。だから、男子である涼平とはさら話すことは少ない。それでも少ないと言ったのはゼロではないということである。時折美影は涼平を一緒に帰ろうと誘ってくるのである。1年生の頃には、数回一緒に帰ったことがある。
今日はどうやら一緒に帰る日のようだ。今までも一緒に帰る時は美影の方から涼平のもとに行き誘っているのである。
「黒井さん。今日は一緒に帰りましょう。」
美影が言った。
「分かった。」
涼平は返事をした。涼平は美影から誘われた時は全て了承している。
涼平と美影は両者とも徒歩で通学をしている。途中までは帰る方角も同じである。二人は横並びで歩いている。
「・・・。」
「・・・。」
二人は無言である。いつも美影が一緒に帰ろうと誘う時は何かしら話したいことがあることがほとんどだ。だから、今日のように美影が何も話してこないことは珍しかった。沈黙の時間が2分経つ。涼平は沈黙に耐えられなくなり美影に話しかけることに決めた。
「今日のテストどうだった。」
「簡単でした。どの科目も春休みの課題から7割程度出題されていたので、平均点は高いのではないでしょうか?」
美影はテストの感想を述べた。
「そっか。」
涼平はテストの話題を振ったのは失敗だと思った。確かに今回のテストは、春休みの課題から出されていたと言えば出されていた。ただ、問題がそのまま出たわけではない。例えば英語では、課題と同じ長文が使われていたが、問われた内容は課題と違うし、いい加減に課題をした人には初見にも等しいだろう。それにテストが課題から出てる出てない以前に美影が頭が良いことを涼平は失念していた。
「・・・。」
涼平は返す言葉が思いつかなかった。
「昨日校門の前にいた少女は涼平さんの知り合いですか?」
一緒に帰る中で、美影が初めて話題を振ってきた。
「いや、初対面だ。昨日の登校途中にトラブルにあっていた彼女を助けただけだ。」
涼平は今朝クラスメイトに言った内容と同じことを言った。
「・・・そうですか。ところで彼女は何者ですか?」
「えっ。」
涼平は予想外の質問に驚いた。てっきり美影もクラスメイトと同じで自分と彼女との関係を問いただすものだと思っていた。
「何者とは?」
涼平は正直に言って美影の質問の意図が分からなかった。確かにライトは神様であり人間とは違うが、見た目は人間と変わらないので美影がライトの正体に疑問を持つことはできないはずだ。
「彼女の行動が黒井さんが今朝の話を聞く限り不可解だと思いまして。」
「不可解?」
涼平は疑問に思った。ライトが校門の前で涼平を待っていたことが不可解だったのだろうか。涼平には美影が不可解に思う理由が出てこなかった。
「ええ。黒井さんが彼女が校門の前で待っていたことに驚いていましたので、黒井さんが彼女をトラブルから助けてた際に、後で会う約束はしていなかったはずです。」
美影は自分の考察を話し始めた。
「そうだな。」
涼平は相槌を打つ。
「では彼女はなぜ校門の前にいたのでしょうか?黒井さんはお礼のためだと言いました。黒井さんが彼女をどんなトラブルから助けたのかは知りませんが、お礼をするくらい彼女にとっては大変な事だったのだと思います。」
美影はスラスラと話していく。
「・・・。」
涼平は無言で美影の話を聞いている。
「お礼をするくらい大変なトラブルだったなら、助けてもらった時点で後でお礼をするくらいの会話はあっていいと思います。別れてからお礼をしようと思わないでしょう。なぜなら、助けてもらった瞬間というのが一番感謝の気持ちでいっぱいになるはずだからです。そう考えると、彼女が学校に来た理由は別にあると考えることが妥当でしょう。」
「・・・。」
美影の考察は一考の余地がある。しかも、考察の結論は合っている。実際ライトはお礼に来たわけではないし、別の目的があったのも確かだ。
