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十三 涼平の過去

 魔界は文字通りの実力主義である。戦闘力の高い者が、地位・富・名声を得ることができ、戦闘力の低い者は虐げらるという世界だ。そして、悪魔の戦闘力に大きく関係するのが魔力である。攻撃魔法・防御魔法・身体強化魔法等、戦闘するうえで、多くの魔法を使用することになる。魔力が少ないとそれだけで、戦闘において大きなハンデとなってしまう。そして、個人が持つ魔力の量は遺伝によって決まるのだ。父親と母親の魔力の量が多ければ多いほど、子どもも魔力を多く持って生まれてくるのだ。

 この魔力量の遺伝が、魔界の実力主義社会に拍車をかけている。魔力が多い者は、魔力の多い者を結婚相手とするため、魔力格差はどんどん広がっていったのである。そうなると、個人の戦闘力に大きな差が出てくる。そこで、帝国は一定の戦闘力を持つ人物たちを貴族階級に定め、特別扱いをするようになった。さらに、同じ貴族階級の中でも序列ができ、どんどん差は広がっていった。そんな魔力社会の中、一人の例外が生まれたのである。

 リィトの両親は貴族階級であったものの、貴族階の中では下の部類、いわゆる没落貴族だった。両親は、戦闘できるだけの最低の魔力であり、戦闘能力は大して高くなかった。そんな家庭に涼平は生まれた。子どもにどの程度魔力が備わっているのか分かるのは、生後1年を過ぎた辺りだ。生後1年が経つと、国営の病院で魔力検査が行われる。リィトもその魔力検査を受けた。リィトの数値は成人男性の平均魔力を大きく上回るものだった。リィトの魔力は生後1年の子どもの中では、歴代最高の数値をたたき出した。しかし、あくまで生後1年の子どもの中で歴代最高の数値を出しただけである。子どもは成長とともに魔力の許容量も増えていく。いくら赤ん坊の時に魔力が高くても、それ以降数値に伸び悩み凡人と変わらない数値に落ち着く者もいる。ただ、全体の傾向的には赤ん坊の時期に魔力が高い者は、著しい成長をしている。

 リィトの両親はリィトの将来に期待を寄せる。自分の息子が戦争で活躍すれば、自分たちは没落貴族とあざ笑われることもなくなるのだ。両親はリィトに戦闘能力を向上させるために、幼少期から英才教育を施すことを決めたのである。リィトが2歳になるころに、妹であるラナが誕生した。両親はラナにも期待したが、ラナはリィトのように魔力の数値は高くなく、自分たちの子どもとして妥当な数値しかなかった。両親たちはラナの数値を見てガッカリし、ラナにはリィトにしているような教育は一切せず放置していた。

 リィトの幼少期は毎日、両親の教育を受けていた。父親からは剣の技術を始め、体力や筋力等、近接戦闘についてを学んだ。母親からは、攻撃魔法・防御魔法・身体強化魔法、あらゆる魔法の理論及び実技を学んだ。

 「強くなれ、リィト。」

 「リィト。あなたはこの国最強の悪魔になるのよ。」

 両親の口癖だった。この頃のリィトは、自分のためにこんなにも尽くしてくれる両親のために、強くなりたいと思っていた。

 リィトとラナの仲は良くなかった。正確には、仲良くなる機会がなかったのだ。ラナはリィト違い優秀ではなかった。両親は優秀なリィトがラナといると、リィトに悪影響を及ぼすと考え、二人が一緒にいるという機会は全くといっていいほどなかった。リィトの家は、没落しているとはいえ貴族なので、ある程度の資産を持っている。両親は一人家政婦を雇い、ラナの世話は家政婦に丸投げし、両親はラナの世話に一切関与しなかった。

 リィトはすくすくと成長していき、魔力量も大幅に成長、近接戦闘や魔法も両親の教育によってかなりの精度のものとなった。

 リィトは6歳となり、いよいよ帝国学校の入学試験の日が来た。この国では、6歳になるといずれかの帝国学校に入学しなければならない。一つは、兵士育成学校。文字通り、兵士を育成する学校で、将来は帝国軍に入隊し、戦争で活躍することを期待される。一つは、鍛冶学校。戦争で使用する武器や防具、魔具等の戦闘で必要な道具を作る技術を学ぶ学校だ。一つは、医療学校。戦争で負傷した兵士を治療する医師又は看護師になるための学校である。この3つが貴族が主に入学する学校である。この3つの学校でも序列があり、兵士学校に入ることが是とされている。鍛冶学校、医療学校は落ちこぼれがいくものとされている。ちなみに、リィトの父親は鍛冶学校、母親は医療学校出身であり、これも没落貴族の一因である。貴族以外の悪魔は、調理や娯楽、作物の栽培等、軍事力以外の分野を幅広く学び、帝国民の生活をより豊かにする人材を育成する学校だ。

