はじまりのお話
カンカンカンカン、、、踏切の音だ。そんなことは分かっている。分かっているのに。
この音が彼女の命のカウントダウンにしか思えない。
蒸し暑い。まだ4月なのに暑すぎる。この気温で体育館に寿司詰めにされたらそりゃあ倒れるやつも出るだろう。頭の固い校長どもはそんなことも分からないのか。生徒全員が予感していた程に今日は暑い。先ほど校内で唯一白髪の少女が担架に乗せられ運ばれたらしい。慌てた先生らがドアを開け俺らを解放してくれた。チッ遅いっての。ああ、次は体育か。かったるいな、サボるか。
ガラッ。「センセー。俺体調悪いんでベット借りまーす。って先生いないじゃん」テキトーに借りるか。シャッっとカーテンを開けると女がいた。「うおっ、わりい」どうやらさっき倒れた白髪の子らしい。柄にもなく少女を天使のようだと思った。「、、いつまで覗いてるの?」凜とした声だった。声に聞き惚れて言葉の意味を理解するのに数秒に時間を要した。「チッ」わざと舌打ちを打ってカーテンを閉めた。なんだか部屋にいるのが恥ずかしくなって保健室から出て行った。今日は水曜日か。
今日は組のミーティングがある日だ。心なしか重い体も軽くなり、足取りが軽くなった。俺は特攻だから序列は一番前。一番総長の顔が見える位置をとれて少し嬉しくなった。後ろから気配がした。そこをグーパンで殴ると人の感触がした。「相変わらず亮のパンチはいてえなあ」幼なじみの裕吾だった。「うるせえ黙れ。今から組長の話があんだよ」「へいへい。相変わらずまじめなこって」こういうやつは無視に限る。
「今日は新顔を紹介する。悠だ」おれは鼻からひょうたんがでるくらいびっくりした。今日保健室で会ったあいつじゃないか!!俺は気恥ずかしさとびっくりしたことからむっとしてしまった。悠のほうは俺を見て固まってしまった。「どうしたおまえら。知り合いか?じゃあ二人でバディ組め」くっ。バディか。今まで頑張って避けてきたのに。「いっ、いやあ」「?なんか文句あるのか」総長に言われると、、逆らえない、、。「私あの人と組みたい」凜とした声が聞こえた。悠は俺を指さしてた。「そうかそうか。じゃそういうことで、頑張れよおまえら」くそっ。なんだってこんなやつと組まなきゃならないんだ。俺は頭を抱えた。