第18話 招請?
カーナに案内されて、
里長達が待つ建物へとやって来たアーツとスライム。
その後ろにはアーツを勝手に追放した張本人である〖守り人〗モリトも項垂れながら、距離を置いて付いて来ていた。
このモリトによって追放され、里の外を彷徨っていたアーツは、カーナによって、この広間へと無事に帰還出来たのである...おまけの一匹を引き連れて。
...帰還?いや、寧ろ、頼まれて戻って来たのだから..招請?..の方が正しいのかな?
そんな事を考えられるぐらいには立ち直ってきた僕だけど...
目の前の光景は、な~んか以前見たものと同じ気がするんですけども?
「勇者様、数々の御無礼、深くお詫び申し上げます。お怒りは御尤もですが、何卒、再び、私共の願いをお聞きになってはもらえないでしょうか?」
里長達は再度の土下座で尋ねてきた。
...あれ?..デジャブ?..ループシテナイデスヨネ?
心でそんな冗談を言えるぐらい落ち着いてきてはいたので、
再びではあるが、僕は怒ってはいないし、
そんなに畏まられても困る事を伝えた。
...まあ、モ..名前なんて言ってたかなぁ~?カーナが確か呼んでたはずだけど、あの時はスルーしてたからねぇ~...名前なんてどうでもいいっか!あのバカ者にはまだ若干、怒りを覚えるからね!
カーナにぶっ飛ばされたはずなのに、何食わぬ顔で後ろから付いて来てもいたし...
「何と寛大な御方なのだ!」..と感動されてしまった。
...どちらかと言えば、狭量な心の持ち主だと思うけどね!
..簡単な挑発に乗ってしまったし、冷静に考えもせずに行動していたからねぇ~。
だとしても、僕の返事は以前と変わりない..いや、ちょっと変わったかな?
「...前にも言いましたけど、僕は皆さんのお力になれないと思います..それでも良ければ、微力ながらもお手伝いさせて頂..?」
僕は途中まで言って、皆の様子がおかしい事に気付く。
...せっかく、今から僕が良い事を言うはずだったのに!
それを妨げるのは誰じゃ!..という感じで皆の視線を追うと...
はいそうですね!...すっかりと忘れてましたよ!!
だって、ここまで来るのに誰も何も言わなかったので紹介が後回しになるのは..仕方がないよね!
この何とも言えぬ沈黙は僕のせいではないと!...言い訳ぐらいいいんじゃない?
皆の視線は下の方を向いており、若干、横にもズレている。
そう、里長達が警戒しながら見ていたのは...
もちろん、みんな、もう分かっているよね?
何を隠そう!…まあ、実際は隠れるどころか、何かアピールしてるっぽいけども…スライムですよね!
「...そ、その、勇者様?大変申し訳ないのですが、そのスライムは?」
えっ!今更?..と口に出さなかっただけ褒めてほしい。
...何となくは想像つくけども..今頃、気付く理由に。
里長達は僕たちが入ってすぐに土下座で待ち構えていた。
先程まで、頭を下げ、土下座の姿勢のまま、
謝罪していたのだから見えていなかったのであろう。
しかし、僕が怒っていないと告げた事で、
安心し少し余裕が生まれた。
ほっと一息つき、顔を上げた所で、
やっと気付いたのであろう...
なぜ、ここにスライムが?..と。
それにしても遅いよね?
ここまで一緒に付いて来てたんだから...
僕はてっきり話が通っているんだとばかり思っていたよ。
誰にも呼び止められなかっ...
あれ?ちょっと待てよ!そういえば..
ここまで来るまでの間に、
広間や建物の扉の前に見張りはいなかった..
里の出入り口である門には流石に、
門番らしき人はいたような...?
ああっ!そうか!カーナのひと睨みで、
バカ者の取り巻きだけでなく、
門番の人も何も言えなかったのかもしれない!
ブルルッ...急に寒気が..カーナに睨まれてる気がするけど..気付かなかった事にしておこう。
ま、まあ、この件は触れないでおこう...触らぬ神に何とやらだ!
無難な説明を心掛けねば!
.........
......
...
「...森で、あのご老人に会われた...そして、スライムと意思疎通し、仲間にしたと...?」
「そんな感じですかね、はぃ..!」
僕はそう言いかけて、カーナの警告を思い出した!
テイマー..じゃなかった、
コッチでは〖魔物使い〗だったっけ?
主に魔族が有する特別かつ非常に危険性を孕む職である事を...
