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十六 対策開始

 「そう言えば、お兄ちゃんが使ってた魔剣ラグナロクどうする?今、あれ武器庫にあるんだけど?」

 ラナは涼平に質問する。魔剣ラグナロクとは涼平が悪魔時代に使用していた武器の名前だ。

 「えっそうなのか?誰が武器庫まで運んで来たんだ?」

 「ミカさんだけど。」

 「ミカか・・・。」

 涼平は考える。涼平は魔界での最後の戦い、つまり、ミカとの闘いの最中に魔剣ラグナロクは失った。その魔剣をミカが持ってきた。涼平が戦ったミカとラナが言っているミカは、ただの同姓同名ではなく、同一人物の可能性が高い。

 「なぁラナ、そのミカの話知ってる限り話してくれ。」

 涼平は少しでもミカの正体にを探るべく情報を求める。

 「えーっとね。・・・・。」

 ラナはミカについて話し始めた。

 ミカは涼平がいなくなってから、半年くらい経った時に突然現れた小柄な少女だと言う。戦闘能力の高さが買われ、すぐさま出世していった。リィトと違った点は、彼女が上位の貴族出身だったことである。涼平は「そんなに強い奴が今まで誰も知らなかったなんておかしいのでは?」とラナに聞いた。涼平自身もミカが現れる半年前までは魔界にいたのだ。それだけ強い存在なら、噂くらい聞いているはずだ。そのミカという少女が生後半年というわけでもないだろうし。ラナは「どうも、愛人との間の子どもだったらしく、公にはできなかったみたいなの。」と答えた。涼平はラナの答えに納得はしなかった。もちろん、ラナが嘘を言っているとかで疑っているわけではない。おそらく、ミカがみんなが納得する理由を適当に考え、それをみんなを洗脳するような形で納得させたのだろう。ライトも学校に入学する際に、神様の力を使って戸籍等をでっち上げているんだ。ミカが神様なら、それくらい容易だろう。

 その後も、ミカの話が続く。ライトが国宝を盗んで人間界に逃げたことを掴んだのもミカで、人間界に行く方法まで教えてくれたみたいだ。

 「ライトどう思う?」

 涼平はミカ=神様という結論が出ているが、同じ神様であるライトにも意見を聞いておく。

 「断定はできないけど、ほぼ間違いなくミカって娘は神様だと思うよ。」

 ライトがミカを神様だと考える根拠は、やはり人間界の存在を知っていることと、人間界への行き方を知っている点だ。

 「魔界にいる神様と言えばマイ様ですが、ミカという少女の見た目と随分違いますもんね。」

 フレアが言うには、魔界を担当している神様は、ライトよりも身長が高く、ライトよりもダイナマイトボディらしい。

 涼平はそんな神様がいるなら、会ってみたいと思ったが、今は余計なことを考えている場合ではない。

 「じゃあ、ミカに体型が近い神様に心当たりはあるか?」

 「心当たりはあるにはあるけど、体型で判断するのは意味ないかな?そもそも、ミカって娘が涼平が負けたミカと同一人物なら、ラナちゃんも見たことあるから分かると思うんだよね。だから、同じ名前を使っているけど、姿まで全く同じとは限らないでしょ。例えば、二人でミカをやってる可能性だってあるわけだし。」

 ライトは涼平に凝り固まった考えをしないように促す。

 「確かにそうだな。」

 ライトの言うようにミカが同一人物なら、ラナが気づかないわけがない。さらに、直接剣を交えたアランも気づかないというのはあり得ないだろう。それに、ミカは涼平を悪魔から人間に変えた存在だ。自分の姿くらい容易に変えることができる可能性は十分にあるだろう。