「そこで、私の考察通り彼女には別の目的があったとしましょう。目的の内容はともかく、なぜ黒井さんは嘘をつく必要があったか。その答えは簡単です。彼女の目的がクラスメイトには秘密にしておかなければならない内容だったからです。そうですね、例えば、黒井さんが彼女と深い仲になったとかはどうでしょうか。それなら現実的ですし、クラスメイト特に男子からは妬まれるでしょう。新クラスになったばかりで、クラスメイトから目の敵にされるのは嫌でしょうから。」
「・・・美影は考えすぎだよ。」
涼平は美影の考察はある意味的中している。ライトと深い仲になったわけではないが、クラスメイトに知られたくない内容なのは確かだ。涼平は美影の鋭さに驚いたが、顔に出さずに美影に返答した。
「そうでしょうか?」
美影は自分の考えには自信があるみたいだ。
「ああ。確かに彼女がお礼に来たことは嘘だ。けど、別に深い仲になったわけではない。本当に仲良くなったのなら、連絡先くらい交換してるよ。」
「えっ連絡先交換してなかったのですか。」
美影は驚いた。美影は連絡先のことも涼平の嘘だと思っていた。しかし、美影は今の涼平の言葉で考えは変わった。お礼に来たというこの話題の一番重要なところで嘘だと認めたのに、連絡先の交換という弱い話題で嘘をつく意味が無い。
「そうなると、彼女はある目的で学校に来ましたが、少なくとも深い仲になるようなことは起こらなかったということですか。」
「まあ、そうだな。別の目的については考えないでくれないと助かる。彼女の個人的な事情が関係してくるからな。」
涼平はこれ以上美影がこの話題について考えることを止めるように促した。正直に言って美影にこれ以上詮索されると真相にたどり着きかねない。
「そうですね。これ以上の詮索は止めておきます。それにもうお別れの時間ですので。」
「そうだな。」
いつの間にか美影と別れる地点まで歩いていた。
「では私はここで失礼します。それと最後に一つだけ。黒井さん、余り彼女と関わりを持たない方がいいですよ。」
美影はそうつぶやくと涼平と別れた。
涼平は美影と別れた自分の家まで歩いた。
「ただいま。」
「おかえり~。」
ライトはソファーに座りながらゲームをしていた。
「ずっとゲームしてたのか?」
「そうだよ。だってゲーム楽しいんだもん。」
「そうだな。」
涼平も自分が初めてゲームをした時は一日中やりこんでいた。だからライトの気持ちは分かる。
「ライト、予定通り出かけるから準備をしてくれ。」
「私は準備できてるよ。」
ライトは言った。
「分かった。俺は制服から着替えるから、少し待っててくれ。」
涼平はそう言うと自分の部屋に向かうために階段を上った。涼平は制服から私服に着替えるとリビングに下りた。
「ライト、準備ができたから行こう。」
「うん。」
涼平とライトは自宅から出て、ショッピングモールに向かった。
涼平の家から一番近いショッピングモールは、最寄り駅から3駅先にある。涼平の家から最寄り駅までの距離は徒歩で12分程度で、電車に乗っている時間は8分程度だ。駅からショッピングモールまでは直通で繋がっているおり、駅から2分程度で着くことができる。つまり、涼平の家からショッピングモールまでは30分以内に行くことができる。
涼平は電車の中で、ライトに何か食べたいものがあるかと聞いたら、ライトは「ハンバーガー。」と答えた。ショッピングモールに着いたのが1時過ぎだったこともあり、ショッピングモールに着いた後、買い物をする前に昼食をとることにした。ハンバーガー店はショッピングモールのフードコートにあるので、そこに向かった。