僕はここで勘違い..というか、
意に沿わない決断をされたら、
自分の命運が尽きる...かもしれないので、
細かな状況説明とこのスライムがどれ程、
有能であるかを追加で語った。
「...という訳で、どちらかと言えば、僕が特別な能力を持っているのではなく、このスライムの方が特別なのです!なんちゃら使いじゃないですし、なんちゃら族でもないですからね!..僕は!!」
何か言い訳くさくなったが、
一応は予防線を張れただろう。
いや、ほんと!言い訳じゃないんですよ!!
よ~くよく振り返ってみると、
何かの叫び声で、
最初に気付いたのは僕なのかもしれない。
けど、僕はその後、所詮、ファンタジーの世界でも弱肉強食か..と見捨てようとした。
そ・れ・な・の・に!このスライムは僕に助けを求めてきたのだ!!
...僕は隠れてたつもりだったんだけどもね!
ゴブリンは背を向けていたから、
気付けなかったのかもしれないが、
あの位置からスライムが僕に気付くのは難しいはずなのだ。
そう〈気配察知〉的なスキルを持っていない限りは...
だって、もし隠れているのが分かってたとしても、
それが敵か味方か分からないはずなのに、
助けを求めるなんておかしいでしょう?
それなのにあれは確実に僕の助けを信じている感じだった...
まるで、助けを求めれば、絶対に助けに来てくれるかのように..
まあ、僕の勝手な思い込み..という線も否定出来ないけども。
...一旦、それは置いておこう..この時だけでの事ではなかったしね!
イヌ...じゃなくて、フォレ..なんとか...もう、オオカミでいいや!
そのオオカミが割り込んできた時も、そうだった。
僕の所からはゴブリンで隠れて見えなかったのもあるが、
ゴブリン急襲の為に潜んでいたはずのオオカミにも、
逸早く気付いていた。
まあこれが、僕がこのスライムを特別だという理由の一つ目だよね!
...んっ?でも..あれっ!?
..そうだとするのなら、もしかして、あの叫び声…ではなくて、助けを求める声だったのかな?…の時点ですでに僕に気付いてた...のか?
...これも今は考えても分かんないから後回しにしよう、そうしよう。
...二つ目はね!あの未知の..もう、未知の老人ではなくなったな..灰色の老人はオオカミだけを攻撃した..という点だ!
スライムの方は初めから攻撃するつもりはないという感じであった。
まあ、何か特別的な感じで言ってたのも確かだ!
でも、あの老人は最初から、ストー..ではなくて、
監視してたって言っていたから、
危険ではないと判断したのかもしれないけど...
三つ目は、何と言っても、僕が仲間にしたいと思った一番の理由の〈収納〉的なスキル..です!!
だって!これがね!!もし、僕が想像した通りのアイテムボックス的なものだったら..!!!
かなり便利でしょう?
容量は、今の所、まだ分からないけど、
それを抜きで考えても、荷物の負担は減るだろうし、
他にも色々と使い道が考えられる、
正にファンタジーなスキルだ!!!!
...ちょっと興奮しすぎたね..四つ目にいこう!
まあ、これもまだ確信は持てないのだが、
意思疎通というか、言葉を理解してる?
..こちらの意思を認識していると言った方が、正確かな?
最初は僕だけなのかと思っていたんだけども、
カーナの言葉も認識してるっぽいし?
さっきまで、カーナの呟きで、
僕と一緒に撃沈してたからねぇ~。
...とまあ、説明しつつ、
僕は頭の中で考えを整理していた。
仮定の段階だけど、
実際に見てもらった方が早いかな?
一つ目と二つ目は今は難しいけど、
三つ目、四つ目はここですぐに検証出来るはずだ!
このプレゼンテーションには、スライムを仲間に出来るか..というより、僕とスライムの命運がかかっているんだから..お願いだから.頼むぞぉ~!
...本当に命までは取らないよね?大丈夫だよね?
次回!最終回!..とかならないよね?
バッドエンドとか?Fin.とか?
..せめて、また、追放とかぐらいにしてほしいなぁ~。
かなり弱気になりつつも、自身とスライムの命運を賭けたプレゼンテーション..検証を始めるアーツなのであった。
「面白い!」
と少しでも思ったソコのアナタ!
ぜひ下の評価☆☆☆☆☆をチェックして下さい。
★5でも★1でも良いので、よろしくお願いします。
ブックマーク登録していただけたら、モチベーションにも繋がりますので、
お願いしますm(_ _"m)