 正体を明らかにすることは、今は難しいだろう。ミカについて色々と考えていると武器庫たどり着いた。

 ガチャ

 武器庫に入ると、剣や杖等の色々な武器や防具が乱雑に置かれている。そんな武器庫の一番奥に、美術館の展示品のように丁寧に一つの剣が保管されていた。

 「この剣だけ、やけに仰々しく置かれてるね。」

 ライトは武器庫の中で、明らかに異質な管理をされている剣を見て疑問に思う。

 「これが魔剣ラグナロクだ。一応、国宝に近い剣なんだけど、ライトは知らないのか?」

 ライトは以前、この国の国宝を盗んだことがあるから、国宝については一定の理解があると思っていたが、そうではないのだろうか。

 「この剣は有名な剣なの?・・・フレア知ってる?」

 「いえ、私も知りません。涼平様、この剣はそんな有名なのですか?」

 ライトとフレアは2人とも知らなかったようだ。

 「この剣は聖剣エクスカリバーや、天叢雲剣みたいに有名なんだけどな。ちなみにこの二つは知ってるのか?」

 魔剣ラグナロクは、先ほど例に挙げた二つの剣のように神話級の剣なのだ。

 「その二つは知ってるよ。」

 「はい。知ってます。」

 どうやら、例に挙げた剣は知っているみたいだ。なぜ、魔剣ラグナロクのことは知らないのだろうか、疑問に思うところはあるが、涼平は神様にも知らないことがあるんだと少し嬉しかった。

 「じゃあ、ライトたちは二柱の邪神様って神話知ってるか?」

 涼平は魔剣ラグナロクが出てくる神話を知っているか聞いた。二柱の邪神様は、聖剣エクスカリバーのアーサー王物語や、天叢雲剣の日本神話みたいなようなものだ。

 「知らないよ。」

 「知らないです。」

 ライトたちは神話自体もしらないようだ。

 「じゃあ、簡単に説明するぞ。」

 涼平は神話について語りだす。

 昔、二柱の邪神がいた。邪神は悪魔の産みの親であり、悪魔たちに崇められていた。そんなある日、邪神は自分たちの他に別の神様がいることを知る。その別の神様は、自分たちとは違う世界に住んでいるらしい。邪神たちはその神様を倒して、違う世界も自分たちのものにしようと考えた。早速、邪神たちは別世界の神様の所に向かった。邪神たちは激しい戦闘の中、二柱とも命を落としたのだ。

 「ざっと説明するとこんな感じ。それで、片方の神様が使っていた武器がこの魔剣ラグナロクでとされていて、もう片方の神様が使っていた武器は大きな鎌なんだけど、それは発見されていないんだ。」

 「そんな話今まで聞いたことが無かったわ。」

 ライトは物語を聞いても、自分の頭の中にはない内容だった。タイトルを知らないだけで、話の内容は聞いたことがあるかもと期待したが、そうではなかった。ライトは自分はまだまだ勉強不足なんだと痛感した。

