一 出会い
序
一人の少女が長い廊下を走っている。その少女の数十メートル後方を、3人の兵士が少女を追いかけている。
「何で見つかったの~。」
少女は走りながら愚痴をこぼす。
少女が兵士に追わている事には、しっかりと理由がある。少女は、兵士たちが住んでいる国の国宝を、宝物庫から盗んだのである。もちろん、何も策を無しに盗みに入ったわけではない。国宝を守る宝物庫であるから、見張りの兵士がいることは少女にとっては想定内だった。しかし、彼女の経過腕は見つかるはずが無かったのだ。見張りの兵士がいるといっても、宝物庫の前にでずっと立っているわけではなく、城の警備も兼ねて巡回することが基本だった。その理由は、宝物庫には厳重に施錠されているので、盗人には開けれられないとされていたのだ。しかし、彼女は極秘にその施錠を解除する方法を得ていた。宝物庫の警報や施錠を解除し、国宝を入手することに成功した。ここまでは順調だったのである。しかし、少女が宝物庫から出た時に、巡回中の兵士に見つかってしまったのである。少女は、巡回する兵士の経路や時間を知っていたので、本来なら出会うはずがなかった。しかし、今日に限って巡回ルートもしくは、巡回時間を変えたのか、理由は定かではないが少女の計画していた時間に、巡回していた兵が宝物庫に面する廊下を歩いていたのである。少女は盗みに入ったのは今回は初めてであり、見つかることを想定していなかったこともあり、軽くパニック状態になっていた。そのせいで、本来の計画予定の行動をすることができず、少女に向かってくる兵士たちを見て、反射的に逃げるように走ってしまったのである。彼女には敵を無力化する力が無いため、兵士たちの内の一人は、通信手段を用いて他の兵士に連絡する機会を与えてしまったのである。
そして、今に至る。
少女は走っている間に多少の冷静さを取り戻し、今の状況を分析した。
(私とあの兵士たちの速度に差はほとんどない。このままなら彼らに捕まることはない。問題は少し焦ったせいで、恐らく増援を呼ばれたことと、今私がどこを走っているかが分からないことね。幸いこの建物には行き止まりは無いから、後ろの兵士たちに追い付かれることはない。問題は、増援の兵士と後ろの兵士たちで挟み撃ちになることね。何とか、予定の時間まで捕まらないようにしないと。)
少女には逃げ切れる秘策がある。しかし、その秘策は少女自身の力ではなく、少女の協力者の力である。協力者は今の状況を知らないので、当初の手筈通りにことを進めていると少女は考えた。そして、その秘策には一定の時間を要するために、連絡をとって直ぐに秘策を行使することはできない。少女は下手に連絡を取るのではなく、逃げることに専念する方が良いと考えた。
しかし、少女の恐れていた事態が発生する。少女の前方から2人の兵士が向かってきたのである。つまり、少女は挟まれたのだ。少女はこれ以上走っても無駄だというこを悟り走ることを止めた。そして、廊下の壁際により壁に背を向けて、後方の死角をなくす。兵士たちも、少女との距離が数メートル程になると走ることを止め、携帯していた武器を構える。
「そこまでだ。無駄な抵抗はせずに、盗んだものを返してもらおう。」
一人の兵士が少女に告げる。
「・・・。」
少女は兵士の言葉に返答しない。
「どうやら力づくで取り戻す必要があるみたいだな。」
兵士たちはむやみに突っ込まずに、少女の攻撃に警戒しながらジリジリと距離を詰めていく。しかし、今回の場合はその警戒があだとなった。
