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二十九 七人目の神様マイ

 夏祭りの翌日、涼平たちはアランから連絡があったとおり魔界へと向かった。扉は前回と同じ場所に開く。事前にアランに行く時間は伝えてあったので出迎えてくれた。

 「久しぶりだなアラン。」

 「アラン君元気にしてた?」

 とりあえず挨拶をしておく。

 「ああ、久しぶりだな。とりあえず、ついてきてくれ。詳しいことは後で話す。俺も混乱していてな。」

 アランは歩き始める。涼平たちはその後ろをついて行く。

 「アラン君の様子変だね。」

 ラナが小声をささやいてくる。

 「そうだな。」

 アランと会ってまず寝不足、いや昨日は寝ていないんだろうと感じた。声も弱弱しいし、目の下にはクマが出来ていた。

アランに案内されて一つの部屋の前までたどり着いた。

 「この部屋の中には大事な来客がいらっしゃる。くれぐれも失礼の無いように。」

 アランが部屋に入る前に忠告する。

 「ああ。分かった。」

 部屋は人間界で言うところの会議室のようなもので、長机に椅子が並べてある感じだった。その椅子に三人の男女が横並びに座っていた。一人は中年の男。悪魔の寿命は長いので人間での中年と年齢は違うが、人間でいうところの四十代前半くらいの少しおっさんになったような顔たち。一人は綺麗な紫色の長髪をなびかせる美人なお姉さんだ。椅子に座っているので全身は分からないが、スタイルはよさようだ。後、目測だがライトより胸が大きいのは確実だろう。一人は小柄な男の子。身長もフレアとか大差ないような。顔も童顔で結構幼そうな印象だ。

 「あれ?マイさんだよね。どうしてこんなところにいるの?」

 ライトは部屋に入ると見知った顔がいたので声をかける。

 「マイ様お久しぶりです。」

 フレアもライトの声に続いてマイと呼ばれる女性に挨拶をする。

 「久しぶりね、ライトちゃん、フレアちゃん。二人とも相変わらず可愛くて食べちゃいたいくらい。」

 マイと呼ばれる女性が返事をする。

 「マイ姉。今はふざけてる場合じゃないだろ。」

 マイの横に座っている童顔の男の子が注意する。

 「コホン。とりあえず、座ってくれ。」

 アランが咳払いをし一旦場の空気をリセットする。そして、涼平たちに席に座るよう促す。

 「ああ。」

 涼平たちはアランに言われた通り座る。

 (一体何が起こるんだ?)

 涼平は席に座り向かいに座っている三人を見る。マイと呼ばれる女性、ライトが以前言っていた魔界を担当している神様だったはずだ。そして、マイの横に座る二人、年齢も全然違うし、正体が全く分からない。何者なのだろうか。アランは大事な来客と言っていた。よほどの人物なのだろう。

 「では私はこれで失礼します。戦争の件はまだ時間がかかると思われますので、もう少しお待ちください。」

 アランはそう言うと部屋を出ていった。

 (戦争の件?)

 涼平はアランの言葉の中に気になるワードがあった。それに、アランが俺たちを部屋に案内した後、何もせずにすぐに部屋を立ち去った。アランの目的は自分たちをこの三人に合わせることだったのだろう。そして、それを要求したのはあの三人ってことになる。