 「話は分かりましたけど、話に出てきた剣とこの剣が同じだと言う根拠はあるのですか?例えば、本に絵で示されているとか?」

 フレアは涼平の話では、物語に出てくる剣と武器庫にあるこの剣が同じだと結びつかなかった。

 「根拠はないぞ。この物語はただの伝承で、長年語り継がれているから、本にもなって多くの悪魔が知っているだけだ。」

 「では、なぜこの剣が同じだと言えるのでしょうか?」

 フレアは何か別の根拠があるのではと考えた。

 「この魔剣は他の魔剣は違う特徴があるんだ。この魔剣は持ち主を選ぶんだよ。まあ、創作物でよくある設定みたいにな。」

 アーサー王物語を始め、近頃の漫画やラノベでもあるよくある設定で、選ばれた者しか扱うことができない剣。その一つに魔剣ラグナロクが該当するのだ。

 「なるほど。悪魔が作る魔剣にはない特徴があるから、神が作った魔剣ではないのかと推察しているわけですね。」

 フレアは涼平の言葉から魔剣ラグナロクと同じである根拠を考察する。

 「その通りだ。せっかくだし、実演しようか。」

 涼平は魔剣ラグナロクを保管しているガラスケースを外す。

 「俺が触る分には特に何の変哲もないんだ。」

 涼平は魔剣を手に取り軽く振る。

 「けど、この剣に選ばれない悪魔は触れることができないんだ。ラナ頼むわ。」

 涼平は魔剣を元の場所に戻し、ラナに魔剣を触れるように促す。

 「ええ~結構痛いから嫌なんだけど。」

 ラナは文句を言いつつ、手を魔剣に近づける。すると、魔剣から魔力の塊が稲妻のようになりラナに襲い掛かる。

 「いったーい。」

ラナはダメージを受けた手に回復魔法をかける。

 「まあ、こんな風に剣に選ばれない者はダメージを受けるってわけだ。ライトたちも試してみなよ。ラナを見て分かるように、深刻な痛みはないからさ。」

 涼平はライトたちに度胸試し程度の感覚で、魔剣に触れることを促す。

 「そうだね。ちょっと面白そうかも。」

 ライトは面白半分で剣に触れようとする。すると、何事もなく剣を手に取ることができた。

 「やったー。私も選ばれた側みたいだよ。」

 ライトは嬉しそうに剣を振り回す。

 「すごいな。」

 「すごいね。」

 「流石です。」

 涼平、ラナ、フレアがライトを称賛する。

 「じゃあ、次はフレアの番だね。」

 ライトは剣を元に戻す。

 「では、いきます。」

 フレアは恐る恐る剣に触れる。フレアも魔力を浴びることなく、触ることができた。

 「私も触れました。」

 フレアも剣を振り回して、選ばれたことをアピールする。

 「すごいね。お兄ちゃんの他にもこんなに選ばれるなんて。」

 ラナは感激する。それもそのはずだ。この魔剣ラグナロクは、この国ができて以来、誰一人として触ることができなかったのだ。涼平が触ることができた時も、かなりの話題にはなったものの、当時の涼平つまり、リィトは魔界の嫌われ者。称賛してくれる悪魔など、せいぜいアランくらいだった。そんな魔剣をライトもフレアも触れることができた。

 「何かこの魔剣に触れる条件とかでもあるのか?」

 涼平は疑問に思った。涼平は今まで、この剣に触れる者は強い者だと考えていた。要するに、涼平の考えではライトやフレアみたいな強くない者が触れないとはずだ。でも、実際には違った。強さという基準ではなく、何か別の基準で選ばれている可能性があるということだ。

 「そう言えば、ミカって娘も触れたんだよね。4人の共通点は・・・ないね。」

 ライトも考えてはみたが、思いつかなかった。

 「まあ、確かに条件とかあるのかもしれないけど、今はそんなこと考えるより、特訓した方がいいんじゃないのかな?」

 ラナは自分の兄に本来の目的を思い出させる。この武器庫に来た目的だって、戦争で勝つために武器を調達することだ。

 「それもそうだな。」

 これ以上、共通点なんかを考えていても、答えは出ないだろう。それよりも目の前の危機に立ち向かう必要がある。

 涼平たちは武器庫を後にする。

 「じゃあ、私は仕事があるからここで別れるね。」

 ラナは涼平たちに一言告げ、その場を後にした。

 「これから特訓だね。厳しい修行を今からするんだよね。」

 ライトは目を輝かせている。ライトはアニメや漫画で言う修行パートに入ると考えている。

 「いや、厳しい修行なんてしないぞ。」

 「えっそうなの?だって勝率を上げるために少しでも強くならないとダメじゃないの?」

 ライトは自分の期待とは違う回答に疑問に思う。

 「確かにそれも一つの手ではあるが、今回の場合は無理だ。戦争までの期間が短すぎる。この期間が半年とかだったらそれもありだけど、1週間しかないからな。アニメや漫画みたいに修行したらすぐ強くなるとか、転生したら最強になるとかそういうことはあり得ないからな。」

 涼平は修行をしない理由を端的に述べた。

 「そうだね。簡単に強くなる方法なんてないよね。じゃあ、今から何をするのかな?」

 涼平は修行しないと言ったので、何か別の方法で戦略を練るのだろう。ライトにはその方法が分からないので聞いてみた。

 「とりあえず、図書館に行く。俺がいない間に新しい魔法が開発されていないか確認しに行く。」

 涼平が魔界にいない間も、魔界の魔法は進化し続けているだろう。まずは、それを知ることが大事だ。戦闘は能力も大切だが、情報も同じくらい大切である。実際、涼平がアランたちに負けたのも、重力魔法という未知の魔法が原因でもある。戦争に有益な魔法が新しく開発されているかもしれない。新魔法を習得することはできなくても、知ることで対応できるようになる。

