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語り伝えたき真面目さよ 腕章の女史


 パレードを、見たの。


 夜、家の周りを走っていたら、いっぱい練り歩いていたの。


 人、ではなかった。赤い鬼、青い鬼、大蛇、顔がとても大きい牛、破れた障子に足がはえたもの、薄汚れたでんでんだいこに目玉がついたもの、いろいろ。


 闇を追い払おうと、提灯やたいまつを持てるだけ持って、陽気に、愉快に、踊って、歌っていた。


 翌朝、パレードの正しい名前を知った。この間の漢字テストに出題されていた、四字熟語だった。


「怪異には、害をなす(たぐい)がおませば、なさぬ類もおます。あんさんが昔、目にした列は、後の方ですわ」

 前任の中世文学担当教員・恵施(けいし)庶幾(もろおき)先生が、仰った。仕事の引き継ぎで、よく研究室にお邪魔していた。

「あんさんは、見えぬ不思議に深い信心を持っておますな。その根源は、地獄やおましまへんか」

 恵施先生は、墨染の袖を振ってにやりと笑っていた。私の中にある、責苦の炎が高く上がってゆく。

「地獄が現世(うつしよ)におませば、人は悪をはたらかぬとお思いか」

 はい、の他に言う事がなかった。一生を終えたら、何も感じないではないか。焼かれて、葬られても、熱を苦しく思わない。そんな状態で地獄に至ってお仕置きを受けても、心を改める意味があるのだろうか。

「悪は、尽きまへんわ。割り切って生きてゆかねばしょうがおまへん。それでも、あんさんが納得いかぬのなら、とことん地獄を突き詰めなさい」

 恵施先生の「地獄を突き詰めろ」の正しい意味を、私は分かっていなかったのかもしれない。六道輪廻を知っても、九相図(くそうず)や地獄絵図を見ても、仏教説話を読んでも、私は現世地獄にはなれない。

「あの列に悪さされておませば、あんさんは人に戻れやしまへんかった」

 人の姿を残していながら、人ではない存在は、この世にいるそうだ。鬼であったり、霊であったり、人ではないものにもなれずに置いてゆかれたものであったりする。

「あんさんに炎が()えますわ。珍しい色だこと」

 思春期の子ではあるまいが、「分かってもらえた」気分になった。パレードを見た者は、何らかの特典が与えられるそうだ。私の魂に燃える火は、パレードの後に色がついたのだ。

「その炎で、道をふさぐものを消すも、悪を罰するも、あんさん次第でおます」

 自由に行使しても良いが、我が身を滅ぼすような真似はするな。先生の忠告は、それが最後だった。


 私は、魂の炎を正しく扱ってきたつもりだ。まだ、やけどしていない。そうだというのに、燃やすことしかできない無力さを、嘆いている。間違った物事を戒める炎に、過度な期待をかけているのだと思う。まだ、やれる。他にも何か、できる。いただいた恩恵を、最大限に使わなければ、損だ。


 日本文学国語学科の七人で、最下位は私。追いつきたい。指導する能力、問題を解決できる能力を高めて、最終的には一等になってゴールテープを切りたい。


 この炎で、私は一番になる。百の怪異が、私を応援しているのだと信じて。

特別企画:もしも、日文の先生が某人気カードゲームになったら

③宇治先生篇

宇治 紘子 (うじ ひろこ)

体力:200 属性:赤 弱点:青(ダメージ二倍) 抵抗:なし

技:はやあし(早足)、赤エネルギー1枚、30ダメージ

→硬貨を投げて裏なら、この技は失敗する。


技:がくせいしどう(学生指導)、赤エネルギー2枚、60ダメージ

→相手の戦闘人物に道具札がついていれば、はがして捨て札にする。


技:じごくのほのお(地獄の炎)、赤エネルギー3枚、100ダメージ+

→のぞむなら、この登場人物についている赤エネルギーを2枚捨て札にする。そうしたならば、60ダメージを追加する。


【八十島評】攻撃専門の1枚です。私としては、追加効果を重視して戦いたいので、使おうとは思いませんが、切り札にできたら気持ちがいいものですよね。赤デッキが好きな人には、ぜひ入れてほしいです。

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