 「じゃあ、役者が揃ったところで話し合いをしましょうか。」

 中年の悪魔が話を切り出す。

 「分かった。」

 中年の男には威圧感というか何か逆らえなかった。

 「待って、ゼルアさん。まずは自己紹介でしょ。初対面の人もいるんだし。あっライトちゃんたちはしなくていいよ。四人ともよーく知ってるから。」

 マイがゼルアの話を一度遮る。

 「そうだな。自己紹介はしとかないと、これからの話の内容に信憑性がないと思われるかもしれねぇからな。」

 ゼルアはマイの言うことに納得する。

 「じゃあ、私から。ライトちゃんとフレアちゃんは知ってると思うけど、私はマイ。神様の一人にしてみんなのお姉さん役。私はシンラ様の子の中で一番の年長者よ。」

 マイは元気に自己紹介をする。

 「次は俺かな。俺の名前はクロ。マイ姉の守護者だ。」

 自分をクロと名乗る童顔の男の子が簡潔に述べる。

 「守護者ってなんだ?」

 涼平はクロの話の中に聞きなれない言葉があった。マイの守護者と言うことは、神様を守る存在みたいなものだろうか。

 「もう、クロちゃん。ネタバレはダメだよ。守護者については後で教えるから。とりあえず、私とクロちゃんは恋人関係って認識しといて。」

 マイが涼平の質問をはぐらかす。はぐらかすというよりは後回しにするというニュアンスだ。

 「マイさんって彼氏いたの!!私知らなかったんだけど。いつから付き合ってるの?」

 マイの恋人発言にライトは驚いた。今までマイに彼氏がいるような素振りは見えなかったからだ。ただ、シンラは神様は恋愛自由だと言っていたので、彼氏がいたとしてもおかしくないと言えばおかしくない。

 「具体的な数字は思い出せないけど、千年は付き合ってるかな?」

 「「せっ千年。」」

 マイの発言に驚いたのは涼平とラナだ。悪魔の平均寿命は二百歳くらい。長く生きている悪魔でも三百歳になるころには亡くなっている。だから、千年という数字は考えられないのだ。

 「もう、いちいち驚いてたら話が進まないでしょ。これから全部説明してあげるから驚くの禁止。分かったね。」

 マイは話を円滑に進めるために涼平たちに忠告する。

 「分かった。」

 涼平は返事をする。確かにマイの言う通りだ。いちいち驚いていたら話が進まない。マイは全部説明してくれるというし、大人しく聞いていることが最適だろう。

 「最後は俺だな。俺はゼルア。マクア王国の王様だ。マイとクロは俺のボディーガードといったところだ。」

 最後にゼルアが自己紹介をする。

 (マクア王国の国王だと。)

 涼平は話を中断させないために声には出さなかったが、今までの会話の中で一番驚いた。マクア王国と言えば、この国と戦争をしている敵国。その国とトップが来たというわけだ。そりゃあ、アランも大事な来客というわけだ。ちょっとでもゼルアが不快に思ったら、戦争が激化する可能性だって大いに考えられる。

 「じゃあ、自己紹介も終わったし本題に入ろうか。まあまず、マクア王国国王の俺がこの国にいることが疑問だよな。この国に来たのは休戦協定を結びに、出来れば終戦協定を結ぶためだ。」

 ゼルアはまたしても衝撃的な発言をする。

 「休戦協定を結びに来た理由は?アランの話だとこの国が休戦協定を打診した時は突っぱねたって聞いたけど。」

 アランの話だとマクア王国側は何百年も休戦協定を呑まなかった。それが今になって急にというのはおかしな話だ。マクア王国が戦争をする理由が、この国を侵略する以外に何か別の目的のためだと一応納得できるけど。

 「それは戦争をする理由が無くなったからだ。俺たちの目的は侵略じゃない。侵略だけなら、俺とマイとクロがいれば一瞬で片付くしな。」

 「そうかもな。」

 一瞬というのは大げさだと思うが、ゼルアの言っていることは間違いとは言えない。神様であるマイが仲間にいることが大きいだろう。マイはクロと恋人関係だとも言っていたし、ライト並みの力を持っていてもおかしくない。その時点でこの国に勝てる悪魔は存在しない。それに、この国に三人で来ていることが良い証拠だ。この国に来ることは敵陣のど真ん中に来ることと等しい。いくら神が作る扉で逃げられるとはいえ、戦力はあって困らない。そんな中で三人で来ると言うことは、よほど強さに自信があるのだろう。