少女の目の前にいきなり扉が現れたのである。これが秘策である。この扉は空間と空間を繋ぐ扉であり、一瞬で別の場所にいどうできるのである。この扉を形成する、つまり、空間と空間を繋ぐにはかなりの時間を要する。この扉は潜入の際にも使用しており、同時に複数の扉を作成することはできない。なので、潜入用の扉と脱出用の扉を同時に作成することはできない。しかし、この扉はそれらの欠点を差し引いても、利点の方が大きいのである。例えば、距離の話をすると、距離に制限はない。繋げたい場所が一万キロメートル以上離れていても何の問題もない。ただ、空間を繋ぐには、空間を繋ぐ者、今回で言えば、少女の協力者が脳内で思い描けることが条件である。繋げたい場所を的確に思い描く必要はないが、少なくともその場所が分かるような特徴を思い描く必要がある。例えば、看板である。○○商店街と書かれた看板を思い描けば、同名の看板が無い限り、その看板の場所は一つに断定できるので、その看板付近の空間とつなぐことができる。別に行ったことがなくても、本等で見ただけで脳内で描けることができれば使えるのである。また、この秘策が優れている点は、場所だけでなく、人物も対象になるところである。今回の場合では、協力者が少女の顔や身体を脳に思い描くことができれば、その対象の目の前に扉を形成することができる。
「けっこうギリギリだったね。」
少女は扉が現れる前に自分が捕まってしまう可能性も考慮していたので、そうならなかったことに安堵しつつ扉を開く。
兵士たちは突然現れた扉に警戒していた。見た目はごく普通の扉だが、いきなり何もない場所から現れたので、ただの扉ではないと兵士たちは判断して、下手に手を出すことができなかった。
少女は扉の中に入り扉を閉めると、扉は霧のように消えた。少女は無事に逃げだすことに成功した。
一 出会い
ピピッ ピピッ ピピッ
目覚まし時計が時計が鳴る。
少年は目覚まし時計を止めて、ベッドから起き上がる。
「もう朝か~。」
少年は自分の部屋を出て、階段を降り洗面台に向かう。
バシャバシャバシャ
少年はまだ残っている眠気を覚ますために、冷たい水で顔を洗う。そして、顔を洗った後、水分をとるためにタオルで顔を拭く。顔を拭き終わると、鏡を見て寝ぐせが無いかを確認する。
「問題はないな。」
自分の短い黒髪を見て、寝ぐせが無いことを確認すると洗面台をあとにする。
少年の名前は黒井涼平。身長175センチ、体重65キロで少し細身ではあるが、筋肉はしっかりついている健康的な身体をしている。彼は、私立神命学園高等部に通う2年生である。とある事情により、一人暮らしをしている。
涼平はリビングに行きテレビの電源を付け、ダイニングで朝食の用意をする。涼平の朝食はいつも食パンとそのパンの上にハムステーキをのせて食べているので、まずはパンをオーブントースターに入れる。その後、冷蔵庫からハムステーキを取り出し、フライパンを用いて焼き始めた。トースターでパンが焼きあがると、パンにバターを塗りその上に先ほど焼いたハムステーキを置く。これで涼平の朝食の完成だ。
涼平はテレビを見ながら食パンを口にする。涼平が見ている番組は朝のニュース番組だ。朝のニュース番組のいい所は、画面の左上に時刻が表示されていることだ。涼平は朝はこの表示を時計代わりにしている。また、朝のニュース番組は占い等の様々なコーナーがあり、そのコーナーが始まる時間は、おおよそ一定なので、時計を見れない時でも、テレビから流れる音で大体の時間を把握することができる。
涼平は朝食を終えると、使用した食器等を洗い、歯を磨くために再び再び洗面台に向かう。歯を磨き終えると、制服に着替える。大体制服に着替えた時点で、時刻は7時45分付近になっている。涼平は、朝8時に家を出るので、この15分の間にスマホを起動し、ソシャゲのログインを済ませる。
8時になり涼平は戸締りをして学校へ向かう。
涼平の家から学校までは、徒歩15分の距離である。涼平はいつものように歩いていると、「どいて、どいて。」と声が聞こえた。涼平は立ち止まって自分の前方と後方を確認するが、周りに通行あるいは通勤のために歩いている人はいるが声を発したと思われる人物はいなかった。
「空耳かな。」
涼平は再び歩き出そうとした時、「危なーい。」と言う声が聞こえ、その瞬間涼平の頭部に重い負荷がかかり涼平はうつ伏せに倒れこんだ。
「いてて。」
涼平は立ち上がろうとするが、自分の背中に重い何かが乗っていることに気づく。
「大丈夫?」
背中の方から声が聞こえる。