 涼平たちは図書館に着いた。

 涼平は自分がいなくなってから、発表された魔法論文を一式手に取り、図書館の読書スペースに座った。涼平は新しい魔法を調べていく。自動でほうきが部屋をはいてくれる魔法等、実用的な魔法は多く開発されているが、戦闘向きな魔法はなかった。そもそも、重力魔法も戦闘向きに作られたわけではなかった。重力魔法は元々、物を軽くして運びやすくすることを目的に研究をしてきた。しかし、物体個別に重力を変えることはできずに、範囲内の重力を変えるしかできない未完成の魔法だった。それをアランは上手く戦闘で有用したに過ぎなかった。

 「こんなものか。」

 涼平は全ての論文を読み終えた。結果として、戦闘で使えるような魔法は一切なかった。しかし、これは幸いだった。魔法について一切対策しなくてよくなったからだ。その分の時間を別のことにあてられる。

 「ライト、フレア終わったぞ。」

 涼平はライトとフレアに声をかける。二人は魔界にある神話を熟読していた。先ほどの武器庫での出来事が堪えたのだろうか。

 「そうなんだ。」

 ライトとフレアは読んでいた本を閉じる。

 「俺はやることが終わったから、次の場所に行くけど、ライトたちは神話読んでても大丈夫だぞ。」

 「私は涼平について行くよ。フレアはどうする?」

 「私はこのまま神話を読んでいます。ライト様に後で内容はお伝えします。何かありましたら連絡してください。」

 フレアはここに残るようだ。まあ正直な話、ついてきたところで何かできることがあるかと言われればそうではない。フレアみたいに神話を読んでいる方が有意義に時間を過ごせるだろう。

 「ライトもここで神話を読んでいていいんだぞ。」

 「別に気にしなくていいよ。私はついて行きたいだけだから。」

 「そうか。じゃあ、行くか。」

 涼平とライトは図書館を後にする。

 次の目的地は防具が保管されている倉庫に向かう。戦争に出るうえで防具選びも重要な要素だ。防具の有無で、攻撃を受けた際のダメージは大きく異なる。涼平は人間界で戦闘している時は、私服で戦闘していたので、防御力は一切なかった。もちろん、防具は必要だが、絶対に必要というわけではない。極論を言うと、ダメージを一切受けないのであれば防具は必要ではない。実際、涼平が人間界で戦った二回の戦闘では一切ダメージを受けなかったので、私服でも特に問題はなかった。今回の相手の場合、ダメージを少しでも受けて、本調子を出せなくなった時点でほぼ負けることになる。だから、ダメージを最大限抑えることができる防具を探す必要がある。

 倉庫につくと、防具が綺麗に並べられていた。武器庫の時とはえらい違いだ。管理人の性格の問題だろうか。涼平は疑問に思いつつも、防具を眺めていく。

 「これなんて良さそうだな。」

 涼平は一つの防具を手に取ろうとする。

 「重っ。」

 涼平は手に取った瞬間、防具を床に落としてしまった。

 「涼平、大丈夫?足の上とかに落ちてない?」

 「大丈夫だ。」

 涼平は落とした防具を拾い元の場所に戻す。

 どうやら、防具を装備するというプランはなくなった。防具は鉄や銀等の金属でできており、その重さは数十㎏にも及ぶ。悪魔の身体だから今までは気にはならなかったが、人間の身体の状態だと重すぎて着ると身動きがとれなくなってしまうだろう。もちろん、身体強化魔法をかければ、防具を装備することも可能だが、魔力の問題を抱える涼平にとってこれ以上無駄な魔力消費はできない。これが防具を装備しない結論に至った理由だ。