 リィトが受験する学校は当然、兵士育成学校だ。試験内容は、試験監督者と1対1で戦い、戦闘能力を計り点数化する。もちろん、試験監督者は大人なので、6歳の子どもでは勝つことは難しい。しかし、勝てえないわけではない。試験監督者の多くは、怪我や年を理由に現役を引退した元兵士であること、多くの受験者を試験しなければならない都合上、一戦一戦に全力を出せないこと、魔力が多い受験者は、身体強化魔法で試験監督者はと同程度の身体能力を得られること。これらの条件から、毎年数名ほどは試験監督者を倒す者がいる。ただ、全員が全員そうではないので、試験監督者は、子どもの動きや状況判断能力、魔法の技術等を総合的に判断する。

 リィトは試験監督者をあっさりと倒し、兵士育成学校への入学を決めた。入学者は1000人であり、試験の成績順に、1クラスから25クラスに分けられる。試験監督者を倒したリィトは当然、1クラスとなった。今回、試験監督者を倒した受験者は、涼平を含めて6人いた。リィトはその6人の中で、一番倒した時間が速く、成績は学年トップだった。

 リィトは学校での生活を楽しみにしていた。なぜなら、同年代の悪魔との交流というのを今までしたことが無かったからだ。

 (どんな悪魔たちがいるのかな。)

 リィトは胸を膨らませながら教室の扉を開いた。教室に入ると既に多くの生徒がいて、いくつかのグループに分かれて会話をしていた。リィトは黒板に貼られている紙を見て、自分の席の場所を確認し、席についた。荷物を置いて、自分の席の近くで喋っていた一つのグループに話しかけた。

 「初めまして。僕の名前はリィト。よろしく。」

 「・・・。」

 「・・・。」

 グループの悪魔たちは一瞬リィトの方を見たが、無視をして自分たちの会話の続きを始めた。

 (どうして返事をくれないんだろ?話しかけ方、間違えたのかな?)

 リィトは同年代の悪魔と話したことがなかったので、自分の発言におかしな部分があったのではと考えた。リィトは気を取り直して、もう一度話しかけることにした。

 「何の話してるの?良かったら僕も混ぜてよ。」

 「・・・。」

 「・・・。」

 誰一人反応してくれなかった。

 リィトは諦めて、そのグループに話しかけることを止めた。

 (他にもグループはあるし、別の所に話しかけよう。)

 リィトはめげずに友達を作ろうと模索した。しかし、誰一人としてリィトの話を聞いてくれる悪魔はいなかった。リィトは諦めて席に座った。

 (どうして誰も返事をしてくれないのだろう?)

 リィトは疑問に思った。

 リィトが話しかけたのに、クラスメイトが答えなかったのには理由がある。リィトのいる1クラスは、成績優秀者が集まっている。成績優秀者は例外なく、魔力の高い者しかいない。つまり、皆貴族階級の中でも、上位に位置する貴族となる。そんな貴族たちは、毎月のようにパーティーを開いており、そのパーティーで既に出会っているのだ。しかも、今年の1クラスのメンバーはリィト以外は、顔合わせの機会があり、グループまでも形成されてしまった。つまり、初めから仲の良い集団に入り込むのは難しいということである。

 しかし、この要素はリィトが輪に溶け込めない要因にさほど影響しない。リィトが無視される原因は、リィトが没落貴族だからである。没落貴族とは上位の貴族が見下す対象なのである。この魔界は貴族と平民で2分されている。貴族は平民と住む世界が違う。そもそも、兵士育成学校に入る悪魔は貴族出身者しかいない。だから、平民は貴族からしたら眼中にすらないのだ。では上位の貴族は誰を見下すのか?そう、その対象が没落貴族なのである。21・22・23・24・25の5クラスが没落貴族の集まりである。リィトは本来ならこの5クラスのどれかに所属しているはずだった。もし、この5クラスのいずれかに所属していれば、友達の一人や二人くらいできただろう。要は、自分たちが見下す相手のはずが、自分たちよりも上にいる。それがクラスメイトたちにとっては屈辱だったのだ。だから、皆リィトを無視するのだ。リィトがこのことを知るのは、入学してから少し経った後だった。

