第9話 イヌ?
ゴブリンに今にも食べられそうなスライムを救う為、
行動に移った僕こと時任技術。
僕の力で投げ切れるかどうか分からないが、
この方法しかないと思い、
竹刀袋で縛ったウサギを手に取った。
ゴブリン達は僕に背を向けている状態だ。
ゴブリン達の頭上を越えて、
目の前にこのウサギが落ちれば、
ゴブリン達はそれに気を取られるに違いない!
...第一球..振りかぶってー、投げたぁー!
..まあ実際は投げ縄の要領で投げたんだけどもね。
「よし!上手くいった!」
..となれば良かったのだが、
現実は厳しいものだった。
竹刀袋で縛られたウサギはゴブリン達を越える事はなく、
「しまった!失敗した!」と言いかけたが、
有ろう事か、ウサギは囮になるどころか、
そのまま凶器になってしまったのだ!
そう、このウサギはただのウサギではなかった!
額に角が生えているウサギであったのを忘れていたのだ!!
勢いをつけられた凶器..ウサギはゴブリン達の頭上を越えるのではなく、1体のゴブリンの頭に突き刺さり、竹刀袋が他の2体のゴブリンを巻き込んで首を縛っていくのだった。
あれ、何で?と思い、
過去を振り返ってみるとそう言えば...
このウサギは普通のウサギ..僕が見知っている一般的なウサギよりも大きく、そして、重い。
普通に縛って担ぐだけでは重たくて...じゃなくて、
持ちにくかった為、バランスを取ろうと竹刀袋のもう片方の先にその辺に落ちてた石を巻き付けて結んでいたのだ。
しかし、スライム?を助けねば!との焦りから、
そんな事は頭から抜けておりそのまま投げてしまった...という事だ..です、はい。
要するに、初めから囮ではなく、
凶器を投げていたのだ…捕獲武器…ボーラの如く。
「...まあ、結果オーライ?」
何とも締まりのない結果となってしまったが、
ゴブリン達を倒し、スライム?を救うのに成功した。
しかし...竹刀より活躍する竹刀袋。
今の所、剣術は役に立っておらず、
竹刀袋で3体、ウサギの角で1体と武器とは呼べないもので仕留めている。
...結果良ければ、全て良し?..と頭を切り替えて、
竹刀を拾いつつ、助けたスライムの下へと歩いて行く。
「スゥ~イ♪」
...まるで「ありがと~う♪」とでも言っているような気がする。
..いや、まさかね~、そんなことないよね?
発声器官ないけど、
鳴き声?が聞こえるのは...まあ、一旦置いておこう。
何故か何となくではあるけど、
このスライム?の言っている事が分かるのは気のせい?
...幻聴、そう、疲れのせいで幻聴が聞こえている!
...そういう事にしておこう。
だがしかし、これは...?
明らかに僕の方を見ているようなんだけど..目ないけど。
..ここはファンタジーの世界っぽいし、
なんでもありかな?
...と投げやり的に、
現実逃避していた頭を覚ましたのは、
正にその鳴き声?であった。
「ズィィ!ズゥィィ!」
「うしろ!あぶない!」と聞こえる声で、
反射的に後ろを振り返る!
倒したはずのゴブリンが1体、立ち上がっていた。
短剣を持ったリーダーらしきゴブリンで、
他のゴブリンよりも生命力が強かったのかもしれない!
まだ、殺られてはいないぞ!
と言わんばかりの敵意を向けている!!
ヤバい!完全に油断していた!!
今からでは、
竹刀を構えても迎撃には間に合わない!!!
ゴブリンは短剣を振りかざして、
先制攻撃を仕掛けてきた!?
「ズィイ!ズィイィイイ!」
「ちがう!そっちじゃない!」と言わんばかりのスライム?の鳴き声。
「えっ!?」
僕とゴブリンはその迫力のある鳴き声で動きを止め、
お互いに見つめ合うことに...
それは少しの時間ではあったのだが、
その少しの時間でゴブリンは息絶えた。
その瞬間を狙っていたのか、
何かがゴブリンに襲い掛かったのである。
その何かの牙がゴブリンの首に深く食い込んでいた。
絶命したゴブリンを銜えたまま、
その何かは僕に視線を向ける。
「...イヌ?」
僕は目まぐるしく変わる状況についていけない中、
ただ、そう呟くのみであったのだ...
「面白い!」
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