 「それで俺たちが戦争をしていた目的は強い悪魔を探すことだった。だが、涼平が見つかったおかげでもう戦争をする必要がなくなったわけだ。」

 「なるほどな。」

 以前聞いたシンラの計画でもライトの恋人相手として強い悪魔を求めていたと言っていた。確かに戦争なら目的を達成するのに最適だろう。マクア王国がどうかは知らないが、この国では戦争で戦える兵士を育成することに重きを置いているからな。

 「戦争をする理由は分かった。けど、そんな理由で戦争をして国民は納得していたのか?」

 マクア王国がどういう政治をしているか涼平は完全に理解しているわけではないが、国王一人が戦争をしようと言って国民が到底納得するとは思えない。マイの力を使ったとか何かしら理由がないと難しいだろう。

 「それはな、戦争をすることで経済発展できると豪語したからだ。そっちの国だってそうだろ。戦争することで、武器や食料の物資が必要になるし、兵士という職種の人員だってより多く必要になる。つまり、物流の流れが良くなり、安定した雇用を供給できるだろ。戦争を始める前、うちの国はちょっと経済的に問題があったから、国民は話を呑んでくれたぞ。」

 「確かにな。」

 戦争で経済が回ることはこの国でも起こっている。武器や防具の需要が増えることで、武器職人に多くの仕事が発注され、その結果武器職人の人員は増えた。農家等の食料を生産する会社にも、戦争での遠征の際に多くの食料が必須になるため、国から多くの生産が求められた。

 「でも、確か戦争って千年単位で続いていたよね。戦争ってそんなに長続きするものなの?」

 ラナが質問する。

 「それは色々と苦労したぜ。まず、モーデン帝国からの休戦協定を一切呑まない。向こうに戦意が無くても、こっちから強引に攻め続ければ応戦せざる負えないだろ。さらに、戦争に勝敗がつかないように調整していた。戦況がどちらかに傾いたら、劣勢の国をシンラかマイが手助けして五分五分に戻していた。それで何とか戦争状態を維持していたというわけだ。」

 「何か大変だね。」

 「ああ。これで一応、戦争の件については全て話したけど、何か質問あるか?」

 「一つ質問なんだけど、ゼルアさんって何歳ですか?話しぶり的に開戦前から生きている風に聞こえるんだけど。」

 ライトは気になっていたことを質問する。ゼルアが開戦前から生きていたら、年齢は軽く千歳は超える。さっきのクロのこと言い、何か長寿の秘訣でもあるのだろうか。

 「それについては私から説明するわ。悪魔が寿命以上に生きる方法は神様の守護者になることよ。守護者になることで、神様から少しだけ神力を与えられて不老になるの。不死じゃないから、殺されたら終わりだけど、寿命で死ぬことはなくなるわ。」 

 ゼルアの代わりにマイが答える。

 「守護者って何?さっきクロさんも言ってたけど?」

 「守護者って言うのは言葉のままよ。神様を守る存在のこと。神様に認められた人がなれるの。恋人関係ってその人を認めることと変わらないでしょ。」

 「待て。そしたら俺もライトの守護者ってことになって不老になるのか?俺はライトから神力をもらってないと思うが。」

 マイの言葉は涼平にとって衝撃的だった。ライトと恋人関係になったら不老になりました。もし本当にそうなるなら、シンラも一言何かあっても良かったと思うが。いや、むしろ言わないことが正解か。ライトと付き合ったら不老になる。そんな事実を告げられたら、付き合うことに戸惑う可能性は十分に考えられる。