 兵士育成学校の授業は、文字通り兵士を育成するための内容だ。近接戦闘・魔法の理論、実技や、魔獣討伐等の実践訓練がある。中でも、1から5クラスの生徒は、帝国軍入隊後に即戦力となることを期待されているので、授業のレベルが高い。

 リィトは圧倒的な成績を残した。近接戦闘・魔法、実戦において、同年代とは比較にならない強さを持っていた。この頃のリィトは、良い成績をとれば、皆が褒めてくれて仲良くなれるチャンスだと考え頑張った。それが逆効果とは知らずに。リィトが良い成績を残すたびに、

 「没落貴族のくせに。」

 「強いからっていい気になりやがって。」

 「結局は才能なんだよね。」

 周りの生徒はリィトに対して、妬み・嫉み・恨み・辛み・僻みの邪念が募っていた。自分たちにも、他の悪魔たちが羨むような才能を持っていることは棚に上げ、リィトを目の敵にしていた。

 リィトはそんな陰口を耳にしてこのクラスで友達を作ることは無理だと感じた。幸いなのかは分からないが、リィトに対していじめは無かった。1クラスの生徒は、没落貴族のいるクラスの生徒をいじめて楽しんでいた。リィトをいじめない理由は、単純に仕返しをされたら、束になっても負けるからである。弱い者しかいじめない。悪魔とは悲しい生物だなとリィトは考えていた。

 リィトは1クラスでは友達はできないが、他クラスなら可能性があると考え、同じ没落貴族がいるクラスを訪ねた。しかし、そこでも友達はできなかった。理由は1クラスと大して変わらず、同じ没落貴族のくせに、1クラスにいるなんて・・・。みたいな感じで嫉妬が原因だった。

 さらに、リィトに追い打ちをかけたのは教師の存在だった。教師も上位の貴族出身であり、同じ上位の貴族出身の貴族を優遇し、リィトを冷遇したのだ。学校にはリィトの味方はいなかった。リィトは学校に行くのがだんだんと辛くなっていた。

 リィトは学校に嫌気がさし、通うことが辛くなり、両親に学校を辞めたいと話した。すると、両親はすごい剣幕で怒り始めたのだ。両親の話を聞いていると、「お前が優秀な成績を残せば、俺たちは没落貴族じゃなくなるんだ。」「そうよ。何のために小さいころから、私たちが付ききっきり教育したと思ってるの。」両親は、リィトのことを自分たちが没落貴族を脱却するための道具としてしか見ていなかったのだ。

 リィトは、同級生・教師・両親と身の回りには敵しかおらず頼れる人等一人もいなかった。そんな辛い日々が一年過ぎ去った。兵士育成学校にはクラス替えという概念はない。成績順に分かれており、クラスによって授業の進行度が違うからだ。その代わり優秀な生徒にはいち早く兵士になってもらうために飛び級の制度がある。今年飛び級する生徒は、入学試験で試験監督者を倒した6名の生徒だった。

 リィトは環境が変わるからといって、状況が変わらないことは理解していた。上級生と同じ授業を受ける下級生。目ざわりのほかない。リィト以外の5人は、貴族パーティー等で、付き合いがあり、煙たがられることは無かったが、上級生との間に少し壁があった。幸い彼らは5人が互いに仲が良いので、新クラスでもさほど問題なかった。むしろ、自分たちは優秀だから上級生と同じ授業を受けているという優越感に浸っていた。

 リィトは飛び級したクラスでも、一番良い成績をとりさらに敵を作っったのだ。今までの敵に上級生まで加わり、さらに学校に居づらくなった。

 さらに1年が経ち、リィトはまた飛び級した。今度はリィト一人だった。二年連続飛び級した生徒は15年ぶりで、没落貴族は初めてと言うことでリィトの存在は学校中で有名になった。もちろん、誰一人リィトを褒めてくれる者はいなかった。有名になって、嫉妬する悪魔が増えただけである。