フードコートに着くと1時を過ぎていることと、平日であるということから、フードコートにある席はかなり空いていた。涼平はハンバーガーを売っているファストフード店の近くに席を取り、荷物を置いて店に向かった。涼平とライトはそれぞれ自分の食べたいハンバーガーを注文した。涼平はライトが前回のファミレスみたいに何を食べるかを迷うかと思っていたが、ライトは迷うことなく注文をしたので驚いた。ライトに聞いてみると、ショッピングモールに行くことが分かっていたから、涼平の部屋にあったパソコンでショッピングモール内の料理店を調べていたらしい。涼平は用意が良いなと思いつつも、冷静なって考えたらライトは涼平のパソコンを開いたのだ。
「えーっと、ライトは俺のパソコンを見たってことなんだな。」
涼平は答えが分かりきっている質問をした。
「そうだよ。」
ライトはいつも通り明るい表情で返答した。
「そっそうか。」
涼平は動揺を隠しきれなかった。なぜなら、涼平のパソコンのホーム画面は、涼平のお気に入りの美少女アニメのキャラクターだったからだ。それをライトに見られてことにショックを受けた。
(一人暮らしになってから買ったから、パスワード設定してなかったんだよな。)
涼平は後悔をした。
「どうしたの涼平?様子が変だけど。もしかしてパソコン勝手に見たらだめだった?」
ライトは涼平が動揺している様をみて疑問に思った。
「ライトはその・・・俺のパソコンを見て何とも思わなかったのか?」
「えーっと、パソコンの画面に映ってた金髪のかわいい女の子キャラのこと?それとも、ファイルにあったエッチなゲームのこと?」
「えっ。ファイルにあったゲームを開いたのか?」
涼平はライトから恐ろしい発言を聞いてさらに動揺した。
「そーだけど。もしかして開いたらいけなかったの。ごめんね。」
ライトは申し訳なさそうな顔をした。
「いや、出来れば開いて欲しくなかったけど、ダメってわけではない。だから、そんな顔をするな。それより、ゲームを見て気持ち悪いとか思わなかったのか?」
涼平はしばらく同居することになるライトとの関係が悪化することを懸念している。最悪の場合、ライトにずっと白い目で見られて、会話もしなくなるかもしれない。そんな気まずい同居生活は阻止したいところである。
「別に何とも思わなかったよ。異性に興味を持つことは当たり前だし、種の繁栄に必要な事でしょ。」
ライトは涼平がなぜ私が気持ち悪いと思うという考えに至ったのか分からなかった。
「・・・そうか。」
涼平はとりあえず一安心した。少なくとも、ライトとの関係が険悪にならずにすんだ。
そのような会話をしている間に、注文したハンバーガーができたらしく、涼平たちのレシート番号が呼ばれた。
涼平とライトはハンバーガーセットを載せたトレーを運びつつ席に向かった。席に座ると、ライトは早速ハンバーガーを食べ始めた。涼平もハンバーガーを食べながら、先ほどの会話について考えた。
(おそらく、ライトは人の心を理解できていないな。ライトとしては、種の繁栄にはエッチなことが必要だから、人間がエッチなことをすることはなんとも思わないのだろう。ライトは個人ではなく、種族という視点から物事を見ているのだろう。神様だから、一歩上の目線から見るのは当然と言えば当然だ。ライトにとっては、一人の人間の事情よりも、人間が絶滅しないことの方が重要だろうしな。それに人間界に初めて来たから、人間の気持ちが分からないこともしょうがないといえばしょうがない。しかし、今後同居していくうえで、ライトにも人の心を理解して欲しい。)
涼平はライトが人の心を理解できる方法を考えた。少なくとも、男子高校生の思春期にあたる男性の感情は知ってもらう必要がある。しかし、ライトを学校に通うわせて理解させるのは、事態が余計にややこしくなるに違いない。そうなると、漫画かな。
「なあ、ライト。」
涼平は食事を中断してライトに話かけた。
「どうしたの?」
ライトも涼平に話かけられて、食事を中断する。
「せっかく人間界に来たんだし、ライトには人間の気持ちを理解して欲しいと思って。」
「・・・。涼平、やっぱりさっきのゲームのこと気にしてる?」
ライトは涼平の言葉の意図を理解して後ろめたくなる。