 「ライトちゃんと涼平ちゃんは恋人になってからキスした?キスすることで、口移しという形で神力を与えるんだけど。」

 「したな。」

 これで涼平が不老になったことが確定した。正直言って困惑している。

 「ごめんね、涼平。私のせいでこんなことになって。」

 ライトが申し訳なさそうな顔で涼平を見つめる。

 「心配するな。ライトは知らなかったわけだし、恋人になったらキスくらいするだろ。」

 涼平はライトの頭を撫でる。

 「ライトちゃん、いい彼氏を持ったね。」

 「そうですね。最近の涼平様は進歩してますよね。」

 「うんうん。お兄ちゃんも大分良くなったよね。」

 マイが涼平を褒め、それにフレアとラナが同調する。

 「俺だって努力してるんだ。」

 涼平にとってライトは初めての恋人。それに涼平は自分がライト以外の誰かを好きになることはないと確信している。そんなライトを大切にしないわけがない。

 不老の話だって驚きはしたが、決して涼平にとって悪いだけの話ではない。メリットとして挙げられるのは死なないことだろう。生物として生まれた以上迎える終わりを無くすことができるからだ。正確には寿命で死なないことだが、マクア王国が戦争する意思が無くなったおかげで、不死と同義と言って構わないだろう。戦争に参加して戦死するという可能性が消えたのだから。そうなれば、永遠にライトと幸せな生活を送ることができる。不老のデメリットは長く生き続けてしまうことだ。自分の周囲の仲間が死んでいく中で生き長らえる。涼平の場合は実の妹であるラナや共に戦ったアランたちが死んでいくの見届けなければならない。そして、仲間が死んだあとも悲しみを背負いながら生きていかなければならないところだ。

 しかし、涼平は不老のデメリットはそこまでないと考えている。まず、ライトやフレアといった神様も不老なので、涼平が孤独になることはない。それに、生活が辛くなったら自分で終わらせるという逃げ道だってある。まあ、この手はライトがいる限りは使えないが。理由はライトが悲しむからだ。

 「涼平ちゃんを褒めてたら本題から逸れちゃったね。それでゼルアさんは守護者だから、不老で戦争が始まる前から長生きしてるわけ。」

 「なるほどな。ところで守護者って言うけど、力関係で言えば悪魔よりも神様の方が圧倒的じゃん。どうしてそんな名前なんだ?」

 もう涼平ではライトを守ることはできない。逆に、涼平がライトに守ってもらうことになるかもしれない。それなのに守護者ってのはおかしな話だ。

 「涼平ちゃん。何も力だけが全てじゃないのよ。物理的に守るだけなら騎士とかの方が名前的もしっくりくるでしょ。守護者っていうのは心とか精神的な面だってあるわよ。例えば、ライトちゃんが辛い時に傍にいてあげる。これだってライトを守ること何ら変わりはないと思うけど。」

 「そうかもな。」

 マイのいう通りだ。力だけが全てじゃない。そう考えるようにしたはずなのに、まだ抜けきっていないようだった。

 「私からも質問いいですか?マイ様はクロ様を守護者としていますが、ゼルア様は誰の守護者なのでしょうか?マイ様が二股しているとは思えませんが。」

 「ああ俺か。俺はシンラの守護者だぜ。」

 「「「「えええええええええええええええええええええええええええ。」」」」

 涼平たちは驚いた。その驚きからでた声は建物の外まで聞こえたとかなんとか。

 「シンラ様に彼氏がいたなんて。」

 「・・・シンラ様に恋人、想像がつきません。」

 シンラと長年付き合いがあるライトとフレアにとっては涼平とラナ以上に衝撃的だった。ライトフレアが持つシンラのイメージは、冷淡無比な女王様に近く、失礼な話、誰かを愛することなんてないとまで思っていた。

 「ちなみにシンラ様とゼルアさんの付き合いは、私とクロちゃんよりも長いわよ。」

 「そっそうなんですか。」

 「シンラ様が。」

 ライトとフレアの頭からは衝撃が抜けきっていない感じだった。

 「でも、よくよく考えるとシンラに恋人がいてもおかしくないはずだ。」

 涼平はシンラとの付き合いが短い分、冷静になるのがライトたちよりも早かった。そして、シンラについて分析した。

 「どういうことなの?」

 ライトは未だ落ち着いていなかった。

 「シンラがどうしてライトの神力を使えるようにするために恋愛という形を選択したかだ。確かに恋愛による想いの強さは凄かった。ライトが俺の前で証明してくれたしな。けど、シンラはどうして恋愛が強い思いを生むって考えたんだろうな?別に恋愛じゃなくても強い想いなんてありそうだけど。」

