第4話 異世界転移?
歓声の中、どうにか体を起こそうとしたが、
頭に鈍い痛み、そして、強い目眩のせいで再び倒れ、
そのまま気を失ってしまった。
どれぐらい眠っていたのだろうか?
目を覚まし、体を起こしたのはベッドの上だった。
軽い目眩がしたが倒れる程ではなかった為、
ベッドから出て立ち上がろうとしたのだが...
ドン!ガラガラ..ガッシャーン‼
「いてててて...」
体の節々が強く痛み、うまく歩けずフラついて、
テーブルに寄り掛かったのだが、テーブルを押し倒し転び、
その上に載っていた物を盛大な音と共に床に落としてしまった。
あれ程の音を立てて転んでしまったのだから、
誰かが気付いたのであろう。
部屋の外からパタパタと駆けてくる音がした。
体を起こそうとしたがうまく立てず、
そうこうしている内に、ドアが開けられ、
盛大にやらかしたみっともない姿のままで、
駆け付けた者と視線が合った。
「!!...大丈夫ですか?」
盛大にやらかし、みっともない姿の僕を見て、
呆れるのでもなく笑うのでもなく、
優しく気遣う少女。
そんな少女に一時見惚れてしまった..まあ少し変な間があったけども。
少女はショートヘアの黒髪で、
瞳も茶色がかった黒?顔立ちも良く、
そして、カワイイ感じで上の前歯がちょっと出ている。
僕と同じぐらいの背で、歳も近い感じの少女だった。
「...チョッ..と転んだだけなので、大丈夫だと思います」
見惚れていてちょっと嚙みかけたが、
そう応答する。
急いで起き上がろうとするが、
痛みのせいもあるのだろうけど、
なぜか、いつもより体が重く、
思うように立ち上がれなかった。
「ご無理をなさらないで下さい!」
今度は叱るような目付きをしつつも、
少女は立ち上がるのを手伝い、
ベッドに腰掛けさせてくれた。
「...すみません。有難うございます」
申し訳なさ、気恥ずかしさを感じつつ、
顔を上げて少女を見た。
少女は椅子に座っており、
さっきは何とも思わなかったが…決して顔に見惚れていて気付かなかった訳ではない、改めて見てみると、という意味でだ…ゲームや映画などでよく見るファンタジーの世界の村娘の服装をしていた。
姿形は僕と同じ世界の少女のように見えるが、
身なりはザ・ファンタジーである。
気を失う前、ユ・ウ・シャ・ショ・ウ・カ・ン?やら、
イ・セ・カ・イ?やらと言っていたが、
あれは夢だったのであろうか?
病院とかにはとても見えないが、
僕の世界の知らない場所なのかも...
部屋の中を見回すが、
現代の造りにしてはみすぼら...ではなくて、
古く趣があるように感じる。
考え込んでいても答えが出る訳でもなく、
素直に聞いてみる事にした。
見てばかりで待たせ過ぎたのか、若干笑顔が引きつっているような...もしかして怒ってる?
「...ゴクッ、え、え~と、ここはどこですか?」
怒ってないよね?とビビりつつも、
どうにか言葉を引き出せた。
...あれっ?そういえば、普通に言葉、通じてる?
異世界といえば、言葉が通じないのが定番である。
なぁ~んだ、ユウシャショウカンや別世界云々は、
ただの気のせいだったんだと自分で帰結しかけたのだが、
少女の返答は...
「ここは【世界樹の守り里】。
“世界樹”の〖守り人〗..
聖域の守り手たちが暮らす里の里長の家です、勇者様」
少し表情が柔らかくなった少女は気遣わしげにそう答えたのであった。
「えっ...!?」
僕は思わず声を上げてしまった。
どこ?それ?と聞き返さなかっただけマシであろう。
全然聞き覚えのない場所だが、
ひとつだけ分かる単語があった。
“世界樹”ってあの“世界樹”の事だよなぁ~。
知らない場所なのに知っている“世界樹”。
...これだけだと判断が付かない。
そう思いつつも、
今度はどのくらい気を失っていたのか知る為、
日付を尋ねてみた。
「今日は世界樹暦何年何月何日ですか?」
...あっ!世界樹暦は余計だったかな?
「世界樹暦...?今日はナナ暦22022年の7月7日..いえ、8日になった頃でしょう。もう、真夜中ですから...」
少女は世界樹暦に引っ掛かりを感じつつも、
そう答えてくれた。
「えっ!...ナナ暦?二万二千...⁉」
日付を聞いたはずなのに、
肝心の日付は耳に入ってこず、
別の方に気を取られてしまった。
少女は僕が呆気に取られている様子を察して、
「勇者様、我々の都合で勝手に召喚してしまった事を、
お詫び申し上げます。
ですが、我々は〈勇者召喚〉に縋るしかなかったのです。
身勝手な事は、重々承知しておりますが、
何卒、我々にお力添えいただけないでしょうか?」
...何てキレイなかのじ..じゃなくて、
丁寧語でしょう。
さらに見惚れ..ではなくて、呆気に取られ、
返って冷静になった。
僕は意を決して、
告白..じゃあ~なくて、尋ねた。
「...ゴクッ、好...ちがう、ちがう!
ゴホン...ここは異世界ですか?」
「...す?...え~と、〈勇者召喚〉は別の世界..異世界から〈勇者〉を召喚する儀式だと聞き及んでおります」
少女は気付く事なく、そう答えてくれた...危ない危ない、
危うく告白するところだった。
...って!そんな事よりも!!
「...異世界転移?いや、異世界召喚?...か」
僕はそう呟き、やっぱり、
異世界へとやって来たのだと再確認する事になるのだった...
「面白い!」
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