涼平はうつ伏せ状態で、背中に何かのっていることから、後方を確認することができない。
「誰か知らないが、俺は今どういう状況なんだ。」
涼平は声の主に尋ねる。
「ごめんなさい。私が空から落ちてきて、あなたが私の下敷きになっちゃったの。」
「なるほど。」
涼平は状況を整理する。どうやら、先ほどの「どいて、どいて。」の声の主は空からだったようだ。通りで気づかないわけだ。涼平は一人で納得した。
「悪いけど、俺の上からどいてくれないか。」
涼平は声の主に伝える。
「そうよね。ごめんなさい。」
その声が聞こえた後に、涼平の背中が軽くなった。声の主が自分の背中から離れたと確信し、涼平は立ち上がる。そして、声の主の方を見る。
声の主は涼平と同じ年くらいの少女だった。ただ、その少女の見た目はすごくよかったのである。少女の身長は165センチくらいで、腰辺りまで伸びている綺麗な金髪に、透き通るような碧いひとみ。身体も、グラビアアイドル顔負けの胸の大きさ、腰のライン、お尻の持ち主だった。
(かわいい。)
涼平は声には出さなかったが、少女を見てとっさに出た感想だった。
「大丈夫?ボーっとしてるけど。」
少女は涼平を心配している様子だ。
「大丈夫だ。そっちこそ怪我はしてないか?」
「私は大丈夫だけど、あなたは大丈夫なの。私、大分高い場所から落ちてききたけど怪我とかない?」
「大丈夫、怪我はしていない。」
「そうなんだ。人間って思ったより頑丈なんだね。」
「まあ、俺は特別だからな。じゃあ、俺は学校があるからもう行かなきゃならないんだ。」
涼平は少女にそう言うと、早々にその場を立ち去った。なぜなら、涼平の中には一つの考えが生まれていた。少女が空から落ちてくる。そして、無傷である。そのような状況が、この世界であり得るはずがない。これ以上、少女といると何か厄介ごとに巻き込まれそうだと涼平は考えたのだ。
涼平は少女から逃げるように去ったので、普段よりも早く学校に着いた。
私立神命学園高等部は、普通科偏差値60、特進クラス偏差値68、音楽家偏差値55の三つの科からなる、東京でも有名な進学校だ。
今日は始業式で、生徒玄関前に各学年の新しいクラスが張り出されている。涼平は新2年生なので、新2年生のクラスの書かれた紙を見ることなる。涼平は普通科でクラスは1組から6組のいずれかになる。新しいクラスが張り出されている紙には、紙の上部に2-1・2-2といったように、クラス名が記載されており、その下にそのクラスに在籍する生徒の名前が五十音順にのっている。涼平は名字がカ行なので、紙の上の方を眺めた。
「2-3か。」
涼平は自分の名前を見つけた後、自分と同じクラスになる生徒の名前を確認した。これは、どの学生もおそらくそうだと思うが、自分の新しいクラスに知っている人、特に仲が良い人がいるかを確認することは大切である。涼平は知り合いの名前を見て安堵し教室に向かう。
教室に入ると、同じクラスになれたことへの喜びを共感する生徒や、友達がいないのか一人で席に座っている生徒がいた。黒板に席順が記載されており、涼平は自分の席を確認しその席に座った。涼平の知り合いはまだ教室にはいなかったので、スマホを見て時間を潰すことにした。
「おっす。また同じクラスだな。」
涼平がスマホを操作していると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「そうだな。これから1年よろしくな、大樹。」
涼平は声の主に返答する。
少年の名前は山本大樹。身長は涼平よりも少し高く、がたいも良く、いかにも運動部という体つきだ。実際、野球部に所属しており、野球部の伝統ともいえる、坊主頭である。
「どうやら、同じクラスの男子で去年一緒だった奴は、俺と涼平と翔の3人だけだな。」
「まあ、しょうがないさ。文系を選ぶ男子は少ないからな。」
涼平たちは2年生なので、文理選択をしており、涼平たちの学年の男子の内約8割が理系を選択している。逆に女子は、約7割が文系を選択している。クラスは1から3組が文系の生徒で固められ、4から6組は理系の生徒で固められている。