 「なるほど。確かにあの時のシンラ様は恋愛こそが一番だと確信しているようにも思えました。つまり、恋愛が強い想いを生むという根拠があった。それがシンラ様の実体験なら納得できます。」

 冷静さを取り戻したフレアは涼平が言いたいことが理解できた。

 「そう言うこと。シンラとゼルアさんが付き合い始めたのは戦争が始まる前だから、ライトの恋人相手として強い悪魔を探すことを目的とするのも、時系列的には合ってる。」

 パチパチパチパチ

 マイが拍手をする。

 「流石ね。涼平ちゃんの推測は概ね当たっているわ。戦いだけでなく、頭も切れるなんてますますいい男じゃない。まあ、私もシンラ様が恋愛が強い想いを生むとは聞かされていたけど、シンラ様がどういう経緯でそう考えたのかは知らないのよね。」

 マイはそう言いながらゼルアの方を向く。

 「そんな昔のこと忘れたぞ。」

 ゼルアの言葉が本当なのか嘘なのか分からなかったが、問い詰めても答えは出てこないだろう。

 「マイは俺の推測を概ね正解と言ったが、何か違うところがあるのか?」

 「うんとね、違わないけど答えが完璧じゃない。確かにシンラ様は実体験から恋愛が強い思いを生むと分かったわ。けど、自分が成功したからって他の人もそうなるとは限らないでしょ。」

 「なるほど。成功例が自分一人だけだったら、シンラのひとりよがりの可能性があるもんな。」

 涼平はマイの言いたいことが分かった。

 「そう言うこと。だから、恋愛が強い思いを生むことに確証を得るために、私にも恋人に作ってて命じたのよ。それでできた恋人がクロちゃんってわけ。」

 「つまり、シンラは自分以外にも同じ結果になったからライトも同じように上手くいくと思ったわけだ。けど、サンプル数が二人って少なくないか?神様は七人いるだろ。ライトとフレアは除くとしても、他の三人でも試さなかったのか?」

 サンプル数が二人より五人の方が確証を得るに足る根拠になるはずだ。シンラの計画は長期にわたる重要なもののはずだから、サンプル数が多いに越したことはないはずだ。

 「涼平ちゃんの言う通り、確実性を求めるならサンプル数が多いほどいいわ。けど、恋人を作れなんて命令、他の神様が疑問に思わずにいられるかしら。疑問の有無にかかわらず,シンラ様の命令なら絶対に実行はするでしょう。もし疑問に思われたら最悪の場合、計画が露呈する可能性だってあるわ。そうなると、ライトにも計画の事が伝わり、ライトの恋人を作る作戦が上手くいかない可能性だって考えられるでしょ。」

 マイはサンプル数が多いことと計画の露呈を防ぐことの二つを天秤にかけて後者の方が大事だと説明する。計画を知る人が増えれば増えるほど、情報伝達の際等に漏れる可能性が高い。計画をバレずに遂行するには、計画を立てた本人が一人でやってしまうことが理想だ。しかし、現実ではそう上手くいかないため、信頼できる人に協力を頼むわけだ。