「気にしてないと言えば嘘になる。ライトは神様とはいえ、性別は女性だし、女性にあのゲームを見られることはすごく恥ずかしい。」
「そうなんだ。」
ライトの声のトーンが低くなる。
「まあ、見られたものはしょうがない。それにライトが何とも思わないなら問題ない。それより、食べ終わったから、本来の目的を果たそう。」
涼平はこれ以上この話題を続けると、ライトの気持ちが下がる一方だと感じたので、話を無理やり切り替えた。
「うん。」
ライトは食べた後のゴミをまとめて、返却口に持って行った。涼平もその後を追う。
涼平とライトは携帯ショップに向かった。その理由としては、ライトと連絡手段がある方が便利だと涼平が考えたからだ。それにスマートフォンを買えば、インターネットが使えるので、ライトが自分のパソコンを見ることは無くなるだろうと涼平は考えたからだ。涼平は最新機種のスマホを購入し、初期設定等の作業を進めていく。とりあえず、スマホに涼平の連絡先を登録し、トークアプリをインストールした。これで何かあればすぐに連絡できるようになった。
携帯ショップでの用事が済み、一通りライトにスマホの使い方を教えた後、次に向かった場所は服屋だ。ライトは今着ている服しかないので、当然必要になってくる。ショッピングモールにある多くの服屋の中から、女性専門の有名な店を選んだ。その理由は、以前テレビで取り上げられたことがあるから、いい店なんだろうと涼平が思ったからだ。
「俺は外で待ってるから好きな服選んで来い。」
涼平はライトにそう言うと、ライトに財布を渡した。
「えっ。涼平は一緒に選んでくれないの?」
「当たり前だろ。女の服なんて分からないし、女性が多い場所に入りづらい。」
「・・・。分かった。」
ライトは一人で店の中に入った。ライトはフードコートでの会話を気にしていた。それが原因で、ライトは涼平と一緒に買い物をしたかったが、涼平に強く言うことができなかった。
「悪いことしたかな。」
涼平はライトの後姿から悲しいオーラが出ていることを感じていた。
一時間もするとライトは両手に買った商品の袋を持って出てきた。
「おまたせ。」
「ちゃんと買えたか?」
涼平は聞いた。
「うん。」
「なら良かった。」
その後、涼平とライトはその他に必要な物を買うためにショッピングモールを回った。ライトにとって必要な物を一通りそろえて、休憩としてベンチに座っていた。
「この後どうする?ライトは何かしたいこととかあるか?」
今の時間は午後5時過ぎ。遊んで帰る程度の時間はある。
「私ゲームセンターに行きたい。」
ライトは要望を伝える。
「いいぞ。」
涼平とライトはゲームセンターへと行った。
「何かやりたいゲームはあるのか?」
涼平はライトがゲームセンターと即答したことから、インターネットでまた情報を手に入れたのだろうと考えた。
「うん。何でも格闘ゲームの大会があるみたいなの。私それに参加しようと思って。涼平も一緒に参加しようよ。」
「格ゲーの大会か。止めた方がいいぞ。格ゲーの大会は猛者達の集まりだぞ。」
「大丈夫。大会に参加してみたいだけで、勝つことはそんなに気にしてない。というより、初めて遊ぶゲームで勝つのは難しいよ。」
「そっか。なら参加するか。」
涼平はライトと自分の二人分のエントリーを済ませた。大会開始までに少し時間があるので、ゲームセンターの近くにある座席に座った。
「涼平は格闘ゲーム得意?」
「格ゲー自体はやったことがあるけど、あの格ゲーはやったことがない。俺は基本RPGしかしないからな。」
「そう言えば、涼平の家にあるゲームのほとんどがRPGだったね。」
ライトは涼平の持っているゲームを思いだし答える。
「とりあえず今は、ネットであの格ゲーの操作方法調べてたから、それを見ておこう。本当は実際に筐体でプレーしたいところだが、大会準備のためにプレーできないからな。」
