第2話 世界の異端者?
ガバッ!
...また悪夢だよ。
..最近よくうなされる。
これはストレスが原因だな。
僕の名前は時任技術。
今では普通に名付けられるようになった所謂キラキラネームだ。
名前は親が名付けたそうだが、
僕には実の両親はいない...
幼い頃、教会の赤ちゃんポストに入れられていたそうだ。
一応は親が名付けた名前なのでそのまま技術を名乗っているだけだ。
神父さん…僕の育ての親…が言うには、
今の世でも珍しい名前なのでそのまま名乗っておけば、
もしかしたら、親が訪ねてくるかも...との事だ。
苗字はなく名前だけだったので、
神父さんの苗字…時任を貰った。
中学一年..13歳になった今でも、
僕を訪ねて来る人はいないので諦めており、
生みの親はいないものと考えている。
それに、今さら訪ねられても僕には会う気はない...
まあ、そういう訳で僕の家族は神父さんやシスター、
そして、同じ孤児院に暮らす身寄りのない
兄弟姉妹たちだ。
孤児院と聞くと大変そうに思うかもしれないが、
ここの孤児院は恵まれており、
普通の家庭と同じ環境だ..
まあ、家族の人数は現代では考えられない程の
超大家族ではあるが...
普通の家庭と言ったが何も問題がない訳ではない。
寧ろ、問題だらけだ。
「こら、仲良く遊びなさい!..そこ、悪戯しない!」
「ふぇーん、しんぷさ~ん..おもちゃ、とられた~」
「きゃっ!」
「しすたー、きょうは、しろだー!」
とこんな事は日常茶飯事だし、
お手伝いという名の当番制の仕事は当たり前。
「こら~!掃除さぼるな、男子たち!!そこ!箒でチャンバラしない!!」
「しんぷー!さんば、かおうぜぇー、そうじ、めんどくせぇし..んっ、さんばだったっけ?」
「すみませんね..お金が無いもので..」
「神父さん、大変です!Gが出ました!!厨房で女の子たちが暴れてます!至急、応援を!!」
「はい、直ぐに行きますね!」
そんな感じの戦場を生き残っても、お小遣いが出る訳でもない。
他にも色々とあるが、愚痴になってしまうので割愛。
まあ、そんなこんなで、僕は家事全般を熟せるし、
その他諸々の知識や技術も身に付いている。
こんな日常ばかりで、日々、てんやわんやではあるが、
別に家族の雰囲気が悪い訳ではない。
家族みな、遠慮がない程、仲良しなのである。
特に仲の良かった子もいたが、
小学校の低学年の時に、
どこかの養子として引き取られていった。
その時は色々とあったと思うのだが、
今では余り思い出せな…(ズキッ!痛っ!)い…
最近、頭痛が多いなぁ~、
ストレス溜まってるのかなぁ...
という訳で…普通とは言えなかったね…不自由なく暮らしてはいる。
学校もかなり良い所に通わせてもらっている。
神父さんの伝手…というか教会の伝手だと思うけど…で、
小・中・高一貫校の【世界樹一貫校】に通っている。
かなり有名な学校らしく、
敷地も人も物凄い超マンモス校だ。
有名な学校なので、様々な所から人がやって来る。
..なので、孤児院よりも学校の方が問題だらけだった。
孤児院では皆が遠慮などせず、
分け隔てなく過ごしていたが、
学校では人種や身分・上下関係、
年齢、能力の違い等々、
様々な柵が発生している。
そのせいで、無用な争い・暴力、
差別・虐め、権力闘争・派閥抗争等々が横行している。
そう、今まさに、僕もその渦中にいるのだ。
所属している部活..剣道部で教育的指導という名の虐めに遭っている。
弱者として虐めに遭っている訳ではない。
どちらかと言えば…自分で言うのも何だが…かなりの強者の部類に入ると思う。
なぜなのか?と言うと...
武芸全般の達人である師匠がいたからだ。
教会敷地内にある道場で、
つい最近までは訓練という名の地獄の修行を受けていた。
何で教会の敷地に道場があるんだ!
とツッコミを入れられる方も多いと思われるが、
あるものはあるのだから仕方がない。
師匠..道場主が私用で長期不在の為、
仕方なく学校の剣道部に所属した。
要は弱い者虐めに遭っている訳ではない。
妬み嫉み僻み、所謂、嫉妬心や強者に対する恐怖心の裏返し等による嫌がらせに遭っているのである。
人はなぜか、突出した者や世間一般から離れた考え、行動する者…世の常識と誰かが勝手に決めた枠組みから外れる者、アウトサイダー…を差別するようになっている。
弱者であれ、強者であれ、普通の枠組みから離れた者は、
淘汰・排斥されていってしまう世の中。
皆、本来は一人一人違うのが当たり前。
みんな違って、みんな良い!...はずなのに。
「はあぁぁぁ~~~...何でこんな事に...」
盛大な溜め息が漏れてしまった。
事の発端は、入部して間もなくの上級生による歓迎の儀式という名の多対一の新人虐め。
それを実力で苦も無く、
返り討ちにしてしまった事だろう。
上級生たちは、実力で従わせる事が出来なかったので...
「おい、生意気な一年!お前は練習する必要ねぇだろ?この汚なくてクセェの全部、洗っとけ!..あと、道場や更衣室、シャワールームもきれいにしとけ!...もう終わった?..げえっ..ホコリ一つない...腕立て・腹筋・背筋・スクワットをぶ、部活が終わるまでし、しとけぇー!」
と誰もが嫌がる雑用や何の意味も持たない見せかけの筋トレしか僕にさせようとしない。
部活では最初の虐め以来、
部活動と呼べる事をしていないのだ...
「別の部活に入ろうかな~」
ここ超マンモス校では様々な部活がある。
そもそも、剣道部に入ったのは師匠に教えてもらった数々の武芸の中で唯一の得意...であったからに他ならない。
「剣の道なら、ほんの僅かな才能があるかもな?」
何故かの疑問形で言われていたけども、
他の武芸も才能がないだけであって、
下手くそではなかった。
だから、剣道部に拘る必要はない。
...ないのだが、師匠がこの事を聞いたら、
「ぷっ、そんな事で逃げ出すなんて、負け犬...か?」
こんな風に含み笑い込みで言うに違いない。
解決しようと努力しなかった訳ではない。
頑張れば頑張る程、嫌がらせはエスカレートしていき...
今に至るという訳だ。
そんな事ばかり、考えていたからか、
ズキン..ズキン..と頭に鈍い痛みを覚える。
「こんな世の中なんて...」
そう言いかけたのだが、世界がオカシイというよりも、自分がこの世界の異物?…人だから、世界の異端者?の方が正しいのかな…のように感じる。
他の孤児院の兄弟姉妹は問題なく過ごしているのに...
ズキン!!くっ、まただ、段々、痛みが酷くなっている気がする...
「面白い!」
と少しでも思ったソコのアナタ!
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