 「なるほどな。確かにライトがこの計画を知ってしまったら結果が変わった可能性は考えられるな。」

 「そんなことないよ。どんな形であっても、私は涼平のことを好きになったと思うよ。」

 「それはありがとな。」

 涼平はライトが人前でこんな恥ずかしいセリフ言えるなと感心した。

 「マイ様。今の言葉を聞く限り、マイ様はシンラ様の計画を知っているってことになりますが。」

 「知ってるわよ。けど、教えることはできないのは分かるよね。まあ、涼平ちゃんはある程度予想はついてそうだけど。」

 当然マイは計画を教えない。教える気があるなら、お茶会の時にシンラが直接教えているだろう。

 「まあ、そうだよな。」

 「他に何か聞きたいことある?答えらる範囲でなら答えてあげるけど。」

 「一ついいか。俺はライトから神力を少しとは言えもらったんだよな。そしたら俺は少しは強くなったのか?」

 涼平はライトの守護者になったことで神力を少し得ることができた。少し得るだけで不老の効果があるなら、神力はとても強力な力なのだろう。使い方は分かってるから、涼平も使えばライトまではいかないが、今以上の強さを手に入れられる。

 「それは無理ね。確かにあなたには神力が備わっているから、ライトちゃんが大好きって思えば身体は強くなれるわ。けど、脳は変わらない。言いたいことは分かるよね。」

 「ああ。」

 身体がどれだけ強くなっても脳が同じでも意味ないのだ。個人が持つ脳が処理できる速度までしか身体は言うことを聞かないのだ。例えば、成績優秀な高校生たちが九九の百マス計算をしたとしよう。彼らは成績優秀だから、九九の答えは全員が知っている。では、全員が同じタイムで終わるかと言われればそうではない。人によってタイムにバラつきがある。答えが分かっていても、脳が計算する時間、脳が答えを書くように命令する時間、人それぞれ違うからタイムに差が出るのだ。脳の処理速度によって動きの速度が変わるのだ。だから、脳が処理できない力を持っても意味がない。マイの回答は神力は恐らく涼平の脳の処理速度よりも強い力だと言っているのだ。

 「他に質問はある?」

 「私がシンラ様の計画が上手くいくためにしておいた方がいいことってありますか?」

 「それは簡単よ。涼平ちゃんともっと愛し合いなさい。想いが強くなればなるほどいいわ。そのためにも本番行為はしておいた方が確実よ。愛し合ってることが実感できるわ。」

 「頑張ります。」

 ライトはやる気満々のようだ。

 「他にある?」

 「私も不老になることはできますか?お兄ちゃん一人にするのが心配で。」

 「それはできるとは思うけど、シンラ様に確認しないと分からないわ。それに、守護者にできるのは一人の神様につき一人まで。二人を愛することはできても、二人への愛が全く同じにはならないでしょ。守護者には最愛の人しか適用されないから。」

 「フレアは質問ある?」

 「いえ私は特にありません。」

「じゃあ、もういいかな。」

 マイへの質問タイムは終わる。シンラの計画について深堀できない以上、質問することがあまりなかった。マイの様子を見る限り、まだシンラの手のひらの上で踊る必要があるのだろう。

 「そう言えば、どうして俺たちを魔界に呼んだんだ?今の話はとても参考になったが、話すだけなら人間界でも神界でもできるし、わざわざこのタイミングである必要もないと思うが。」

 マイたちの一番の目的は魔界で長年続いた戦争に終止符を打ちにくることだ。マイたちが来たことにより、この国に激震が走ったはずだ。実際、アランも事の対応に追われていて疲れていたし。そんな慌ただしい中、わざわざ話し合いの場を設ける必要はない。何か他に理由があるに違いないと涼平は考えていた。

 「もちろん、話し合いだけじゃないわよ。話し合いはただの暇つぶし。別にシンラ様から指示されたわけじゃないしね。ただ、涼平ちゃんやライトちゃんみたいな当事者に少しヒントを与える優しいお姉さんになっただけ。」

 「じゃあ、本当の目的は何でしょうか?」

 ライトはすぐに結論を言わないマイにじれったくなった。

 「本当の目的。それはね、私とライトちゃんが戦うことよ。」

 先ほどまで明るかったマイの声色が一変し、低い声で淡々と言葉を口にした。


 

 

 

 

 

 

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