 涼平は防具のことを諦めて次の場所に向かう。

 次の場所は訓練場だ。訓練場は外にあり、大きさは学校のグラウンド程度だ。アランは涼平のために、戦争までの期間涼平が自由に使えるように手配したのだ。

 涼平は軽く準備運動をする。これから、身体に大きな負荷をかけることになるので、入念に準備運動をする。

 「こんなもんだな。」

 涼平は準備運動をし終え、一回水分をとる。

 「ライト頼みたいことがある。」

 「私にできることなら、何でも手伝うよ。」

 ライトはやる気満々だったので、涼平はライトに手伝って欲しいことを説明する。とは言っても、そんなにたいそうな事ではない。単純に時間を計って欲しいだけだ。その時間というのは、涼平が身体強化魔法をかけて戦える時間だ。今まで、魔力の消費が問題だと涼平は自覚していたが、実際にどれくらい戦えるかは理解していない。今日は自分の現状を知ることが課題だ。

 早速、身体強化魔法をかけ動き回る。身体強化魔法の度合いは、今日映像で見た標的と戦えるレベルでかけている。今まで、人間の身体で戦ってきた時よりも身体強化魔法をかけている。それだけでも、標的が強いことが分かる。しかも問題なのは、映像で見た標的は恐らく全力を出してないということだ。これは涼平の推測で、もしかしたら映像で見た標的は全力だったのかもしれない。しかし、戦争という長期戦に置いて常に全力で戦うわけがない。必ず、温存している部分があるのに違いない。これは涼平の経験からの予測だ。

 「こんなもんか。」

 涼平は魔力切れになるまで動き回った。疲れからその場に座り込む。

 「お水いる?」

 涼平が座ったのを見て、ライトはドリンクを持って涼平に駆け寄る。

 「いただくよ。ありがとう。」

 涼平はライトからドリンクをもらい補給する。

 「それで、時間はどれくらいだった?」

 「16分20秒ね。」

 「そうか。」

 16分20秒、思ったよりも短った。涼平の体感では20分は持つと考えていたからだ。やはり、人間の身体では思うようにはいかないようだ。16分20秒はあくまで、標的が映像通りの動きをした場合の時間だ。標的がこれ以上の力を出せば、当然こちらも合わせるしかない。そうなれば、されに戦える時間は減少する。正攻法、つまり、ただ殴り合うだけでは勝ち目が薄いことを身に染みて実感した。標的に勝つには奇策しかない。

 「そう言えば、涼平。今日の訓練の時、ずっとラグナロクばっかり使ってたけど、私の神剣は使わないのかな?二刀流とかにすれば、攻撃の手数とか増えるんじゃないかな?」

 ライトは涼平が行き詰った顔をしていたので、何か助言できないかとひねり出した。

 「二刀流は無理だな。俺は利き腕である右手でしか剣を扱ったことがない。左手で剣を扱ったところで焼け石に水だ。」

 「そうだよね。慣れないことをしても、強くなるどころか、逆に弱くなっちゃうもんね。余計なこと言ってごめんね。神剣って願えば出てくるから、便利なんじゃないかなって思ったんだけど。」

 「それはいいかもしれない。」

 神剣デモンスレイヤーは、涼平が使いたいと願えば顕現される。これは、何もない場所からいきなり武器を取り出すことができる。これはすごい芸当なのだ。悪魔の魔法でも、こんなことはできない。つまり、俺が武器を二つ所有しているということは相手に知られることは絶対ない。これは奇策に十分なリ得る。後は、どのタイミングで使うかが問題となるだけだ。

 「何かいい案でも浮かんだのかな?」

 ライトは涼平の顔に笑みが出たことから、いい案が浮かんだと推測する。

 「ああ、ライトのおかげだ。ライトは俺の勝利の女神様かもな。」

 「そっそんなことはないよ。」

 ライトは顔を赤らめ照れ隠しする。

 標的を倒す具体的なプランはまだ何もない。正面からぶつかれば負ける可能性の方が高い。しかし、ライトのおかげで一筋の光が見えた。神剣を上手く扱うことができればその可能性をひっくり返すことができるだろう。

 「そっそれで、この後はどうするの?」

 「もう魔力もないし、これ以上動けない。だから、部屋でゆっくり休む。」

 涼平は立ち上がり自室に戻った。

対策一日目はこんな感じで終わった。ぶっちゃけた話、今日一日でやりたいことの8割程度はやってしまった。後は、身体を動かしつつ、万全のコンディションを整えるだけだ。

 

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