笑顔の奥に潜む 幾多の不思議
僕の永遠の人へ
あなたにブローチを託されて、どのぐらいの月日が経ったでしょう。僕は、本来あなたがなる予定だった「変わり者」になれました。あなたは、「これからのあなた」が「今までのあなた」でなくなることを、拒んでいましたね。未来に一歩、踏み出せずに、暖かい部屋に留まっていたのです。僕が「これからのあなた」を継いで、現在のあなたは、どんなお顔でお茶を飲まれているのでしょうか。
僕は、あなたに出会うまでは孤独でした。父、母、姉といった肉親がおりながら、学校には同級生がおりながら、僕は、そこにいませんでした。三対一、多数対一、僕は常に一の側でした。虐げられているのならまだしも、何も危害は加えられなかったのです。与えられるものが、僕の身に余るものばかりでした。誰もが、僕を実物より大きな存在に祭りあげたがるのです。迷惑でした。
あなたは、僕と近い境遇でしたね。良い物、良い人に囲まれていますが、満たされていない、欠けた人間でした。欠けたものは、欠けたものと引き合う運命なのですね。しかし、あなたと僕は、月とすっぽんだったのです。身分が違いました。卑しい僕は、あなたに選ばれなかった。あなたは、つり合う身分の人と添い遂げる誓いをしました。僕は、悲しくはありませんよ。哀れに思わないでいただけると幸いです。全然、惨めな気持ちではないのです。僕には、あなたのブローチがありますから。あなたのご主人は、それを持てませんでした。
ブローチに描かれている花は、実在するのですか。あなたは、月に咲く花だと戯れに仰っていましたね。僕には「しもべよ、月まで泳いで摘んできなさい」と命じられたように聞こえてなりませんよ。摘んでさしあげたかったです。あなたが満たされるのならば、僕は命をも惜しくありませんから。僕は、あなたの馬となり牛となり働きます。ええ、嘘ではないですよ。月明かりのように淡く安らげる家庭を築かれた、現在のあなたにも、お支えしたい心は変わりません。
僕ひとりが「ブローチの持ち主」でいれば良い、僕の考えは、あのお方と話してゆくにつれて、はがれてゆきました。あのお方に、捧げたくなったのです。あなたが僕に、大切にしてきた物をくださったように、僕も、あなたの真似をしたくなりました。なんとおこがましい、僕は身の程を弁えておりません。しかし、あなたに近づきたいとあがくのです。あのお方のために。あのお方は、あなたとは異なる輝きを放っています。源は同じなのですが、なぜ違いが生まれるのでしょうかね。あなたに、問いたいものですよ。
すぐに、ではありませんが、僕はあのお方にブローチを、いいえ、ブローチに刻まれた文章を託します。いずれ、あのお方を助けるでしょうから。「変わり者」には致しませんよ。あのお方はさらなる高みへ行かれるのです。あなたは、目を瞠るでしょうね。僕の最初で最後の、意趣返しですよ…………。
特別企画:もしも、日文の先生が某人気カードゲームになったら
⑥真淵先生篇
真淵 丈夫 (まぶち ますらお)
体力:200 属性:黄色 弱点:茶色(ダメージ二倍) 抵抗:なし
特性:じごくみみ(地獄耳)→相手の番の終わりに、相手の手札を一枚選び、見る。その後、見た札は捨て札にする。
技:しんしゅつきぼつ(神出鬼没)、黄色エネルギー2枚
→相手の戦闘人物と、場にいる人物一人にそれぞれ40ダメージ。
技:ぶきみスマイル(不気味スマイル)、黄色エネルギー3枚 60ダメージ
→硬貨を投げて、表なら相手の戦闘人物を「毒」状態にする。裏なら相手の山札を切る。
【八十島評】いやらしい技が好きな人、全員集合(古いネタですみません)! 状態異常で八十島が許せないのは「毒」です。「火傷」も似たようなものですが、ドクロマークが付いていると、そこに目がいってしまって戦闘に集中できないのです。山札を切られると、少しいらっとしませんか? そういう人物なのです、彼は。