涼平は大樹と喋っているとチャイムが鳴った。大樹は自分の席に戻る。
教室に先生が入って来てホームルームが始まる。
今日は始業式なので授業は無く、始業式を体育館で行った後、クラスで自己紹介と委員会決めが行わるのみで学校は終わった。
「涼平どこか飯でも食いに行くか?」
大樹が涼平に近寄ってきた。その隣に、爽やかな高身長のイケメンがいる。彼は山口翔、サッカー部に所属していて、涼平とは大樹同様去年同じクラスであった。
「二人とも部活はないのか?」
「ないよ。明日は実力テストがあるからね。」
翔が涼平の質問に答える。
「そうか。行こう。」
涼平はリュックを背負い椅子から立ち上がる。
「私たちもその話に加わってもいい?」
二人の少女が涼平たちの方へ歩いてきた。
「聖来か。いいぞ。」
大樹は返答する。
二人の少女の内、聖来と呼ばれる少女の名前は神無月聖来。身長160センチくらいの長いポニーテールが特徴の少女だ。
「すみません。せっかくの男子の集まりに女子が参加してしまって。」
もう一人の少女が口にする。
彼女の名前は八神美影。身長155センチくらいで、髪は肩にかかるくらいの長さである。
「気にすることはないよ。それに、男子としては女子と一緒の方が嬉しいんだよ。」
翔が言う。
実際その通りである。そもそも男子高校生は女子と遊びたいという気持ちは、常日頃心の片隅にある。ましては、聖来と美影は美少女といえる見た目をしているので、その気持ちは増幅しているだろう。
ではなぜ涼平たちがこの二人と食事するくらい仲がいいかというと、一つは去年彼女たちも涼平たちと同じクラスであったこと。もう一つは、大樹と聖来が幼馴染であることだ。元々二人は仲は良く、その中に涼平たちが入ったということだ。
「じゃあ、近くのファミレスにするか。」
大樹は提案する。
「いいんじゃないか。」
涼平は賛成する。それに続いて、他の人たちも賛成する。
ファミレスは学生のたまり場としては定番だ。料理の値段がそこまで高くなく、ドリンクバーを頼んで長時間滞在することも可能だ。
涼平たち5人は教室を出て生徒玄関に向かう。
涼平たちは上靴から外靴に履き替えて校門へ向かう。
「何か人が集まっているな。」
大樹が校門の方を見て言う。
「ほんとだー。何かあるのかな?」
聖来も校門を見た。
確かに校門には百人ほどの生徒が集まっている。普段はこんなに人は集まってはおらず、せいぜい十数人が校門の前で集まってだべっているくらいだ。
「やたら男が多いな。」
涼平は校門の集まりを見て、感じたことを口にした。
「行ってみましょう。何かあるかもしれませんよ。」
美影はあの集まりに興味があるみたいだ。
涼平たちは校門の集まりに近づいた。
その集まりは、一人の少女を多数の男が囲むような形でできていた。集まっている男子たちの声を聴くと、名前を尋ねたり、デートのお誘いをしているようだ。ただ、人が多すぎて肝心の少女の容貌を拝むことはまだできていない。
涼平は人混みの中をくぐり抜けて少女を見に行った。
「えっ。」
涼平はその少女を見てとっさに漏らした言葉だった。その少女は涼平が今朝出会った少女だったからだ。涼平はどうして彼女がここにいるかは理解できなかったが、嫌な予感がした。
「あっ、見つけたー。」
少女の声が聞こえる。涼平は「自分のことじゃない。」と自分に言い聞かせつつ彼女を無視しし、彼女に背を向けて逃げようとする。
「ちょっと何で無視するの。」
少女は涼平の肩に手をかける。
涼平は逃げきれないと判断し、
「やあ、今朝以来だな。俺に何か用か?」
と少女に問いかける。
「うん。用があるの。でも、ここではちょっと話せないから、どこか落ち着いた場所に行きたい。」
「確かに。」
男子たちの集まりが、涼平に嫉妬の視線を浴びせてくる。
「涼平どうしたんだ。」
大樹と翔がやっと人混みも抜けて集まりの中心、涼平が今いる場所にたどり着いた。
「大樹か。悪いちょっと用事ができた。ファミレスは4人で行ってくれ。」