「そうだね。」
ライトも自分のスマホで操作方法を調べた。
「・・・。」
涼平はスマホを眺めながら考え事をしていた。その内容は主にライトのことだ。
(昨日聞いたライトの話からするに、神様陣営にライトは知らない何かがあるのだろう。そして、ライトと関わったこどで、自分もその何かに少しは巻き込まれる可能性があるだろう。いや、もう巻き込まれているだろう。それに対して、自分がライトもとい神様に求める対価が釣り合うのかを考えている。どちらにしても、ライトのお願いに答えた時点で釣り合うか否かに関係なく、対価を求めるしかないだろう。…じゃあ、神様陣営の何かについて考えでもするか。)
涼平が考え事をしていると、大会開始の時間になった。
大会参加者は32名で、平日の夜の大会にしては多い参加者だと涼平は感じた。学生や仕事帰りだと考えられる社会人で賑わっていた。ゲームセンター側から、大会のトーナメントが貼られた。涼平たちは自分の名前を確認にした。涼平とライトはトーナメントの別の山だった。
「これはあれだね。決勝で会おうってやつだね。」
ライトはトーナメント表を見て言った。
「そうだな」
涼平はライトに返事をする。当然、ライトが決勝まで行けるとは考えていない。
トーナメントは着々と進んでいった。ライトは当たり前ではあるが、1回戦で負けた。理由としては、単純にコマンドを打ち込む速度が遅い。ライトが攻撃する前に相手がはめ技やコンボ技を決めて、手も足も出ていなかった。涼平の方は、順調にトーナメントを勝ち進んでいった。涼平はゲーム序盤こそ相手にコンボ技を決められたりするが、それ以降は敵に大技を受けることなく逆に涼平がコンボ技を決め、逆転勝ちするパターンが多かった。そして、涼平は決勝まで進んだ。決勝戦の相手はこのゲームセンターの大会で3連覇をしている人物だった。
「あなたの戦いでは私には勝てませんよ。」
涼平に向かって対戦相手は言い放った。
「・・・。」
涼平は返事をしなかった。対戦相手の言う通りだったからだ。
決勝戦が始まると、涼平は一方的に攻撃を受け反撃する隙が無かった。結局、涼平はあっさりと敗北した。決勝戦終了後、涼平は準優勝の報酬としてお菓子の詰め合わせをもらった。
「帰ろうか。」
涼平は決勝戦を見ていたライトに声をかけた。
「そうだね。」
涼平とライトは帰り道を歩き始めた。
「涼平はどうして決勝戦であんなに一方的に負けたの?」
ライトは質問した。
「ああ。それは、俺の戦い方の問題だな。俺は相手の攻撃をわざと受けて、相手の動きを把握してから戦うんだ。つまり、相手の行動パターンが多ければ多いほど勝てない。今日は平日の午後の大会ということもあって、決勝戦で戦った相手以外は複数の行動パターンをもっていなかったり、複数の行動パターンを持っていても、自分の得意な行動パターン以外は隙が多いとか、まあ、勝てる相手だったわけだ。」
涼平は説明した。
「なるほどね。でも、どうしてそんな戦い方するの?話を聞いていると涼平の戦い方では、上手な人には一生勝てないじゃないの。」
「そうかもな。けど、これは癖みたいなものだから。」
「癖?」
「ああ。戦いには慎重に臨まないと、焦って勝負を急ぐと死に直結するからな。」
「えーっと、ゲームの話だよね。」
ライトは涼平の話に違和感を感じた。格闘ゲームで負けることを死と表現することは大げさだし、それに涼平の話し方から、涼平は本当に負けたら死に直結するような何かをしたことがあるように思えた。
「えっ。もちろんゲームの話だぞ。ほっほら、RPGだとHPが0になると死んでしまったでるだろ。その感覚で話してた。」
涼平は少し動揺していた。
「・・・。そっか。そうだよね。」
ライトは涼平が誤魔化していることは分かったが、余り深く追求しなかった。
その後、別の話題に切り替えて話をしながら家に帰った。