 ただ、リィトにとって全てが悪い話ではなかった。妹のラナが兵士育成学校に入学したのだ。試験はギリギリ合格で、25クラスになったという情報を得たリィトは早速教室に向かった。リィトが教室の様子をみると、ラナは友達と思われる悪魔、3人程と仲良く話していた。25クラスは、没落貴族の集まりなので、同じ境遇の者同士仲良くなったのだ。

 (良かったな。)

 リィトはラナに友達が出来ていて安心した。ラナとは家でほとんど話したことが無く、顔を知っている程度の存在だったが、実の妹だったの気になっていた。リィトは友達がいるラナに関わるのはよくないと思い教室を去ろうとしたが、一人の声で立ち止まる。

 「お兄ちゃん?」

 ラナは兄であるリィトの存在に気づき、友達の会話を中断してリィトのもとにやってきた。

 「話すのは、久しぶりだな。」

 「そうだね。・・・ちょっと別の場所で話さない?」

 「うん。」

 ラナの提案を受け入れ、人通りがほとんどない旧校舎に来た。

 「お兄ちゃんの話は入学したばかりの私でも耳にしているよ。・・・大変だね。」

 リィトの話はラナの耳にも届いており、リィトの今置かれている状況はおおむね理解していた。

 「そうだな。けど、もう慣れた。それより、ラナ頑張ったんだな。」

 リィトが両親から聞いた話によると、ラナは兵士育成学校に入れるほどの器は無かったと聞く。けど、ラナの世話をしていない両親のことだから、それが真実か否かは分からないが。

 「私頑張ったよ。パパもママも私のことなんていない者として扱ってるし、兵士育成学校に入学して見返そうと思ったんだよ。あの人たちは落ちこぼれで、兵士育成学校に入れなかったんだから。」

 「ラナはすごいな。」

 リィトは妹に感心した。両親に見放されたのに、不貞腐れずに頑張るなんて。リィト自身は今の環境に絶望して、ただ日々を淡々と過ごしているだけだった。

 「そんなことないよ。それよち、お兄ちゃん、学校嫌なら卒業したら?」

 「卒業?俺はまだできないぞ。順当に飛び級しても後2年はかかるぞ。」

 兵士育成学校は9年制の学校で、リィトは2回飛び級して5年生だ。今すぐに学校を卒業なんてできない。

 「前例はないけど、可能性はあると思う方法があるの。それは卒業試験を合格することよ。」

 「なるほど。」

 リィトは考える。この学校は飛び級制度があるので、全員が同じ授業を受けて卒業するというわけではない。9年生になった時に卒業試験を受けることになるが、飛び級している生徒もいるので、生徒の年齢はバラバラだ。それでも、卒業試験に合格さえすれば全員卒業できるのだ。卒業試験の意味は、その生徒が帝国軍で戦争に参加できる最低戦力を持っているかを試すものである。つまり、卒業試験に合格さえすれば、何歳でも卒業し帝国軍に入隊できる可能性がある。

 「これは可能性があるな。」 

 「そうでしょ。それでね、卒業試験で討伐する魔獣は毎年変わらないの。だから、お兄ちゃんが勝てそうなら、先生にお願いして卒業試験受けてみたら?」

 「そうだな。」

 リィトはラナと別れ、卒業試験で討伐する魔獣について調べた。学校がある帝都から少し離れた森に生息している魔獣みたいだった。リィトは試験内容を見ていると、卒業試験は2つあり、個人でする試験と団体でする試験があるみたいだった。個人でする試験は、個人の力を試すものである。団体試験は、軍入隊後を想定し、チームでの連携をみる試験となっている。

 (まずいな。)

 リィトは一人なので、団体試験を受けることができない。このままでは直ぐに卒業することはできない。

 (いや、待てよ。)

 この学校の理念は「強者になれ」だ。個人試験に比べ団体試験の魔獣はかなり強い。この魔獣を一人で倒せば問題ないのではないか?卒業試験の目的である、帝国軍の兵士に求められる戦力を大幅に超えることは間違いない。リィトはいけると考えた。