涼平は大樹に一言謝ると人混みを抜ける。少女は涼平の後を追う。
大樹は瞬時に何かを察したのか
「明日、何があったか教えろよ。」
そう一言言った。
涼平は少女と逃げるように遠くまで歩いた。
「ここら辺なら大丈夫か。」
涼平が今いる場所は、学校から1キロ以上離れた場所だ。涼平はここなら、他の生徒に出会うことはないだろうと考え足を止める。少女も涼平が足を止めたことを見て足を止める。
涼平は少女の方へ振り返り質問する。
「とりあえず、名前を教えてほしい。」
「私はライト。あなたの名前は?」
ライトは返答する。
「俺は黒井涼平だ。」
「涼平ね。よろしくね。」
「ああ、よろしく。ところでライト、ファミレスで話を聞こうと思うがそれでいいか?」
涼平はライトに尋ねる。
「ファミレス・・・?ああ、ファミリーレストランの略のことね。問題ないよ。」
ライトの返答に少し違和感を感じた涼平だったが、とりあえずファミレスに向かうことにした。
涼平はスマホを取り出し一番近いファミレスを探す。200メートル先に一番近いファミレスがあるみたいなのでそこにすることに決めた。
「こっちだ。」
涼平はライトについてこいとアピールし無言で歩き始める。
涼平はライトのことを警戒していた。空から落ちてきたこともそうだが、学校の前に待ち伏せていていたことも不可解だ。涼平はライトに名前や学校等の自分に関する情報を一切彼女に明かしていない。それなのに学校の前に現れた。制服を調べて学校を特定したのか、あるいはあの場所から一番近い学校である私立神命学園を待ち伏せしたのか。学校を特定する方法は色々あるが、初対面の涼平に学校を特定してまで会う理由がない。
涼平が思考を巡らせていると目的地であるファミレスに着いた。涼平は入り口を開けて店内に入る。ライトも続けて入る。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
店員が聞いてくる。
「はい。そうです。」
涼平が答えると、店員が席に案内してくれた。
「ご注文がお決まりになりましたら、そちらのボタンを押してください。」
店員はそう言うとその場を離れた。
涼平とライトは席に座る。涼平はメニュー表を二つ取り、片方をライトに渡す。
「俺がおごってやるから好きな物を頼んでいいぞ。」
「ありがとう。」
ライトはそう言うとメニューとにらめっこする。
数分経ち涼平は注文する料理を決めた。
「俺は食べる料理を決めたぞ。ライトは決まったか?」
「ちょっと待って。まだ決められないよ~。」
ライトがそう言うので涼平は待つことにした。
さらに数分が経つ。
「ライト。まだ決まらないのか?」
「うん。ごめんね。どれも食べたくて迷ってるの。」
ライトが小学生みたいな返答をする。
「何で迷ってるんだ?」
「このハンバーグ定食かスパゲッティ。両方頼むとお腹がいっぱいになると思って・・・。」
(ハンバーグ定食やスパゲッティなんて今までにも食べたことがあるだろうに何をそんなに迷うんだ。)と涼平は疑問に思ったが、このままではライトが決めきるにはさらに時間がかかるだろうと考え提案する。
「俺がハンバーグ定食を注文するつもりだから、ライトに半分やるよ。だから、ライトはスパゲッティにすればいい。」
「いいの?」
「ああ。」
「ありがとー。」
ライトは満面の笑みを浮かべる。
涼平は(小学生かよ。)と心の中でツッコミをしつつ、店員を呼び注文する。
注文してから、10分弱が経過し料理が運ばれた。
「いただきます。」
涼平はナイフでハンバーグを半分に切り、約束通りライトにあげる。
「ありがとー。」
ライトは再び満面の笑みを浮かべる。
(まあ、この笑顔がハンバーグ半分で見れるなら安いもんだな。)
涼平はそう思いつつハンバーグを口にする。
食事を終えて数分が経ち、涼平はそろそろ聞くことにした。
「ライト。俺に用があるといったけど、何の用があるんだ?」
「実は私、神様なの。」
ライトは突拍子もない一言を発した。