 とりあえず、行動あるのみだ。リィトは自分が本当に卒業試験で討伐する魔獣を倒せるのか試す必要があった。リィトは学校を休み、魔獣が生息している森に向かった。

 森までは歩いて行けば、一日以上かかる。本来の試験なら、学校が所有している馬車で行くので、数時間でたどり着く。

 リィトはトボトボと歩く。リィトの持ち物は武器と最低限の水と食料だけだった。余り持ち物を持っていても邪魔になると考えたからだ。リィトは適当なところで野宿をし、一日半かけて目的地にたどり着いた。

 早速討伐対象の魔獣を探した。しかし、ここでリィトはミスをする。リィトは森に入り、目印をつけずむやみやたらに歩いたのだ。リィトは魔獣討伐のことしか頭になく、他のことが一切頭から抜けていた。しかし、この時は自分のミスに気づいていなかった。さらにミスをする。森には討伐対象の魔獣以外にも多くの魔獣が生息しているのだが、リィトは下調べ不足で討伐対象の魔獣以外頭になかった。リィトの考えでは、討伐対象の魔獣2体を倒して、さっさと森を抜け出す計画だった。しかし、そんな計画は上手くいかない。討伐対象外の多くの魔獣に襲われ、その度に戦闘を繰り返した。気づけば一日はあっという間に過ぎた。リィトは暗くなったので、一度森を出ようと考えたが、自分の今いる場所が分からなかった。森の中で迷子になってしまった。持ってきた食料も底をつき、とりあえず森の中で野宿するしかなかった。リィトは、魔獣が登れない木の上で睡眠をとり、一日目が終了する。

 二日目は、食料の調達から始まった。まず、水源を探すところから始まる。リィトは、魔獣を倒しつつ森の奥へ奥へと進んでいく。夕方になり、何とか泉を発見し水源を確保した。食料は倒した魔獣の肉を剥ぎ、炎魔法で焼いて食べた。二日目は、水源と食料の確保で終了する。

 三日目は、いよいよ討伐対象の魔獣と戦った。まずは、個人試験の方の魔獣である。その魔獣は集団で行動しており、一気に7匹も相手をすることになった。一対多の戦闘に慣れていなかったので、苦戦したが、討伐することに成功した。この日は疲れが溜まったこともあり、これで終了する。

 四日目は、団体試験の魔獣の討伐を試みるも、対象を発見できずに終了する。

 五日目、いよいよ魔獣と戦う。団体試験の魔獣なだけあって強敵だった。一時間以上の激闘の末、無事勝利した。その日はそれで終了する。

 六日目、卒業試験の魔獣を全て討伐したので森の脱出を試みる。しかし、森の奥にいたので、一日で抜け出すことはできず終了する。

 七日目、一日かけて森を脱出しその日は終了する。

 八日目、帝都までの帰路の途中で終了する。

 九日目、無事帝都に帰還する。

 自宅に帰ると両親に物凄く怒られた。当然と言えば当然である。一週間以上、無断で家を空けたからだ。だが、リィトにとって両親はどうでもよかったので、話は聞き流した。

 次の日、学校に行くと学園長に呼び出された。学校でも、無断で長期間休んだことが問題となったらしい。リィトは学園長に休んだわけを説明し、卒業試験を受験したい旨を伝えた。学園長は悩んだが、魔界が実力主義であることが幸いし、受験する許可を得た。9年生が卒業試験を実施する時に、一緒に参加できることとなった。

 卒業試験は10か月後だ。リィトは卒業試験の日まで日々鍛錬を重ねた。団体試験の魔獣には苦戦したので、本番では楽に勝てるようになりたかったからだ。

 10ヶ月が経ち、いよいよ卒業試験だ。リィトは10ヶ月ぶりに森にやってきたのだ。試験は初めに個人試験を行い、次に団体試験を行う。リィトは飛び入り参加ということで、試験は一番最後に受けた。前回森に入った時と違い、今回は一対一だったので、何一つ苦労することなく突破した。団体試験の魔獣は、10ヶ月の修行が功を奏して、15分程度で倒すことができた。

 試験は合格し卒業することができた。リィトは8歳という最年少記録で卒業した。

 「いよいよ明日か。」

 リィトは軍隊に入隊する前日、ゆっくりと自室で休んでいた。軍隊でも当然、学校と同じように孤独だろう。しかし、軍隊に入れば実績が全てになる。リィトは戦果をあげて、自分の地位を確立し、ラナと二人で暮らせる日常を作ることを目標にした。

 

 

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